16 太古の面影探索への誘い〈化石採集のし方〉
 
         太古の面影探索への誘い〈化石採集のし方〉
                                       
〈化石の包み方と運び方〉
 化石の採集番号は,標本,フィールドノート(野帳),ルートマップ(又は地形図)
の三つとも同番号にするようにします。
 化石が割れたり,壊れやすい場合は,石膏かボンドなどで繋ぎ目を補強します。現地
で補強できない場合は,あとで正しく繋ぎ合わせられるように,繋ぎ目に印を付けてお
きます。
 表面が壊れそうな化石は,柔らかい綿やチリ紙にくるんでから,古新聞紙で包み,産
地ごとに区別して採集袋に入れます。
 段ボール箱で輸送するときは,隙間が生じないように紙片などを詰め込みます。
 輸送にあたっては,信頼できる輸送会社を選んで下さい。
 
〈採集の後始末〉
 △現地での後始末
 化石採集を行った現場は,きちんと後始末をしましょう。農耕地や道路,小川・沢に
散乱した岩屑はきれいに後かたづけして下さい。また,採集に当たっては,後日,崖崩
れなどが発生しないよう細心の注意をして下さい。
 なお,弁当のからなどの塵は,現地から持ち帰りましょう。
 △標本の所有と保管
 普通,化石の採集現場は人里離れた山間部ですので,一般に化石は拾得物のようなか
たちで採集者の手に帰すことになります。
 法律上の所有権をめぐる係争は,例えばゾウやクジラ,デスモスチルスなどの骨格化
石の発掘のように,特別大規模の場合のほかは,事実上起こってきません。
 もしも所有権をめぐった問題が生じた場合には,学問的意義を十分考慮した上で,土
地の所有者と化石の発見・発掘者ないし研究者との協議の上で,良識的に決着がつくよ
うにしなければなりません。要は公共的立場に立って,化石は研究上有益に,一般にも
公開されるよう保管されることが望ましいです。
 学問的に新種樹立のもととなったタイプ標本は公式機関に安全に保管し,地元などで
の公開には複製模型にすることが一方策でしょう。国際動物命名規約においては,タイ
プ標本は学術上の財産として責任を持って当事者機関が保管することとし,標本の保存
・登録と目録の出版,内外の学会からの照会にはタイプに関する知見を知らせることを
勧告しています。
 標本保管の一般的な注意としては,例えば強く陽の当たるところ,ひどく湿気の多い
ところなどは,標本自体の損傷,添付ラベルにも影響しますので避けて下さい。
 標本箱に保管する場合は,標本とラベルの間にパラフィン紙か綿を入れましょう。
 
〈各自の特性を生かす〉
 化石採集は,一人で行うのもよく,仲間をつくってサークル活動で行うのもよいでし
ょう。いずれにせよ,化石を中心にして故郷の地質から地史を探ることを目的とするの
がよいでしょう。
 グループ活動をするときは,各自がそれぞれ自分の趣味を合わせて特色を出すように,
多角的に仕事を進めるのがよいでしょう。例えば,カメラ好きの人は化石産地の露頭や
化石産状についての写真集,絵の好きな人は露頭のスケッチ集や化石の産状見取り図,
山歩きの好きな人や製図の得意な人はルートマップを作ってみてはいかがでしょうか。
 
               参考 「化石鑑定のガイド」朝倉書店発行 THE END
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