22a 不老長樹マニュアル〈葉の異常〉
 
 △すす病
 葉の全体が黒色の煤のようなものに覆われる病気で,煤のようなものはカビですが,
植物の葉の深く食い入るものではありません。葉の上にある昆虫やアリマキの排泄物な
どにすす病菌が繁殖し,次第に広がって枝や幹にも広がることがあります。日当たりや
風通しの悪い環境にでやすく,光合成が阻害されて樹勢が弱ります。
 罹病樹種:イチョウ,イチイ,モミ,トドマツ,カラマツ,アカマツ,クロマツ,ゴ
      ヨウマツ,ヒノキ,サワラ,ヤナギ類,ヤマモモ,シデ類,カシ類,クリ,
      ナラ類,マテバシイ,エノキ,コブシ,タブノキ,トベラ,イスノキ,モ
      チノキ,イヌツゲ,カエデ類,モクゲンジ,ボダイジュ,シナノキ,ツバ
      キ,サザンカ,ナツツバキ,モッコク,サカキ,ヒサカキ,サルスベリ,
      ヒイラギ,カキ,サンゴジュ
 防除法 :カイガラムシ,アブラムシなど殺虫剤(後述)を散布,殺菌剤にはダイセ
      ン水和剤800倍液やトップジンM水和剤15倍液を散布します。
 △葉ふるい病
 主として針葉樹の葉に寄生して,褐色の病斑をつくり,早朝に葉が落ちるのでこの名
があります。樹種により菌種も異なるものがあります。
 罹病樹種:モミ,トドマツ,ツガ,エゾマツ,アカマツ,クロマツ,ゴヨウマツ,ヒ
      ノキ,サワラ
 防除法 :マンネブダイセンM500倍液を5月下旬から数回散布,又は4-4式ボルドー
液を6〜7月数回散布します。
 △さび病
 半担子菌類のさびきん目に属する一群のカビによって起こる病気で,植物の細胞を殺
さずに寄生する純粋寄生菌ですので,明瞭な褐色病斑にはなりません。表皮を被って黄
色いさび色の胞子を噴き出します。同じ一つの種で何種類かの胞子を作り,同一菌で全
く異なった植物に寄生するものがありますので注意する必要があります。マツのこぶ病
がさび菌によって起こります。
 罹病樹種:モミ,トドマツ,ツガ,エゾマツ,カラマツ,アカマツ,クロマツ,ゴヨ
      ウマツ,サワラ,ヤナギ類,オオバヤナギ,シデ類,ブナ,タブノキ,イ
      スノキ,ハマナス,サクラ類,モモ,ウメ,ボケ,カイドウ,エンジュ,
      イヌエンジュ,フジキ,フジ,キハダ,チャンチン,カエデ類,モクゲン
      ジ,ボダイジュ,シナノキ,ナツツバキ,ヒメシャラ,ミズキ,ツツジ類,
      シャクナゲ類,ドウダンツツジ,キンモクセイ,ヒイラギ,クリ,チシャ
      ノキ,ニワトコ,ウグイスカグラ
 防除法 :クロン0.5%加用石灰硫黄合剤8倍液を3月下旬に,その後4月中旬と秋
      に5-10式ボルドー液,ダイセン水和剤,モノックス水和剤600倍液のいず
      れかを散布します。
 △たんそ病(とうそう病を含む)
 たんそ病菌及びこれに極めて近似した菌によって起こる病気ですが,大きな丸い褐色
の斑点となり,同心円状の輪紋ができます。その斑点の中に黒色小粒点が多数でき,胞
子が形成されて分散します。
 罹病樹種:ヤナギ類,ヤナギ類(とうそう病),ヤマモモ,シデ類,ブナ,カシ類,
      ナラ類,ケヤキ(とうそう病),タブノキ,ウメ,エンジュ,カラタチ,
      モチノキ,カエデ類,アオギリ,ツバキ,モッコク,サカキ,ヒソカキ,
      ミズキ(とうそう病),ツツジ類,シャクナゲ類,キンモクセイ,ヒイラ
      ギ,カキ,キリ,キリ(とうそう病)
 防除法 :6月中旬〜9月下旬に銅水和剤400倍液又はダイセン水和剤500倍液を散布
      します。
 △うどんこ病
 葉の全面にうどん粉を振り掛けたように,白いこな状の胞子が多数できる病気で,枯
死に至るようなことはありませんが,樹勢の弱った樹に発生しやすく,美観を害します。
 罹病樹種:ヤナギ類,オオバヤナギ,シデ類,ブナ,カシ類,クリ,ナラ類,シイノ
      キ類,マテバシイ,ニレ類,ケヤキ,エノキ,ムクノキ,カツラ,モクレ
      ン,コブシ,ハマナス,サクラ類,モモ,ウメ,カイドウ,イヌエンジュ,
      フジ,チャンチン,カエデ類,トチノキ,ボダイジュ,シナノキ,アオギ
      リ,サルスベリ,ユーカリ,ミズキ,ツツジ類,ドウダンツツジ,カキ,
      ニワトコ,ハコネウツギ
 防除法 :発生を認めたらポリオキシン乳剤か水和剤1000倍,モレスタン水和剤3000
      倍液などを散布します。
 △葉ふくれ病
 タフリナ属菌によって起こる病害で,葉の緑色が薄くなり厚みを増してよじれたよう
になります。その表面は粉状を呈し,多くの胞子が形成されています。
 罹病樹種:カシ類,ナラ類,シイノキ類,ウメ
 防除法 :休眠期の3月中旬ごろ石灰硫黄合剤8倍液を10a当たり350l散布します。
 △もち病
 葉が大きく肥大し,ツバキなどでは人の掌を広げたぐらいの大きさになることがあり
ます。ツツジではその部分から不定芽が出て,天狗巣状になることがあります。肥大部
には白色粉状の胞子ができます。
 罹病樹種:ツバキ,サザンカ,ツツジ類
 防除法 :病葉を除去するとともに,4-4式ボルドー液又は銅水和剤500倍液を1週間
      おきに2〜3回散布します。
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