50c 資源植物〈資源植物学研究方法への誘い2〉
△種粒以外のデンプン植物
根茎の植物で,キャッサバ(タピオカ),タロイモ類のココヤム,クワズイモ類,ヤ
マノイモ類,タケイモ科のアロールート,タシロイモ類などが知られていますが,本稿
では次の三つについて述べます。
①クズイモ マメ科
つる性の多年草で,地下にカブのような多肉の塊根があります。
メキシコ西南部から南米のペルー,エクアドル地方の原産で,現在はアメリカとアジ
アの熱帯に広く栽培されています。塊根はサラダにして生食,又は軽く煮て食べます。
種子は有毒で,殺虫剤としても用いられます。
②オオクログワイ(オオシログワイ,馬蹄) カヤツリグサ科
田に栽培され,球茎により繁殖します。オオクログワイは野生種シログワイの栽培種
です。シログワイは旧世界の熱帯に広く分布し,日本では紀伊半島以南に稀にみられま
す。
中国料理の野菜の一つで,球茎を種々の料理に用い,そのデンプンを馬蹄粉といい,
ときに薬用にも供されます。
③食用カンナ カンナ科
大形の多年草,地下に浅く横にはう根茎があります。
原産は南米アンデス地方です。根茎は煮食し,デンプン粒を抽出して朝食用のセレア
ルの一種や,ビスケットやくずもち風の菓子にも加工されます。
△野菜類
熱帯地方における野菜は数少ないので,本稿では熱帯のものを中心に述べます。
①パラミツ(木波羅,波羅密) クワ科
常緑樹で高さ10~25m,果実は10~20㎏です。
原産はインド半島で,インドからスリランカ,マレーシア地方に広く栽培されてきま
した。その果実を野菜として煮食したり,油炒めなどにします。若い果実や芽も食用と
なります。種子は炒って食べると美味で,粉にしてビスケットにもします。
②ヒユ ヒユ科
変異性の高い一年草です。
熱帯アジア(インド亜大陸)の原産と推測され,野菜として広く熱帯から亜熱帯にか
けて栽培されています。若い植物体の葉や茎を油炒め,又は煮食にします。解毒作用も
あります。
③ヒモゲイトウ ヒユ科
変化の多い一年草です。
上記に準じて食べるほか,種子を穀粒とします。
④シゲホビユ ヒユ科
上記に準じて食べるほか,種子を穀粒とします。
⑤ハゲイトウ ヒユ科
ヒユに非常に近似しています。
中国では若い茎葉をヒユと同様に野菜として利用し,薬用にも用いられます。
⑥ヨウサイ(アサガオナ,空心菜) ヒルガオ科
つる性の一年草で,池沼,小川,水田の畔を利用して栽培し,水耕栽培もされます。
西アジア,インド亜大陸,東南アジアからインドネシアにかけて広く分布します。中
国では消化解毒の民間薬とし,炒めものや汁の実とします。
⑦パルミト(ヤシの葉芽)
パルミトとはスペイン語でヤシの芽という意味です。この葉芽はラテン・アメリカで
広く食べられ,北米へも缶詰として盛んに輸出されています。この葉芽を採るためには,
数年(早くて2~4年)の木を切り倒さなければなりません。Euterpe,Roystonea,ピ
ーチ・パームなどの種類があります。
⑧マコモ イネ科
日本から中国大陸の温帯と冷温帯にかけて分布している大形の多年草で,池沼や河川
の畔に大群を作ります。
穎果も食用にしますが,通常,中国では幼茎にクロホ菌の一種が寄生し,幼茎(菰角
)が伸長を阻害されて軟化した竹の子状のものを食べます。
⑨Sesbania grandiflora(木田菁,大花田菁)
中形の喬木で高さ4~10mです。
インド,東南アジア,マライシア,中国の雲南省などに生えます。熱帯アジアなどで
広く花を生食又は軽く煮て食べます。若い葉や若い莢果も野菜として食べられます。
△ラテックス植物
ラテックスと呼ばれる,粘り気のある白い乳液を生産する植物のことです。例えばゴ
ムノキ,サツマイモ,ヒルガオ,タンポポなどように,茎を切ると白い乳液の出る植物
のことです。
①グアユール キク科
多年生の小潅木で,茎は高さ30~60㎝になります。
北米のメキシコ北部からテキサス州南部の半砂漠地帯に野生しており,アメリカ・イ
ンディアンが古くからそのゴム質を利用して一種のまりを作っていました。
②ロシアタンポポ(コク・サギス) キク科
タンポポに似た多年草で太い牛蒡根があります。
ロシアのトルキスタン地方の野生植物で,半乾燥地のアルカリ土壌に生え,太い牛蒡
根にラテックスを蓄えます。
③デザート・ミルクウィード
地下に深い牛蒡根を持った多年草です。
アメリカのカリフォルニア州南部,アリゾナ,ネバダ各州の砂漠地帯にみられる野生
植物で,葉のない茎が多数株立ちとなる特異な外観をしています。植物体内にラテック
スを含み,その中にゴム質があります。
④セアラゴム タカトウダイ科
大形の潅木から小喬木で高さは4~10m,根元径10~30㎝です。
セアラゴムの名はブラジル東部のセアラ州に基づき,サバンナ地帯の原産です。ブラ
ジル原産のキャッサバに近い木で,生長が早く植えてから4~5年でゴム質が採取でき
ます。種子は炒ってナットの一種として食べられます。
△油料植物
ココヤシ,アブラヤシ,オリーブ,ゴマ,ダイズ,アブラナ,トウモロコシ,ヒマワ
リ,ベニバナのほか,ヒマ,アブラギリ,ナンキンハゼ,ユーカリなどがあります。
①バッファロウリ ウリ科
多年草で地下に長さ5mにも達する太い根があり,水と炭水化物を蓄えます。
アメリカ西南部及びメキシコの砂漠地帯を中心に,荒れ地などにも生える野生植物で
す。アメリカ・インディアンが石鹸として代用し,また薬草としても用いられました。
種子には油脂のほかにタンパク質も含んでいます。
②ババッスヤシ ヤシ科
ブラジルのアマゾン盆地を中心として分布する野生のヤシで,種子には72%の油脂が
含まれ,食用などに用いられます。
③中国アブラギリ(油桐) タカトウダイ科
アブラギリ属には,中国中南部から東南アジアにかけて数種の類似種が知られていま
す。種子にはエレオステアリン酸,エレオマモガリン酸を主成分とする速乾性油を含み,
工業用の油として用いられます。
④ナンキンハゼ タカトウダイ科
中国からインド,ビルマに分布します。種子から中国脂と呼ばれる油脂を抽出し,種
皮から採る皮油はパルミチン酸,オレイン酸などのグリセリン・エステル,種核から採
ったものを子油といいます。
参考「資源植物学」講談社 THE END
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