18b 植物の見方2
 
●複葉
 葉は,ただ1個からなる単葉タンヨウと2個以上からなる複葉フクヨウがあります。複葉を作
る小さな葉を小葉ショウヨウ,小葉の柄を小葉柄ショウヨウヘイ又は小柄ショウヘイ,小葉の付く共通の軸
を中軸チュウジク又は葉軸ヨウジクと呼んでいます。小葉に托葉タクヨウがあれば小托葉ショウタクヨウと
いいます。複葉の側方に付く小葉を側小葉ソクショウヨウ,先端に付く小葉を頂小葉チョウショウヨウと
いって区別します。横に張り出した枝に付く対生の葉と複葉の小葉の付き方とは誤りや
すいですが,この場合葉腋ヨウエキに付く位置を確かめてみます。小葉の基部にありますと
対生,小葉の基部に芽がなく,葉柄の基部にありますと複葉です。またドクウツギの枝
は葉が向かい合って左右2列に並び,見かけ上は羽状ウジョウ複葉ですが,単葉が2列対生
しているのです。
 複葉の基本的な形は3個の個葉を持つ3出複葉です。頂小葉が複葉化し,鳥の羽のよ
うな形になったものを羽状複葉,1か所で小葉の数が増え,掌状になったものを掌状ショウ
ジョウ複葉といいます。掌状複葉は3個の小葉からなる3出複葉(ミツバアケビ,ヤブマ
メ,ハギ,カタバミ,シロツメクサなど),5個の個葉からなる5出複葉(アケビ,ウ
コギ,ゴヨウイチゴなど),7出複葉(トチノキなど),5〜7出複葉(トチバニンジ
ン,ムベなど),7〜10出複葉(フカノキ)などがあります。3出複葉に似て左右2個
の側小葉が更に2個の小葉に分かれ,5個の小葉が鳥の足の指のような並び方をするも
のを鳥足状トリアシジョウ複葉(ヤブガラシなど)といいます。3出複葉の1個1個の小葉が
更に3個の小葉に分かれるものを2回3出複葉(イカリソウ,オオバショウマなど),
更にもう1回小葉が分かれるものを3回3出複葉(ルイヨウボタン,カラマツソウ,コ
ボタンヅルなど)といいます。
 羽状複葉で頂小葉が発達しないものを偶数グウスウ羽状複葉(エビラフジ,サイカチ,カ
ワラケツメイなど),頂小葉の付くものを奇数キスウ羽状複葉(フジ,ワレモコウ,イヌエ
ンジュなど)といいます。カラスノエンドウの葉は羽状複葉の頂小葉の付く部分が巻き
髭ヒゲになっています。これは小葉が巻き髭に変態したもので,マメ科に多く,スイトピ
ーに良い例が見られます。巻き髭は小葉が変態したものばかりでなく,ウリ科やブドウ
科のように枝が,サルトリイバラのように托葉が,それぞれ変態したものも見られます。
 羽状複葉も掌状複葉と同様に羽状に分かれた1個1個の小葉が更に羽状に分かれたも
のを2回羽状複葉といい,ネムノキ,ジャケツイバラ,ゼンマイなどに見られます。サ
イカチのように1個の葉に単羽状複葉と2回羽状複葉の両形がある場合,1〜2回(偶
数)羽状複葉といいます。2回羽状複葉の小葉がもう1回分かれたものを3回羽状複葉
といい,イワニンジン,シシウドなどに見られます。
●花の名称
 花は生殖器官で生殖細胞の形成,受精,果実及び種子の形成という機能を持ち,複雑
で変化に富んだ構造を持っています。完全な花は萼ガク,花弁,雄ずい及び雌ずいからな
ります。これらは何れも葉が変形したものと考えられ,花葉カヨウと総称します。花の付く
柄を花柄カヘイ又は花梗カコウといい,その先端の花葉が付いている部分を花床カショウ又は花托
カタクといいます。花床は一般に短縮していますが,ときにキンポウゲ科やモクレン科に見
られるように楕円形状に膨らむものや,バラやリンゴのようにつぼ状となりその周囲に
花葉が付くものなどがあります。花葉は各々その数に因って2数,3数,4数,5数,
多数などと呼びますが,単子葉類では3数,双子葉類では5数が基本数です。
 萼及び花弁は,生殖器官である雄ずいと雌ずいの保護器官です。萼を形成します小さ
な葉片を萼片といいます。1個の花の花弁全体を花冠カカンといいます。花弁が1個1個離
れているものを離弁リベン花冠,一部で又は全部が癒着しているものを合弁ゴウベン花冠と
いいます。花冠は普通大きく美しい色を付けますが,ときに花冠のない無花弁もありま
す。萼と花冠とは一般に外観が異なり一見して区別できますが,タデ科,ユリ,スイセ
ン,ヒガンバナなどのように同形同色で一様に見えるものもあります。このような外見
が同一なものに対しては,花冠と萼とを合わせて花被カヒといい,その1片を花被片カヒヘン
といいます。
 花の構造を簡単に示すために,屡々花式図が用いられます。これは花葉を上面から眺
めた様子を模式的に,萼を斜線,花弁を黒く塗り,雄ずいは葯ヤクの断面,雌ずいは子房シ
ボウの断面で表します。花葉は多くが輪状リンジョウ並んでいますので,その配列の仕方や花
がどんな位置で茎に付いているかも花式図に表されます。雄ずいと雌ずいが同一の花の
中にあるものを両性花(完全花),何れか一方のみからなるものを単性花(不完全花),
雄ずいだけからなる花を雄花オバナ,雌ずいだけからなる花を雌花メバナといいます。
 雄ずいは花糸カシと葯の2部からなり,花糸は一般に糸状イトジョウですが,ときに退化し
て無いものもあります。花糸の先端の花粉嚢カフンノウが付く部分を葯隔ヤクカクといいます。葯
隔は普通2個の花粉嚢が付き,それぞれ2室に分かれます。花粉は1個ずつ分散するも
のが多いですが,2個又は4個ずつの塊となるものや,ラン科やガガイモ科は多数の花
粉が集まり花粉塊カフンカイとなります。花粉粒カフンリュウはいろいろの大きさがあり,表面には
模様があって分類上重要な手がかりになります。花粉嚢が裂けて花粉は分散しますが,
花粉嚢の裂け方は種類によって様々で,縦裂するものや,やや頂端に穴が開いて孔開す
るもの,花粉嚢に弁があってそこから花粉を出す弁開などがあります。
 雌ずいは主要部が子房で上方に花柱カチュウが直立し,先端は柱頭チュウトウで終わっていま
す。柱頭は花粉を受ける部分で,形状は変化が多く,頭状トウジョウ又は分裂し,普通粘着
性の物質を分泌します。
●雄ずいと雌ずい
 雄ずいは花冠の内側にある雄性ユウセイ器官です。その形は種類によっては,退化して著
しく小型化したものや癒着したり様々に変化しているものが多いです。6個の雄ずいの
うち2個だけが短く4個が長い4強雄ずいはアブラナ科などに見られ,4個の雄ずいの
うち2個が長く2個が短い2強雄ずいはシソ科やゴマノハグサ科の一部などに見られま
す。花糸カシが癒着して管になったものを単体雄ずいといい,ヌスビトハギなどマメ科に
多く見られます。単体雄ずいと殆ど同じですが,1個だけ分かれて付くものがあり,こ
れを2体雄ずいといいます。一つの花の雄ずいの葯が互いに癒着するものを集葯シュウヤク雄
ずいといい,キク科,キキョウ科,ウリ科などに見られます。雄ずいが変形又は退化し
て,糸状,鱗片リンペン状,腺点センテン状などになり,正常な葯とは異なるものを仮雄ずいと
いいます。
 葯は花糸に付く位置によって側着ソクチャク,丁字着テイジチャク,底着テイチャクなどがあります。
側着葯は葯の背面の中央に花糸が付くもの,丁字着葯は葯の背面中央に花糸が付き丁字
形となるもの,底着葯は葯の基部に花糸が付くものです。
 雌ずいは花冠の中心に位置します雌性シセイ生殖器官です。被子植物では柱頭チュウトウに付
いた花粉粒カフンリュウは水を含んで膨らみ,発芽して花粉管カフンカンを伸ばし,花柱カチュウに沿っ
て下降し,子房内の胚珠ハイシュに達します。更に花粉管は普通は珠孔シュコウから胚嚢ハイノウ内
へ入り,管の先端が破れて花粉の内容物を胚の中へ放出します。花粉粒は開花中に既に
核分裂を始めて,花粉管核し生殖核(精核セイカク)を形成します。花粉管が伸びるときに
は花粉管核が先導を務めます。生殖核は2個の精核に分かれて胚嚢の中へ入りますと1
個の精核は卵細胞の核と他の1個は2個の遊離する極核キョクカクと受精します。このように
一度に2か所で受精が行われますので,これを重複受精といい,被子植物の特徴です。
 卵核は受精後に胚に発達し,極核は胚の栄養となる胚乳ハイニュウを形成します。
 被子植物の胚珠ハイシュは珠柄シュヘイによって胎座タイザに付き,胚珠の向く方向によって,
珠孔が真上を向く直生チョクセイ胚珠,珠孔が横を向く湾生ワンセイ胚珠,珠胚が基部を向く倒生
トウセイ胚珠,胚孔が珠柄と著しく接近しています曲生キョクセイ胚珠の4型に区別されます。
 子房内にあります胚珠が付く部分を胎座といい,子房の横断面を見ますといろいろな
形があることが分かります。子房が1室からなり,胎座は子房の側壁の縁辺エンペン付近に
できるものは側膜ソクマク縁辺エンペン胎座タイザで,スミレ科,リンドウ科などに見られます。
側壁の中軸チュウジクにできるものは側膜中軸胎座で,リョウブ,アカバナ科などに見られ
ます。子房室の壁はなくなり1室で子房の基部中央に胎座だけが残るものを独立中央胎
座といい,サクラソウ科,ヤブコウジ科などに見られます。子房の室と室とを隔てる壁
にできるものを隔膜カクマク胎座といって区別することもあり,ゴマノハグサ科やナス科な
どに見られます。
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