06b こんにちは昆虫たちよ〈森林害虫〉
 
〈虫えい形成害虫〉
 植物の組織内に産卵し,あるいは幼虫が組織内で生活することにより,それを囲む寄
生植物の細胞が刺激を受けて異常増殖あるいは異常肥大して虫えい(ゴール)を形成す
る場合,これらの昆虫を虫えい昆虫と総称しています。虫えい昆虫は鞘翅目,鱗翅目,
膜翅目,双翅目,半翅目,総翅目など多くの科に認められますが,クリタマバチ,マツ
ノシントメタマバエ,マツノゴハイシバエ,スギタマバエ,エゾマツカサアブラなどは
広面積にわたって発生し,林分全体を衰勢となし,あるいは枯死させるなど,恐るべき
害虫です。また芯止まり,天狗巣の発生,冬芽着生位置の異常,新梢の彎曲,伸長・肥
大成長の著しい遅れなどが生じ,将来良材の得られなくなる場合が多いです。
                                                                              
〈吸収性害虫〉
 吸収性害虫とは吸収式の口器を有し,樹木の葉,樹皮,根などから液汁を吸収して成
長する昆虫で,アブラムシ類,カイガラムシ類,カメムシ類,グンバイムシ類,アザミ
ウマ類などが含まれます。昆虫類ではありませんが,ハダニの類も同様の害を行います。
 吸汁されますと,葉の捲縮,葉の変色,葉のねじれ,樹皮の腫起,偽虫えい形成など
の害を生じます。
                                                                              
〈苗畑害虫〉
 苗畑害虫の加害部位は,根,根際,葉に大別できます。根の害は,食植性コガネムシ
類の幼虫やサビヒョウタンゾウムシの幼虫のように,苗木の大小にあまり関係なしに太
い根を剥皮するもの,あるいはカブラヤガ,タマナヤガなどの幼虫のように稚苗の茎を
切断摂食する害と,ケラやコオロギ類(時にはゴミムシ成虫も)のように,地中を潜行
することにより根を浮かせ,苗木の倒状や乾燥の害を招く機械的害とに大別できます。
 根際の害は,稚苗の根際の表皮を環状に剥皮食害するもので,エゾマツノメイガ,食
植性ゴミムシ,スナゴミダマシ類幼虫,オオキリウジガガンボやキスジガガンボなどの
幼虫が数えられます。
 葉を害するものとしては,アブラムシ類,カイガラムシ類のような吸収性の種類と,
キボシマルトビムシのように芽生えを食するもの,及びウリハムシモドキ幼・成虫,サ
ビヒョウタンゾウムシ成虫などが顕著です。
                                                                              
〈防除法〉
 △一時性害虫
 森林は極めて複雑な生態系を形成している故,昆虫類のなかにある特定の種類だけを
薬剤使用により殺すことは極めて困難です。また一般には害虫類の過半数を占める鱗翅
目や鞘翅目よりは,天敵類としての寄生蜂や寄生蝿の方が薬剤に対する抵抗性がはるか
に弱いです。山林に対する無定見な薬剤散布は,天敵のみを選択的に殺すことになりか
ねません。また森林内の生態系を撹乱する結果,思わぬ災害を招くおそれがありますの
で,森林害虫に対する殺虫剤の使用は,慎重な上にも慎重な検討を必要とします。しか
しながらマツケムシやスジコガネ成虫のように葉上に露出して大面積を加害する害虫に
対しては,現在の発達した薬剤散布技術,特に航空散布などにより,顕著な効果をあげ
ることが可能です。
 △二次性害虫
 特定される発生源を処理して,森林の環境衛生の整備を行うことが最大の防除法とな
ります。森林内に枯損木を置かないこと,被圧木を処理すること,伐採跡地に末木を残
さず,また伐根などに薬剤処理を行うこと,それぞれの地域に適した樹種を植栽するこ
と,単一樹種による大面積の林を造らず,可能なかぎり混交林とすること,林木が適応
しうる以上の急激な環境変化を与えないこと,などが二次性害虫の発生を抑える方法と
いえます。
               引用 「新応用昆虫学 -改定版-」 朝倉書店

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