10b 美味しい野草 食べ方いろいろ
 
ツリガネニンジン(釣鐘人参,トドキ) ききょう科 分布 日本全国
 1 ヨモキの若葉と共に茹でて,胡麻和えが一番美味しい食べ方である。
 2 青森県八戸地方では,ヨモギと共に乾燥して貯蔵し,冬期に凍豆腐やインゲン豆
  と煮つけにしている。
                                       
クサソテツ(草蘇鉄,コゴミ) おしだ科 分布 日本全国
 1 巻いた若芽や伸びた葉の先端の軟らかい部分を茹でてゴマ味噌で和えたり,浸し
  物,辛子和え,生の葉のてんぷらなどにする。
 2 ウワバミソウの若芽と油炒めにすると一層美味しい。
 3 乾燥すれば長く貯蔵ができ,冬になってこれを水に浸し戻して調理すると,ゼン
  マイ以上の美味しさである。
                                       
ミツバ(三葉) せり科 分布 北海道〜九州
   栽培種と野生種とは,植物学上,全く同一植物である。
                                       
オニバス(鬼蓮) すいれん科 分布 日本全国(池沼)
   ハスと同様,種子と地下茎(蓮根)を食用とする。
                                       
コウホネ(河骨) すいれん科 分布 日本全国(池沼,浅い川)
 1 6〜7月,茎根の中に澱粉が多くなっている季節に採取し,小片に切り煮て食べ
  る。根茎の皮を剥ぐときは,竹ベラ(鉄製はだめ)を用いる。
 2 根茎を陰干しにしてから砕いて粉にし,飯に入れて炊く。
                                       
ジュンサイ(蓴菜) すいれん科 分布 日本全国(池沼など)
 1 ジュンサイの若芽を食べることは,実はジュンサイそのものよりも,そのジュン
  サイに付着している寒天質の粘質の舌ざわりの良さを賞味するのである。その寒天
  質のものは,藍藻という下等植物である。
 2 取りたての新鮮なジュンサイに軽く湯を通し,ウズラ卵を入れて食べるお浸しの
  味は格別である。また,すまし汁にも良く合う。
                                       
 古事記 応神天皇,髪長比売の巻「水溜る 依網ヨサミの池の 堰杙・グイ打ちが 挿し
 ける知らに 蓴ヌナ繰ハクり 延へける知らに 我が心しぞ いや愚ヲコにして 今ぞ悔し
 きき」
                                        
        美味しい野草の組合わせ(抜粋)    資料:自然食 山海の野草
                                       
ヒユとイノコズチのお浸し
   ヒユとイノコズチの若葉を同量塩茹でにして小鉢に盛り,ミカンの皮を細く刻ん
  だものを天盛りにし醤油をかける。
   早春は両者とも苦味が少ないから軽く熱湯を通すだけでよいが,夏秋からはアク
  があるから重曹か灰汁で茹でるとよい。
   ヒユだけを浸し物,和え物などにするときはゴマ,クルミ,ニレの実などで和え
  ると美味である。
 ヒユ ひゆ科 分布 日本全国(東インド原産)
  同種 ズベリヒユ,タチスベリヒユ:食用
 イノコズチ(牛膝) ひゆ科 日本全国
  同種 ヒカゲノイノコズチ(一名イノコズチ),ヒナタノイノコズチ,ヤナギノイ
     ノコズチ:食用
                                       
ツクシとウコギの混ぜご飯
   ツクシ80gに対しウコギ100gの割合がよい。ツクシを細かく切りバターでよく炒め
  塩,コショウで味をつける。ウコギの新芽を茹でて水に晒し苦味が去ったものをみ
  じん切りにして先のツクシとよく混ぜる。これを炊きたてのご飯を移すときに手早
  く混ぜ込みにする。
   ウコギにはビタミンCが100g中15r,ツクシにビタミンBが44r含まれていて至
  極栄養価の高い食べ物である。
 ツクシ(土筆,スギナの胞子茎) とくさ科 日本全国
  1 白和えとして,ツクシはハカマを取り去って茹でておき,白胡麻を炒って良く
   擂スり,十分に水気をしぼった豆腐と共になお擂り,塩,砂糖で調味した中で準備
   したツクシを和える。胡麻の代わりに乾いた南瓜,豆腐の代わりにウノハナを少
   量用いても美味しい。
  2 卵とじは,ツクシはハカマを取り茹で,適量の調味料で煮つけ,仕上げによく
   溶いた卵を全体にかける。
  源氏物語早蕨の巻「あざりのもとより,年あらたまりては,なにことかおはします
  らん,御いのりはたゆみなくつかうまつり侍り,今はひと所の御ことをなん,やす
  からず,ねんじきこえんするなど聞えて,わらび,つくづくしおかしきこにいれて,
  これはわらはべのくやうじて侍る,はつほ成とて奉れり。」
 ウコギ(五加,ヒメウコギ) うこぎ科 日本全国
  1 煮つけと茹で菜は,若芽,若葉を茹でて煮食すると甘く淡泊で香気がある。普
   通に成長した葉は茹で水を幾度か替え,2,3日浸して置き後,塩を加えて食べ
   る。また塩蔵して冬期の蔬とする。
  2 五加茶は,葉を乾燥して貯え茶の代用とする。
  3 五加皮ウカビを焼酎に浸して五加皮酒とし,又は麹と米飯と五加皮の煎汁を混合
   して五加皮甘酒をつくり,滋養強壮の飲料として日常愛飲する。
                                       
ヨメナとアカザの雑炊
   米150gに対しヨメナとアカザ各100g,水15dl,煮干粉,塩,醤油,削節,味噌な
  ど適量。
   ヨメナとアカザはさっと熱湯を通し細かく切っておく。深鍋に米と水,煮干粉,
  削節を加えて火にかけ沸騰したら火を弱くして30分後に先のヨメナとアカザを入れ,
  なお10分位して塩,醤油,味噌で味付けして火を消す。10分位むらしてから食べる。
  風味ある美味しい雑炊である。
 ヨメナ(嫁菜) きく科 日本全国
  1 早春のものは苦味が少ないから軽く熱湯を通して好みの料理に使えるが,初夏
   からは硬質化し苦味も増すから重曹か灰汁で茹でて調理するのがよい。
  2 浸し物は,塩茹したものを小鉢に盛りミカンの皮を刻んでその上に天盛りし,
   醤油をかける。
  3 ヨメナ180gに対してカボチャの種子10gの割合で用意する。ヨメナを塩茹でにし
   て適当に切り,カボチャの種子を炒って擂スり鉢でよくすり,砂糖と醤油で調味し
   てヨメナを和える。
  4 一夜漬は,さっと熱湯を通して容器に入れ,塩を適当に振りかけてよく混ぜ,
   軽い重石をのせておくと数時間後には食べられる。夜にこれを漬けておくと翌朝
   の食卓にさわやかな一品が添えられる。
  万葉集第十巻「春日野に煙たつ見ゆをとめらし 春日のうはぎ(ヨメナ)つみて煮らし
  も」
 アカザ(阿加坐) あかざ科 分布 日本全国
  1 中国から渡来し,古くから食用に,また杖として愛用された。
    アレルギー体質の人はジンマシンを起こす場合がある。
  2 茹でてお浸し,ナマス,煮つけ,和え物(ゴマ・カラシ),てんぷら,油炒め,
   かやくご飯などにして美味しくたべられる。また葉を乾燥して貯蔵し冬期に水に
   戻して料理するのもよい。
  3 果実は佃煮,また,外皮を取りご飯に入れて炊く。或いは粉末にしてダンゴに
   すると大層美味しい。
  4 アカザ水は,2dlの熱湯でアカザ100gを茹で,その茹で汁を他の容器に取り5g
   の砂糖を加えて冷やす。ビタミンA,Bを多量に含有している。
  同種:砂糖大根
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