24 日本の高山蝶
 
                日本の高山蝶
 
                    参考:山と渓谷社発行「日本の高山植物」
 
 日本の高山蝶は14種,その棲息地をみますと,本州にだけ棲息している蝶が5種,北
海道にだけ棲息している蝶が5種,共通しているものが4種となっています。高山蝶の
定義は定まっている訳ではありませんが,「高山で発生する蝶」と考えてよいでしょう。
ですから山麓から高山帯のお花畑に上がってくるだけのキアゲハは,高山蝶とはいえま
せん。尤も,この定義を厳密に限定しますと,タカネヒカゲなど数種になってしまいま
すので,「高山を持つ山域に発生する蝶」位に解釈するのが妥当でしょう。日本の高山
蝶は全てユーラシア大陸北部まで分布しています。氷河期に南下してきて,そのまま取
り残されたものと考えられます。日本固有の種はありません。
 
〈本州の高山蝶〉
タカネヒカゲ:ジャノメチョウ科
 北アルプスや八ガ岳の標高2500m以上の岩礫地に棲息します。食草はイワスゲなど,花
 の蜜よりも岩礫上の水滴などを吸うことが多いです。産卵の年と翌年の夏を幼虫のま
 まで少しずつ成長し,3年目の7月中旬〜下旬頃に蝶になります。
ミヤマモンキチョウ:シロチョウ科
 北アルプスや浅間山周辺の標高2200〜2700m付近のハイマツ帯を中心に見られます。食
 草はクロマメノキです。
タカネキマダラセセリ:セセリチョウ科
 穂高連峰〜爺ガ岳の標高2000m付近の沢沿いや南ア仙丈岳に棲息します。食草はイワノ
 ガリヤス,卵から蝶になるまで足かけ3年かかります。
ミヤマシロチョウ:シロチョウ科
 南北アルプス,八ガ岳,美ガ原,浅間山の標高1200〜2000m付近の高原に棲息します。
 食草はヒロハヘビノボラズ,メギで,しばしば集団で吸水します。
クモマツマキチョウ:シロチョウ科
 南北アルプス,頚城山地,八ガ岳の渓流沿いに棲息します。新潟県糸魚川市に注ぐ姫
 川の下流域の標高200m付近にも棲息地があるように,本州の高山蝶の中で,最も低い
 ところにまで見られる種類です。食草はミヤマハタザオなどです。
 
〈北海道の高山蝶〉
ダイセツタカネヒカゲ:ジャノメチョウ科
 大雪山周辺のハイマツ帯や岩礫地,幌尻岳に棲息します。食草はタイセツイワスゲ,
 ミヤマクロスゲなどです。蝶になるまで足かけ3年かかります。
ウスバキチョウ:アゲハチョウ科
 コマクサを食草としますのでよく知られています。大雪山周辺のハイマツ帯や岩礫地
 に棲息します。蝶になるまで足かけ3年かかります。
アサヒヒョウモン:タテハチョウ科
 大雪山周辺の標高1700m以上のハイマツ帯や岩礫地に棲息し,クロマメノキやミネズオ
 ウなどの群落に多いです。食草はキバナシャクナゲなどです。
カラフトルリシジミ:シジミチョウ科
 大雪山周辺や天塩岳,知床半島の高山帯に多いですが,道東では海岸付近でも見かけ
 ます。食草はガンコウランやクロマメノキなどです。
ヒメチャマダラセセリ:セセリチョウ科
 アポイ岳や夕張岳の超塩基性岩地帯に棲息します。食草はキンロバイなどです。
 
〈本州と北海道に分布する高山蝶〉
クモマベニヒカゲ:ジャノメチョウ科
 本州では日本アルプス,八ガ岳,頚城山地,白山の標高1700〜2700m付近に,北海道で
 は大雪山系と利尻山の標高1200〜2000m付近に棲息します。食草はイワノガリヤス,カ
 ワラスゲなどです。
ベニヒカゲ:ジャノメチョウ科
 クモマベニヒカゲによく似ていますが,翅の裏面の白い帯がありません。本州では中
 部山岳,上越国境,東北地方の高山帯に棲息し,北海道では山地帯が主で高山帯には
 稀です。食草はカワラスゲ,ミヤマカンスゲなどです。
オオイチモンジ:タテハチョウ科
 本州では中部地方から関東地方北部の標高1500m付近の広葉樹林帯の渓流沿いに,北海
 道では山地帯に棲息します。食草はドロノキ,ヤマナラシなどで,花には来ません。
コヒオドシ:タテハチョウ科
 本州では広葉樹林帯,北海道では山地帯で発生し,夏になりますと高山帯のお花畑に
 移動します。食草はホソバイラクサなどです。高山蝶としては唯一,成虫で越冬しま
 す。
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