再生で有名なプラナリア(扁形動物・渦虫類・三岐腸類)ですが、その生殖はちょっと変わってます。 文献を調べると、どうも次のような具合になってるらしい、というお話。結構びっくりしちゃったので、感想を交えてここに記録。
(文責:佐々木玄祐 gen-yu@mtc.biglobe.ne.jp 間違い等をご指摘いただければ幸いです)
一般の常識では、「生殖→オスとメス」「生殖→卵と精子」 というように、有性生殖がイメージされる。 これは我々ヒト、あるいは哺乳類などだけを意識している結果だが、 生物界を広く見渡せば、ただ1個体だけで子を作る無性生殖も普通に行われている。 植物ではごく一般的だし、動物でもそんなに珍しいものではない。
有性・無性、両方の方法で生殖することができるものが普通のようである。 たとえば、ゾウリムシは分裂(つまり無性生殖)でふえるばかりではなく、 条件によっては2個体が接合し、遺伝子を交換(つまり有性生殖)をする。
また、ミズクラゲなどの「世代交代」もかなり有名である。 ミズクラゲでは、「ポリプ」世代は分裂(つまり無性生殖)でふえるが、 低温などの条件によって「クラゲ」世代をつくる。 クラゲは成長して卵や精子を作って有性生殖を行い、 やがてまた「ポリプ」世代を作る。 …というように、無性生殖と有性生殖をくりかえしている。
さて、プラナリアはどうなのか?というと、同じ種の中にも系統によって3つのタイプがあるらしい。
3. のタイプは普段は分裂でふえているが、季節や水温などの条件で有性化し、 有性生殖をする。 ただし、無性個体と有性個体はポリプとクラゲのように全く違った体ではない。 有性個体にある卵巣・精巣や交接器官が、無性個体には見られないだけである (ちなみにプラナリアは雌雄同体だが、ふつう自家受精はしない)。
それに対して、どう条件を工夫しても、 有性生殖あるいは無性生殖のどちらかしか行わない系統も存在する。これが1. と2. である。
これは Dugesia tigrina (アメリカナミウズムシ)において古くから知られていたが、今日では、日本の在来種である D. japonica (ナミウズムシ)などでも、種内にこの3つの系統が存在することが分かっている。また、種によっては3つすべてではない場合も当然ある(上記3.だけの種が一番普通か?)。
ところが、特殊な実験的操作を加えると、無性系のものを有性化したり、その逆ができるというのである。「性の誘導」が可能なのである(誘導されたものがずっとそのままか、については不明)。
方法としては次の3つで成功している。
この誘導の機構については、ホルモンなどが考えられているらしい。有性個体をエサとして(たとえば凍結して)与える方法では、異なる種の有性個体を与えても起こるという。
プラナリアの場合、種を区別するキーとなるのは交接器官の形態である。 それがない無性系の場合はどうなっちゃうのか?と思っていたが、 有性系を食べさせて育て、交接器官を作らせ、それらが同一種だと確認した例もあるらしい。
しかしもともと、有性生殖しないものには「生物学的種概念」が適用できないし、 この無性系の扱いにはいろんな議論がありうるように思う。
また、本当に分裂だけでずっとやってられるのだろうか?「親戚」の陸生プラナリア、コウガイビルでは無性生殖しかしない種、というのがあるようだが、同じように有性化させて調べることはできないのか?などなど、いろんな妄想がふくらむ。
1) 有性虫はあまり分裂しないので、無性虫にくらべ体の大きさがずっと大きい。
2) GI系は10年ほど飼っているクローンだが、「もはや有性化しなくなった系統」。昔は低温にしたり有性虫を食べさせれば簡単に有性化したが、今ではどんなに低温に長いことおいても全く有性化しない。
クローンといえば、30年も維持していた例もあるとかです。事故で消えちゃったそうですが、どうも連中、どこまでも分裂OK、みたいですね。でも、その間に性質が変わってしまった訳で、うーん、生き物はやはりナゾ。
生殖器官の図もいただきましたので、転載させていただきます(感謝)。交接器官は図の緑色のあたりのようですが、実物見てないのでイマイチ不明なり(うーむ)。
この問題をやってる、という研究室をWebでみっけ。東工大・星研究室。
プラナリアにおける生殖様式転換機構 (http://www.bio.titech.ac.jp/~mhoshi/projects/planarian.html)
というページで説明されています。特に新しく知ったことはないけど、自分が面白いと思うことが注目されてるのは、なんだか嬉しい ^^;
2000/10/29 追記
星研究室は東工大から移動したようです。