[鎮守の森づくり]
 
                    私共と自然との接点は、近くの神社の神域、
                   即ち「鎮守の森」です。通常目にする鎮守の
                   森は、町中や郊外、田圃や畑の中などにあっ
                   て、私共人間の香りが漂っていますが、中に
                   踏み分けて入ってみますと、意外にも其処に
                   は清々しい「精気」を体感出来る自然があり
                   ます。
                    人間社会と自然の生態系とを有機的に繋ぐ
                   のが、この鎮守の森です。
                    鎮守の森は、このように私共の志向する「
                   緑の地球」、そして「自然との共生」の最前
                   線の役割を担っているのです。
                    伊勢(三重県)の「神宮の杜」など由緒あ
                   る幾つかの神域は、その神域自体が自然林と
                   見分けが付かない程に成立し、そして広大な
                   自然生態系を形成しています。
                    私共は、まずこの身近な「鎮守の森」を守
                   り育てるとことは、延いては「緑の地球」づ
                   くりの一役を担っているのだ、と云うことに
                   注目たいと思います。
                    本稿はこのことに鑑み、「神域の緑を守る
                   会」の趣旨をご紹介して本読者のご理解をお
                   願いする次第です。        SYSOP
 
 
                   参考:神社新報社発行「神社本廳規程類集」
 
「神域の緑を守る会」結成促進について  昭和四十六年七月二十九日 庶一二四五号
 
 去る五月開催された、昭和四十六年定例評議員会に於て、「神宮神社のみどりを公害
より防護する緊急対策確立に関する件」が議決されたのを機会に、全国各神社が今一度
考へなほし、みなほす意味に於て、概ね左記趣旨により「神域の緑を守る会」の結成促
進を御管内各神社に周知御取計ひ下されたく此段御通知致します。
                  記
(趣旨)
 近年における自然環境の破壊は、多くの問題を提起し、国民生活をもおびやかしてを
りますが、神社の緑を守ることは我国古来の美しい伝統に立ち帰る事を教へることであ
り、そこに住みよく美しい国土建設を図るために、愛林緑化の思想を昴め、更に緑化運
動の推進を図ることは、現時局にかんがみて真に緊要なことであります。今日、郷土に
於て神社林こそが公害に対する最後の砦とさへ云はれて居り、これは顧るに我国におけ
る西洋的文化の導入が、美しく豊であった自然を破壊し、人間の生活環境を急変させつ
つあることは否定し得ません。ことに都市並にその周辺のみまらず、国土面積の狭い我
国土においてはそれが急速に、拡大しつつあります。人間社会の発達が、その結果とし
て自然環境を悪化させることは容認できないことであり、その弊害を防ぐことは緊急を
要することであります。神社界に在る吾々は何よりも神社の尊厳風致を護る事が、延い
ては公害から神社・氏子を守り地域社会の精神的に又日常生活に於ても貢献して行く途た
る事を再認識し、氏子崇敬者に対し繰返し啓蒙してゆくことが肝要であります。より積
極的に自然を守ることを考へると共に境内林の増植に依り神社の宗教的尊厳の増進を図
ることは、反面境内林乱伐防止の点に於ても緊要適切な事業と存じます。就ては右趣旨
により、「神域の緑を守る会」を概ね左の要項に基づいて結成、促進方を御管内各神社
に周知御取計ひ下さい。
 
(目的及び施策)
一、この事業は神社永遠の策として各神社に於て「神域の緑を守る会」を結成し、植樹
 運動、緑化愛林思想の普及宣伝等の活動等を行ひその中から民族永遠の伝統的精神を
 養ふことを目的とする。
一、各神社に於ては事情の許すかぎり、愛林日(例、四月○日)を設け、この日を中心
 に氏子崇敬者に呼びかけ、又これが地域の運動となるやう努力されたい。
一、各神社の森は氏子崇敬者の手で立派に育成し将来も緊密な関心を持続せしめる方針
 の下に、例へ数本でも植樹並にその保護又管理を為し、そしてそれは努めて氏子崇敬
 者の奉仕活動によって為される様に指導せられたい。
一、樹木に対する生物的、物理的な害、更には公害等の諸害に対し、抵抗性の強い樹木
 を研究、造成することに合せ、危害を予察し、諸害の早期発見に努め迅速なる防除が
 行なはれなければならないが、樹種等は地味風土に応じ適宜とするも、境内地には主
 として常緑樹が好ましい事勿論である。又種苗の供給並に植樹法等は当該地関係市町
 村当局或は専門家の指導を願はれたい。
一、別途企画される地方緑化運動等に対して強力すると共に寧ろ「神域の緑を守る会」
 がその範とせられる様な活動を行ふ様常に心掛ける事。
一、神社財産育成の見地から、積極的に山林を購入し県行造林等の利用により、長期の
 神社運営にも資して行く事を考へる。                   以上
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