04a 森林の土を掌に〈土壌の調べ方 その1〉
 
 一般に森林土壌の断面は二つの異なった部分から構成されています。一つは地表にあ
る主として有機物からなる部分で,落葉・落枝あるいは草本遺体やそれらの腐朽物から
構成され,層状を呈し,有機物層あるいはA0層と呼ばれる部分です。他はその下位に
位置する無機物を主とする部分で,一般に岩石の風化物から構成されていますので,鉱
質土層と呼ばれる部分です。
 A0層はその供給源である植物遺体の分解の程度により,さらにL層,F層,H層の
3層に細分されます。L層は最表層に位置し,ほとんど未分解の落葉・落枝や草本遺体
からなる層です。F層は土壌植物や土壌生物による分解作用によって破砕され,植物遺
体の原形は失われていますが,肉眼で元の組織が認められる程度の分解段階にあるもの
で,分解の程度によりさらにF1層,F2層・・・・・などに細分されます。H層はさらに分
解が進み,肉眼では元の組織が判別できないくらいになったもので,乾性型の土壌では
粉状に,湿性型の土壌では脂肪状になっています。A0層は乾燥しやすいところとか,
過湿になりやすいところ,寒冷なところでは,有機物の分解作用が活発でないので比較
的厚く堆積します。
 鉱質土壌は,一般にA0層の直下にある腐植に富む暗色のA層と,その下位にある腐
植に乏しく明るい色調のB層,そして最下位の母材層であるC層に区分されます。
 A層は動植物遺体の分解により生成された腐植が堆積し,暗褐色を呈するに至った最
表層の土層で,腐植の集積具合,構造の種類や発達程度及び堅密度の違いなどが見られ
る場合には,上層から順にA1層,A2層,A3層・・・・・などに細分されます。一般に下層
より腐植含有率が高く,構造も発達し,通気透水性も良好ですので,土壌動物や土壌微
生物の活性度が高く,根の分布密度も高いです。
 B層は母材の風化により生成された鉄化合物により,赤褐色~褐~黄褐色を呈するに
至った腐植に乏しい土層で,色,構造の種類及び発達程度,堅密度等の違いによってB
1層,B2層・・・・・などに細分されます。
 C層は土壌の母材層で,基層ともいわれ,土壌化がほとんど進行していませんので土
色は一般に彩度が低く,構成物質も比較的粗粒で,石礫の含有も高いなどの特徴があり
ます。風化の進行程度や堅密度などの違いにより,さらに区分される場合は上層からC
1層,C2層・・・・・などに細分されます。
 そのほか特殊な層として,菌糸網層やグライ層があります。
 菌糸網層は,マツ,モミ,ツガなどの根に共生する外生菌根の菌糸束やその遺体が集
積してできた灰白色・海綿状の層で,M層と呼ばれます。一般に尾根筋などの乾燥しや
すいところの土壌のA0層やA層中,まれにB層中に層状又はレンズ状に発達しますが,
いったん乾燥すると湿り難い性質が強いため,この層が形成されると土壌はますます乾
燥しやすくなります。
 グライ層は,停滞する地下水のために土壌が還元状態になり,鉄やマンガンが還元さ
れて灰白色を呈するに至った土壌であり,G層と呼ばれ,断面内下部に位置します。
 
 △層位の厚さ,深さ
 一般に層に厚さは一定であることは少なく,ある部分では薄く,またある部分では厚
くなっていることがあるので,その変化の幅も測定する必要があります。
 層位の深さを表す場合には,A0層と鉱質土壌との境界,すなわち鉱質土壌の表面を
基準にして,そこから測った各層の上限と下限の最大値を並記し,30/35~45/50㎝の
ように表します。層の厚さはその最小値及び最大値をもって12~20㎝のように表します。
 A0層の場合は,厚さだけを測定する場合が多いですが,深さを測る場合は鉱質土壌
層との境界を基準として上方へ向かって測定し,L層:10~5㎝,F層:5~2㎝,H
層:2~0㎝のように表示します。
                                                                              
 △層界の状態
 ある層から次の層への移り変わりの状態,いわゆる層界の状態は,その層界が明瞭な
ものまで,またその形状も平坦で単純なものから不規則で複雑なものまで,土壌によっ
ていろいろ異なります。
 
  層界の幅  層界の明瞭度  記号
  3㎝以下  明       ・・・・・   実線
  3~5㎝  判       ・・ ・・ ・・  鎖線
  5㎝以上  漸       ・・・・・・・・・・・  点線
 
 一般に乾性褐色森林土,黒色土,ポドゾル及びグライなどでは,層位の移り変わりが
比較的明瞭ですが,適潤性や弱湿性褐色森林土などでは不鮮明です。また比較的理化学
性の不良な残積性の土壌では層位の移り変わりが明瞭ですが,理化学性が良好な崩積性
の土壌では漸変する傾向があります。このような層位の移り変わりが明瞭な土壌は,そ
こを境に土壌の性質,特に物理性が急激に変わるなど,根の生育にあまり好ましくない
性質を持った土壌ですので,逆に層位が漸変している土壌では,根の生育に好ましい内
部状態であることが多いです。
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