05 森林機能保全：山腹工事
森林機能保全：山腹工事（抜粋） 資料：林業技術ハンドブック
（森林総合研究所 堀江保夫氏）
Ⅰ 山腹荒廃地の分類
山腹荒廃地の分類には，①降雨，地下水，地震，雪崩等その誘因によるもの，②地質
や地形など自然要因によるもの，③地質と気象条件を組み合わせたもの，④荒廃の形状
（板状剥落型，貝殻状型）などがある。これらの分類は，事業実行の判断基準や荒廃機
構の解明など，その目的によって異なる。
１ 荒廃形態別の分類
（１）崩壊地
①山腹崩壊地：豪雨，地震，雪崩，地下水など
②渓岸崩壊地：流水の渓岸侵食，土石流による侵食など
③火山性崩壊地：火山，①及び②の成因を含む
④シラス崩壊地：①及び②の成因を含む
注：③，④は地質上の特性から，特異の形態を示すので別に分類される。
（２）はげ山
①はげ山：気象（寡雨），地質，人災害（山火事，乱伐等）
②煙害地：精錬ガス
（３）地すべり
①第三紀層地すべり：地質的要因
②破砕帯地すべり：地質的要因
③温泉地すべり：地質的要因
２ 地帯別の分類
荒廃地の成因にもっとも関係するのは，気象，地質，地形などである。これら成因は
極めて複雑に作用しあって，いたるところに荒廃地が発生し存在する。これら荒廃地の
特性を把握し分類することによって，山腹復旧工法の選定などに直接つながる。
（１）気象条件による分類
①多雨地帯：年降水量2,000㎜以上の地域
②寡雨地帯：年降水量1,500㎜以下の地域
③多雪地帯：根雪期間の降水量が40～50％を占め，最大積雪深が1.5m内外の地域
④凍上地帯：積雪量が少なく，気温の低下の著しい地域で，凍上の起こる地域
⑤一般地帯：以上の区分に入らない地域
（２）地質的分類
①花こう岩地帯（石英閃緑岩，石英斑岩，花崗片麻岩等を含む）
a 深層風化をうけたもの，又は著しい変成作用をうけたもの
b その他
②安山岩，玄武岩地帯
③火山堆積物地帯
④中・古生層地帯
a 破砕作用をうけたもの
b その他
⑤第三紀層地帯
⑥その他の地帯
Ⅱ 山腹工事の設計
１ 山腹工種の分類
山腹工種を目的別に，次のように大別する。
①崩壊斜面を安定させるための基礎工事
②崩壊斜面の植生群落を形成させるため，直接植物を導入する緑化工事
２ 工種の選定及び配置
山腹工事の工種は，山腹基礎工と山腹緑化工に大別される。これらが崩壊地の特性に
対応して有機的に計画されることにより，治山工事の目的である防災機能の高い森林の
造成ができる。
山腹基礎工事は，荒廃の形態を軸とした自然環境条件を十分考慮し，もっとも安定し
た形で復旧できる適切な工法の選択に留意し，合理的かつ安全に目的が達成できるよう
配置することが必要である。また，山腹基礎工は緑化のための基礎的な手段である。し
たがって，決して画一的であってはならない。
山腹緑化工は，植生（草本，木本）により斜面を被覆し，表土の安定と維持を図るも
のである。原則的に山腹基礎工が設けられ，安定した植生の生育基盤が造成されたうえ
に施工することが必要であり，植物の生育ができる条件にもっとも適応した形で，工種,
工法を選定し配置する必要がある。
これらは次のような役割をもつ。
①崩壊現象に伴う不安定斜面部に対する緩和措置
②不安定な状況にある土層の固定措置
③傾斜，土質，涌水，その他荒廃地のもつ立地条件から，崩壊や侵食の危険性がある
場合の防止措置
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