07 森林機能保全:防災林造成
 
       森林機能保全:防災林造成(抜粋)  資料:林業技術ハンドブック
                        (森林総合研究所 松岡廣雄氏)
                                       
T 海岸防災林
                                       
1 海岸砂地造林
                                       
(1)砂丘造成
   砂丘造成の目的は地形を整理して風力を均一のものとするとともにこれを減殺し,
  飛砂の防止を図り砂地を固定しようとするものである。
   砂地造成は機械力や自然の風を利用して行われる。
   砂丘には,海側につくる前砂丘と,陸側につくる主砂丘とがあるが,順序として
   は,陸側より着手し,次第に海側に及ぶのが普通である。
  ア 堆砂工
   @堆砂工の目的は海よりの風で吹送される砂を抑え,堆砂させて砂丘を造成する。
   A前砂丘は,汀線から適当な距離にあって,砂丘の先端が波浪によって破壊され
    ない程度に設ける。主砂丘は前砂丘の位置決定後に砂丘内部の地形を考え決定
    する。
   B砂丘の方向は,原則として海岸線に平行とする。
   C砂丘の高さは,近くの天然砂丘で,頂部まで植生が入っているものの高さを基
    準として決める。砂丘を数列配する海岸では,前砂丘の頂上と陸側の天然砂丘
    の頂上とを結ぶ線上に各主砂丘の頂上があるように高さを決めるのが望ましい。
   D砂丘の頂部に凹凸があると風溝,風盆ができるので頂部は水平とする。
   E安定した天然砂丘は風上面の傾斜は5〜10゜の緩であり,風下面は急で砂の安息
    角に近いものである。砂丘頂部は風圧に耐える形とし2〜3mの幅をもたせる。
   F堆砂垣
    A 最初の堆砂垣の位置は計画砂丘頂の鉛直線よりやや陸側とする。
    B 堆砂垣の構造として,堆砂垣の通風性では,遮風体と間隔の割合を普通
      1:1とし,場合によっては1:2とする。堆砂垣の材料は,土地で入手
      し易く,垣に堆砂終了までの耐久性があればよい。堆砂垣の高さは1.0m,
      頂部は水平とする。
   G丘頂編柵は頂部の風食を防止するため,頂部に柵高40〜60pで1〜2列に設ける。
    柵頂は水平とする。
   H必要に応じて人工盛土により砂丘を造成する。
  イ 覆砂工
   @風による侵食を防止し,砂丘,陸側砂地の砂の移動防止を目的としている。
   A伏工は,使用する材料が植生により被覆されるまでの耐久性があるものを用い,
    施行後は砂草実播,砂草植栽を行う。
   B砂草は海側に蜜に,陸側では疎にして砂丘全面に植栽する。
   C砂草にはコウボウムギ,ケカモノハシ,ハムニンニク,オニシバがある。所に
    よってはアメリカンビーチグラスを用いる。
  ウ 防浪工
   @防浪工は,前砂丘の脚部が波浪によって破壊されるのを防止する。
   A防浪工の位置は既往の最大波浪到達線より陸側とし,海岸線と平行で,頂部は
    水平とする。
   B防浪編柵は直接波浪をうけることがあるので,その構造,使用材料等は山腹編
    柵と同程度のものを必要とする。
(2)砂地造林
  ア 静砂工
   @砂丘,陸地側平地を固定し,その表面全面の静砂を図り,植栽木が生育できる
    環境をつくる。
   A静砂垣は,方形に区切り,その一辺を主風の方向に直角にする。一般には垣の
    間隔が10〜20mものが多い。
   B垣の材料は植栽木の保護期間の耐久性があるものとし,垣高は1.0〜1.2mとし,
    鎮砂,防風効果があるものとする。
  イ 植栽工
   @海岸砂地の早期の森林化を図るのを目的としている。
   A施行区地域に最も適する樹種,本数,混交割合,植栽方法を決めて行う。
   B植栽樹種の一般的条件は次のとおりである。
    a 養分や水分に対する要求の少ないこと。
    b 急激な温度変化に耐えること。
    c 飛砂,潮風,寒風等の害に十分耐えること。
    d 風に対する抵抗力の強いこと。
    e よくうっ閉を保ち,落葉,落枝によって地力が増すもの。
    一般的に,針葉樹でクロマツ,アカマツ,トドマツ,エゾマツ,カラマツ,モ
    クマオウ等,広葉樹でカシワ,ヤマモモ,ニセアカシヤ,ヤシャブシ,ネムノ
    キ,トベラ,イタチハギ,アキグミ等である。また,主林木の生長を助け,林
    地の理学性を高める肥料木としては,ニセアカシヤ,ハンノキ類,ハギ類,ア
    キグミ,ネムノキを混植する。
   C植栽本数は1万/haを標準とする。
   D客土は,必要に応じ,植え穴1つに対し1〜3g程客土する。また,原則とし
    て施肥を行い,追肥も行う。施肥量は1本当たり60〜120gが普通である。
   E植栽時は,埋わらを原則とし,植穴でわらが苗木に触れないように,わらの上
    を砂で覆い植栽する。苗木1本当たり300g程度,1haに6000〜1万sが標準で
    ある。
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