先日(99/02/27)、多摩川で水面からサンプルを採取。プランクトンいるかな?ということだったのですが、ちょっと覗くと黒い点が動く。これもトビムシのようです。ただ、家の水槽に「わいた」トビムシとはかなり違います。
上から見るとこんな感じ(左)。あまり活発ではないので、小さなガラス容器に入れて、水をスポイトで吸い出すと、底のガラス面に張り付いたまま。それを裏返して撮った写真が右のやつです。これ、ゴミがついてるのが残念ですが、かなりはっきり写りました。クリックで拡大してみてください(22KB)。
右の図で赤く示した「A」の部分が「腹管」、青く示した「B」の部分が「跳躍器」です。いずれもトビムシ類の特徴。
まず腹管ですが、表面がいつも湿っており、トビムシ類の別名、「粘管類」という名はここから来ているそうです。滑りやすい平面で体を保持するのに役立っている、といいますが、実際、これで容器の底に張り付いていたようです。また、吸水や呼吸に関係するとも想像されているそうです。
跳躍器の方はもちろん「跳ぶ」ための構造です。正確には青く示した部分全体ではなく、その一部だと思います。英語でトビムシをspringtailといいますが、確かに、しっぽで跳ねる訳です。
普段は上の図のように腹側に曲げこまれていて、跳ぶときに後ろに伸ばし、地面などをたたくようです。
あまりうまく撮れていませんが、左の写真は伸びている状態ではないでしょうか?お尻が上に上がっています。また、目みたいなのも見えます。
このトビムシ、あまり活発には動きませんでしたが、後で固定しようと思っているうちいなくなってしまいました。残念。
平凡社の「日本動物大百科8・昆虫I」pp.52-55 にきれいな写真と解説があり、p.54に出ている「エビガラトビムシ」(Homaloproctus sauteri:シロトビムシ科)っていうのにちょっと似てる、などと書いてたのですが、違う模様。シロトビムシ科は叉状器(跳躍器)が退化してるというから、違いますね。もっとそれらしいのがありました。
ムラサキトビムシ (Hypogastrura communis) というのがそれです。
体長1.2mm内外。体は赤紫色に藍色調を交え、(略)
日本でも極めて普通で、雨後の水溜まりに大群をなして浮び、雨上がり畑に落ちている飯粒などに密集したり、キノコ類を加害したりする。
学生版日本昆虫図鑑 p.3 北隆館
なお、「日本淡水生物学」には、ムラサキヒメトビムシ(Ceratophysella communis)と出ていますが、「日本産土壌動物」では、Ceratophysella はムラサキトビムシ属の中のフクロムラサキトビ亜属としてあります。
この夏、水面で同じようなのを見ました。同定ごっこをすればよかったかな。写真も撮らなかったけど。
今立源太良先生によるトビムシ類の解説:
動物系統分類学 7(下A) 節足動物(IIIA)昆虫類(上) pp.244-366 中山書店