05b 森林機能保全:山腹工事
                 
(5)暗渠工
 崩壊の原因が湧水に基づくような場合は,地下水の排除策が必要であり,その手段と
して暗渠工が適用される。
 湧水個所があるときは,必ずその個所を起点として設ける。土砂が厚く堆積している
個所の排水を目的とするときは,その集排水に最も効率的な位置に設ける。
                                       
(6)張工
 張工は,斜面の風化侵食,剥離,崩壊等が著しく,植生工の施工が困難な場合に用い
られる。
 傾斜が急な山腹面の崩壊地帯で,亀裂の多い基岩や著しく脆弱な地層等が露出して植
生工の施工が困難な場合に,斜面全体を石材やコンクリート,コンクリートブロック等
によって被覆し,斜面の崩落を防止して,崩壊地周辺の森林への崩壊の拡大を防止する
目的で計画される。しかし,治山事業の基本は森林の造成や維持することにあるので,
緑化工の施工が困難ということのみで安易に張工を計画することは避けなければならな
い。
 A 空張工
   空張工は,張石工に胴込めコンクリートや裏込めコンクリートを使用しない張工
  である。一般には斜面傾斜が緩やかな場合で,張工を必要とする斜面長も短く,高
  さも低い場合(原則として3m以下)に計画する。
 B 練張工,コンクリート張工
   練張工,コンクリート張工は,亀裂や節理の多い岩盤等が崩落する場合等で,植
  生の導入が不可能な場合に計画する。
                                       
(7)枠工
 枠工は,斜面が著しく急な場合や土質条件が著しく悪い場合,全面的に被覆しなけれ
ば山腹斜面の固定,又は緑化が図れない場合に計画する。
 枠工の種類には,木枠,鋼枠,硬質塩化ビニール枠,コンクリート枠などがあり,そ
の耐久性や効果にも差異がある。
 枠工は,次のような目的で計画される。
 @崩壊斜面を固定して,表面流下水等による侵食を防止する。
 A土壌条件の不良な個所に植生の生育基盤を造成する場合,その基盤を固定する。
 B急斜面に亀裂の多い岩盤等が露出し,風化や流水により崩壊の拡大や落石等が予想
  され,被害を与えるおそれがある場合に,斜面を固定してその防止を図る。
 A コンクリートブロックのり枠工
   コンクリートブロックのり枠工は,緑化工のみでは斜面の侵食防止が困難な個所
  に計画する。
 B 現場打ちコンクリートのり枠工
   現場打ちコンクリートのり枠工は,地形や施工条件などの制約を受けて,切土の
  り面の安定勾配がとれない場合や湧水を伴うとか土質が不良の場合,また節理,割
  目などの発達した岩盤で,コンクリート吹付工などで落石を止めることができない
  場合に,支保工的機能を期待して計画する。
                                       
2 山腹緑化工
                                       
(1)柵工
 柵工は,山腹斜面又は階段状に柵を設けて,表土の流亡を防止するとともに柵背面に
埋め土をして,導入植物の生育に良好な環境条件を造成するために計画される。
 柵工を計画する場合,堆積土砂や膨軟な地山などに簡易な土留工として,土砂の流出
やガリーの発達を防止することを主な目的にする場合と,のり切整地した斜面の階段上
などに生育基盤を造成する場合とがある。いずれの場合にあっても,柵を支える杭が打
ち込める土質条件のところでなければ実施が困難である。
 A 編柵工
   編柵工は,のり切土砂などの堆積が比較的厚い場合に,のり切土砂などの流出を
  防止する場合に,その固定のために計画される。
 B 木柵工
   木柵工は,壁材に板材や丸太材を用い,壁材にかかる土圧を杭で支持するもので,
  簡易な土留工としての機能をもかね,導入植物の良好な生育環境を造成する。原則
  として土留工までは必要としない程度ののり切土砂等の固定を図る場合に計画する。
 C 二次製品を用いた柵工
   二次製品資材を使用する柵工の構造は,基本的には編柵工と同じであり,杭丸太
  の代りに鉄パイプや硬質塩化ビニール系パイプを使用し,帯梢の代りに鋼板やエキ
  スバンドメタル,繊維板系の透水性マットや鉄網等を用いるもの,又は併用された
  もの等である。また緑化を早めるために,壁材に種子や肥料を添着させたものなど
  もある。
                                       
(2)積苗工
 この工種は,寡雨地帯や乾燥地などにおける植生の生育基盤を造成する代表的工種で
あるが,最近では切芝の採取が困難であることから,切芝にかえて二次製品が使用され
る。
                                       
(3)筋工
 崩壊地斜面の雨水の分散を図り,山腹の地表侵食を防止するとともに,生育環境を整
え植生の早期導入を図るために計画する。
 A 石筋工
   山腹斜面に石れきが多く存在し,これを整理する必要がある個所で計画される。
 B 萱筋工
   崩壊斜面傾斜が急で,広い階段の切り付けが困難な場合や堆積地などで階段を設
  ける必要がない場合に,萱株を筋状に植えて表面水の分散を図るために計画する。
   萱筋工は,土質条件に寄っては単独で施工することが無理な場合が少なくないの
  で,他の工法と併用する場合が多い。また積雪地帯では,萱の生長により雪崩を誘
  発し易いので防止工の併用が必要である。
 C 芝筋工
   芝筋工は,崩壊地周辺からの降雨水が流入し易く,崩壊斜面のガリーの発生を防
  止できない場合に計画される。
 D そだ筋工
   そだ筋工は,積苗工・石筋工と同じくそだの背後に埋め土をして,植栽木の生育
   に良好な環境条件を作る工法である。そだの使い方によって,そだ筋と連束そだ
   筋とがあるが,一般にはそだ筋が多く用いられる。
 E 二次製品を用いた筋工
   緑化用二次製品は,現場における工事の省力化等の視点から多用の傾向にある。
   @客土効果のある二次製品の筋工は,原則として比較的土壌条件の悪い個所に計
    画する。この種の筋工では,母材に有機質資材を用いることによって,肥効の
    永続性が確保され易く,植物の生長を恒常的に図ることができる。
   A客土効果のない二次製品の筋工は,筋実播工を確実に施工するよう改善したも
    のであって,少量の肥料分は含まれるが恒常的な植物の生育を助長させるには
    不十分である。従って植物が良好な生育をするためには,土壌条件の良い個所
    であることが必須要件であるる
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