31 身近な植物群落〈植物群落の相観と区分〉
                                        
                    自然における植物は,限られた生活場所で
                   競合があり,耐忍が強いられて生活していま
                   す。そんな植物の集合体に単位を考慮したと
                   き,群落といいます。群落の構成員になるに
                   は,幾多の規制を受けることになります。
                   と,著者は述べています。
                    本稿は,東海大学出版会発行の「植物群落
                   とその生活」を抜粋して参考にしていただき
                   ました。SYSOP
 
〈植物群落とは〉
 ある土地に生育している植物の集団を,全体的,包括的に指す場合これを植生と呼び
ます。その植生の内容を具体的に観察すれば,その中に幾つもの違った植物の集団を区
別することができます。これを植物群落と呼んでいます。これはある場所に具体的に存
在している個々のものを指していることもありますし(そのときは特に植分,林分など
といいます),また多くの植分を比較,統合して見出される類型(群落型,群落単位)
を意味することもあります
 
〈植物群落の相観と植物群落の大区分〉
 △相観と生活形
 植物群落の外形を全体的,視覚的にとらえたものを相観といいます。当然対象とする
植物群落の優占種(その群落の主体をなす植物)の形態的特徴に支配されるところが大
きいですが,それだけでなく,群落全体の密閉の程度,高さとその揃い方,種数などか
らみた複雑さの程度,季節性,色調など様々な要素がかかわっています。だから相観は
植物群落を全体的,大局的に把握しようとするときにはその基礎になるものといっても
よいです。
 この相観に対して大きい影響をもつのは,群落を構成する個々の植物の適応性であり,
そこに現れた生活力の仕方です。そのような生活様式を類型化したものを生活形といっ
て,その分類は古くから試みられました。地上植物・地表植物・半地中植物・地中植物
・抽水植物・浮葉植物・沈水植物の分類はよく知られている生活形で,休眠芽の位置を
基準にして区分されています。このような分類は,後には植物の形よりも,むしろ生活
様式そのものの類型に関心が向いたため,生活型といわれるようにもなりました。その
中で,植物の生育地でみる具体的な成長,生活の結果が表現されている外形による分類
は特に生育型といわれます。
 △群系
 丘陵地の雑木林と海岸の松林とでは,相観は明らかに別です。この違いに基づいて植
物群落を類別する方法で,この結果として得られた群落型を群系といいます。群系の意
味する内容は,現在では共通した気象条件,立地条件下に発達し,一定の相観をもつ植
物群落の類型単位です。次はこの種の分類としては一つの典型となったRiibelの群系で
す。
 
 A 樹林
  T 熱帯多雨樹林 1 熱帯多雨林 2 熱帯多雨低木林
  U 照葉樹林 3 照葉高木林 4 照葉低木林
  V 硬葉樹林 5 硬葉高木林 6 硬葉低木林
  W シャクナゲ樹林 7 シャクナゲ低木林
  X 夏緑樹林 8 夏緑高木林 9 夏緑低木林
  Y 雨緑樹林 10 雨緑高木林 11 雨緑低木林
  Z 針葉樹林 12 針葉高木林 13 針葉低木林
 B 草原
  [ 陸上草原 14 硬葉草原 15 常緑草原 16 高茎草原
  \ 水生草原 17 挺水草原 18 沈水草原 19 水蘚草原
 C 荒原
   20 乾燥荒原 21 寒冷荒原 22 海岸荒原 23 移動荒原 24 岩隙荒原
   25 岩上荒原
 D 植物プランクトン及び土壌微植物群
   26 植物プランクトン 27 土壌微植物群 28 空中浮遊微植物群
 
〈世界の植生帯〉
 △熱帯,亜熱帯の植物群落
 年間を通じて生育に十分な温度条件下にあります。
 ・熱帯多雨林
 降水量が多く通年多湿な地方の常緑の森林群落で,30〜40mに達する高さに形成され
る通常の森林上層部を,さらに突き抜けて極めて高い木が点在するのが一つの特徴です。
木生ツル植物や着生植物が豊富です。アフリカ中部,アジア南部,オーストラリア東北
部,中央アメリカ,南アメリカ北部などに発達していますが,それぞれ森林を構成して
いる植物は同一ではありませんが,それぞれは共通の相観をもっています。
 ・雨緑林
 降雨量が少なくなり,季節的な乾期が明らかな地方にみられる森林で,乾期に落葉し
雨期に葉をつける落葉広葉樹林です。乾期の期間が短い地方では部分的に落葉が起こる
中間的なものもあります。
 ・サバナ
 乾期が長い地方では,乾期に落葉する樹木が疎生し,地表にイネ科植物を主とした草
本が密生した樹林がみられます。乾期が長く乾燥がさらに厳しい地方では樹木は散生す
るのみで,イネ科植物の草原が成立します。このようにほぼ連続した草原に樹木が散生
する群落をサバナと呼んでいますが,樹木の密度は乾燥の度合により変化します。
 ・熱帯,亜熱帯半荒原及び荒原
 降水量が少なく乾燥が特に厳しい地方では植物はまばらとなって裸地に近い荒原とな
ります。いわゆる砂漠です。ここには多肉植物や,短い雨期に急速に生活史を終えるよ
うな一年生や地中植物など,特色ある植物がみられます。サバナとの中間的な環境では,
棘トゲの多い植物や多肉植物,イネ科植物などが疎生してまばらな低木林となる半荒原
もみられます。
 △温帯,寒帯の植物群落
 季節的に植物の生育に不適な温度条件となります。
 ・硬葉樹林
 冬季に雨が多く,夏は比較的乾燥する地方の森林又は低木林です。常緑で厚く,硬い
小形の葉をつける樹木を主とします。
 ・暖温帯多雨林(常緑広葉樹林)
 暖温帯で夏に雨が多いか,年間を通して湿潤な地方の森林です。常緑でクチクラが厚
く,硬葉樹よりやや大きい葉をもつ広葉樹を主とします。
 ・落葉広葉樹林(夏緑林)
 寒冷期(冬季)に落葉する広葉樹を主とする森林です。低温帯で十分な降水量がある
地域に成立します。
 ・温帯草原(ステップ)
 温帯の乾燥気候下に成立するイネ科植物を主とする草原です。樹木の生育はありませ
ん。
 ・温帯半荒原及び荒原
 乾燥がもっと極端になりますと,半荒原及び荒原となります。熱帯の荒原と違ってヨ
モギやアカザの仲間を主とします。
 ・北方針葉樹林
 寒冷が厳しい長い冬と短い夏をもつ亜寒帯地域の針葉樹林です。大部分は常緑ですが
一部落葉性の針葉樹が含まれます。
 ・ツンドラ
 主に矮生低木,広葉草本,コケ類,地衣類などがつくる植物群落です。極寒のため高
木の生育は不能な地方に成立します。
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