04 八幡平の鳥類相
 
                         参考:鹿角市発行「鹿角市史」
 
 鹿角は周囲を広大な森林地帯に囲まれており、また田畑や原野も多いことから、村落
周辺でも春はヒバリ・ウグイス・ツバメ・カッコウ・セキレイ、夏を迎える頃にはホトトギ
ス・トラツグミ・オオヨシキリ・ヨタカなど四季折々に去来する数多くの野鳥の姿が目に付
き、またその囀サエズりを耳にすることが出来る。また山岳地帯から平地まで多くの野鳥
が生息分布しているものと思われる。しかし鹿角地方全域に亘る調査はなされておらず、
その実態についても明らかでない部分が多い。それでも幸い八幡平の山岳地帯の鳥類に
ついては、近年数回に亘りその分布の実態調査が行われているので、報告資料からその
概要を記す。
 
〈八幡平の鳥類相〉
 昭和44・45年秋田大学小笠原高(日冠+高)氏の「八幡平の鳥類相」は、八幡平の山頂
付近、ふけの湯・後生掛温泉・大沼付近一帯、及び玉川温泉付近など、主として秋田県側
について行われたものである。その調査結果によると、23科46種の鳥が確認されている。
その中で比較的多く分布している種類としては、シジュウカラ・ヒガラ・コガラ・ウグイス
キジバトであるが、特にシジュウカラ科が各地域に優占しているのが特徴的で、これは
本州山岳地帯の鳥相の特徴と思われるとしている。調査によって確認された主な鳥は次
のような種類である。
 
 ビンズイ・ホシガラシ・ウグイス・キセキレイ・ヒガラ・メボソ・コマドリ・ハシブトガラス
 ・ウソ・カヤクグリ・ルリビタキ・コガラ・キジバト・シジュウカラ・イワツバメ・カケス・キ
 ビタキ・ヤブサメ・モズ・エナガ・ホオジロ・ノスリ・カルガモ・コサメビタキ・キジバシリ・
 ゴジュウカラ・オシドリ・ヤマドリ・カワガラス・ヤマガラ・アカゲラ
 
〈秋田県鳥類分布調査〉
 更に秋田県では昭和46年度から毎年県内の主要な鳥獣保護区を中心としてその周辺を
含む地域の鳥類分布調査を行っているが、昭和54・55年度は八幡平地域を対象とした調査
がなされている。
 
 調査コース
昭和54年度
 ふけの湯から長沼   6月
 八幡平頂上〜長沼   7月
 八幡平頂上〜大深山荘 8月
 後生掛〜玉川     9月
 五十曲〜大深沢    10月
昭和55年度
 後生掛〜玉川     6月
 後生掛〜湯の沢口   8月
 後生掛〜玉川     10月
 後生掛〜トロコ    11月
 
 調査結果(末尾の数値は個体数)
昭和54年       昭和55年
カイツブリ1 
オシドリ1       オシドリ8 
カルガモ2 
トビ1         トビ1 
           オオタカ1 
           ノスリ4 
キジバト2       キジバト2 
アオバト1 
カッコウ3       カッコウ1 
ハリオアマツバメ4 
           アマツバメ1 
アオゲラ1 
アカゲラ4       アカゲラ9 
コゲラ7 
イワツバメ228     イワツバメ249 
キセキレイ4      キセキレイ1 
           セグロセキレイ1 
ビンズイ3       ビンズイ5 
モズ2 
カワガラス2 
           ヒヨドリ3 
           ミソサザイ1 
カヤクグリ10     カヤクグリ5 
コルリ4 
ツグミ10       ツグミ442 
ウグイス65      ウグイス36
メボソムシクイ19   メボソムシクイ1 
キクイタダキ11
キビタキ14      キビタキ9 
オオルリ3       オオルリ1 
           コマドリ3 
コガラ43       コガラ23
ヒガラ41       ヒガラ56
ヤマガラ3 
シジュウカラ24    シジュウカラ37
ゴジュウカラ14    ゴジュウカラ8 
コホオアカ1 
           ホオジロ9 
ウソ6         ウソ4 
カケス85       カケス18
ホシガラス29     ホシガラス25
ハシボソガラス3 
           ハシブトガラス24 
計651         計988 
 
(1) 両年度を通じてイワツバメが特に追いのは、後生掛温泉の建造物軒下に集団営巣し
ているためである。55年度調査でツグミの多いのは、後生掛温泉からトロコの調査が11
月初めであったので、渡りの途中のツグミが多数出現したためである。
(2) 後生掛温泉から玉川間は植生が標高によって多様化しており、ビンズイ・カヤクグリ
・ウソ・メボソムシクイなど、亜高山帯の鳥類が多く見られた。
(3) 最も出現数の多い場所はブナ林内で、シジュウカラ科・ヒタキ科の類、アマツバメ・
オオタカ・アカゲラなどのブナ林特有の鳥類が多く見られ、特に湯の沢付近はブナ林の発
達が良く、その出現数も多い。
(4) 迷鳥のコホオアカについては、これまで東北地方で確認された記録がなく、この地
域がシベリアからの渡り経路になったいるのか、単に1羽だけ迷って来たのか興味深い
ことである。
(5) その他特に注目されることは、クマゲラについては個体の確認は出来なかったが、ク
マゲラの採餌痕らしいものを僅かであるが発見している。クマゲラは昭和十年代の記録
では、その生息が確認されていたと云う。
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