09a ツバメの渡来〈渡来の仕組み〉
〈ツバメ前線〉
筆者による東京都由井村でのツバメの生態調査のほか,農林省,日本野鳥の会,日本
鳥類保護連盟,新聞紙等の記事やデータ,個人情報,さらに気象庁データなど,戦前戦
後60数年の記録を整理,分析してみました。
△日本全国
@1920〜40年頃のツバメ前線の記録を図化してみますと,ほぼ日本列島を輪切り的に
横断しています。このことが,前述の「まず九州に渡来する」説が生まれたものでしょ
う。
A第二次世界大戦後の40年間の記録による初認日ラインは,関東までは南岸に早く渡
来し,北が遅いという列島平行ラインを示し,東北になりますと横断前線となります。
Bまた最近の調査では,関東までは目的地近くの海岸への直行型,東北の場合は横断
タイプとなっています。
C全国的にみますと,太平洋岸にまず渡来し,次に日本海側に現れ,その後内陸そし
て東北地方に姿を見せるようです。
△地方比較
変 異 巾 平均 年数
九州 2月14日〜3月28日 42日 3月10日 23年
四国 2月29日〜3月29日 29日 3月11日 19年
中国 2月10日〜3月29日 47日 3月13日 34年
近畿 2月24日〜3月29日 33日 3月14日 26年
中部 2月19日〜4月5日 46日 3月17日 33年
東海 2月19日〜4月2日 43日 3月11日 18年
関東 2月28日〜3月29日 30日 3月14日 40年
東北 3月11日〜4月19日 40日 3月26日 16年
北海道 4月4日〜5月7日 33日 4月19日 7年
わが国の初認日のトップは1993年2月10日,島根県隠岐島の西郷です。
東北・北海道へはその渡来中,新潟・茨城ラインで一休みの形になっています。
△南北差
原則としてまず南岸に渡来し,それから北へ進出すると考えますと次のようになりま
す。
鹿児島―300q―福岡 差20日 15q/日
愛媛 ―200q―山口 差10日 20q/日
和歌山―200q―京都 差7日 29q/日
静岡 ―300q―新潟 差16日 19q/日
神奈川―150q―栃木 差14日 11q/日
福島 ―450q―青森 差9日 50q/日
1日当たりの平均は24q,緯度1度当たり平均6.4日ということになります。山が多
いと進出しにくい傾向があるようです。
△東西状況
わが国で一番早くツバメが渡来する鹿児島から東の各地までの東進状況は次のとおり
です。
鹿児島― 550q―和歌山 差14日 39q/日
鹿児島―1000q―千葉 差22日 46q/日
鹿児島―1300q―宮城 差27日 48q/日
1日当たりの平均は44.3qになり,北進よりだいぶ早いようです。
〈東京の初認日〉
東京の平均初認日は,府中・多摩3月18日,八王子,日野・立川,調布・狛江3月19
日,世田谷3月20日となっております。まず相模湾にきて相模川沿いを北上して各地へ
向かう扇形直行タイプのようです。
また,関東地方における初認日は次のようになっています。
福島4月2日
栃木3月29日
群馬3月29日
茨城3月23日
埼玉3月23日
山梨3月28日
東京3月16日 千葉3月20日
神奈川3月15日
静岡3月10日
このように関東のツバメは南西方向から相模湾,東京湾へのコースをたどるものと考
えられます(金井郁夫氏)。
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