19 ツツガムシ「恙虫」とは
 
 ツツガムシとは、ツツガムシ科のダニ「壁蝨」の総称です。
 ツツガムシの幼虫は卵円形で体長0.2〜0.3o、オレンジ色、歩脚3対です。
 多くはノネズミ「野鼠」の耳などに寄生します。
 恙虫病を媒介します。
 
 ツツガムシの成虫は赤色で短毛を密生し、吸血性なく、地表で昆虫の卵などを食べま
す。アカムシとも云います。
 
△恙虫病(ツツガムシ病)
 恙虫病とは、ツツガムシの幼虫に刺されて起こる急性伝染病です。病原体はリケッチ
ア − ツツガムシです。患部は壊疽エソに陥り、潰瘍を作ります。
 潜伏期は7〜10日で、高熱を発し、局所リンパ腺の腫脹、全身の発疹などを伴い、し
ばしば致命的となります。
 
 発病の症例は、まず体がだるくて食欲がなくなり、次いでひどい頭痛や寒気と共に39
〜40度の発熱があります。この症状は普通の風邪より重い感じです。
 更に4〜5日目頃に、胸、背中から腹部にかけて赤褐色の直径2〜3oの発疹で出、
顔や頭部に広がります。この頃までに適切な治療を受けますと、軽くて済みます。
 適切な治療を受けない場合はなかなか熱も下がらず、肝臓や腎臓の機能が犯され長期
の入院が必要となります。
 もっと治療が遅れれば、肺炎や脳炎のような症状が出て、死に至ることもあるそうで
す。
 
 アカツツガムシ媒介の古典型は秋田・山形・新潟の河川流域に、夏季に発生するとさ
れます。
 山菜採りに行ったり、田畑での農作業中などにツツガムシの幼虫に刺されることによ
り、発病します。幼虫の活動が活発な春季か晩秋が最も危険な時期ですが、春季の方が
発症の度合いが多いと云われます。
 幼虫から成虫に成長する過程で一生に一度、動物の血液から栄養を摂取しなければな
らない時期があり、幼虫は動物の皮膚から出る炭酸ガスを頼りに、動物(人間も)が接
近してくるのを待っているのです。
 
 第二次世界大戦後、富士山麓・伊豆諸島で発見されたフトゲツツガムシ・タテツツガ
ムシ媒介の新型恙虫病は、鹿児島・千葉・東京・岐阜などに見られ、これは冬型で症状
は軽く死亡例はありません。伊豆諸島の「七島熱」もその一型と云われます。
 
 予防方法としては、野外から帰りましたら、着て行った衣服は部屋の中に持ち込まず、
なるべく早く入浴したり、シャワーを浴びますと、大分予防出来ます。
 また、野外では出来るだけ皮膚を露出しないようにして下さい。
 
△つつがない「恙無い」
 「恙無い」とは、病が無い、息災である、異状が無い、無事である、と云うことです。
 この「恙無い」の言葉は、その昔、人々が地中(横穴など)で生活し、ツツガムシに
悩まされたためとされています。
[次へ進む] [バック]