ミジンコのたまご

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Last update: 99/08/17
an ephippium of mi-jin-ko

例のコケムシの件で、ときどき多摩川をうろついてますが、まだ群体はみつかりません。でも冬に休芽をみつけた時のようなゴミがまた水面に浮いていたので、「夏だけどどうかな?」と見てみました。実は休芽も沢山見つかったのだけど、こんなのを発見。大きさは、上のまっすぐの部分の長さが1.2mm程度。落射照明。


これは一目で「ミジンコの休眠卵だ!」と直感。確か坂田ビデオで見たような覚えが。webにもこれに似た写真があって、多分間違えないと思います(リンクしたページはオンライン自然科学教育ネットワーク(ONline Scientific Education Network: Onsen) の一部です)。耐久卵という言い方の方がいいのかな?

でも厳密にいえば、卵のパックですよね。これには2つ入ってる。もっというとこれは「胚」、つまり受精は済んでるんだから「卵」というのも変かも。

というので、「川村日本淡水生物学」を見たら、どうもこの構造、正式には「掩卵部」 (ephippium) というようです(p.410)。メスが有性生殖のための卵を作るのに伴って、メスの体の中で受精卵を収める場所が肥厚してきて、これが次回の脱皮の際に母体から離脱する、とのこと。ふーむ。

別の所でも、お腹に ephippium をもったミジンコの写真を発見。これを見ると、なるほどこういうふうになってたのか、と分かりますのでぜひご覧ください。


数的には、今回のサンプルではコケムシの休芽の方が圧倒的に多かったですが、同書によれば、「波打ち際に打ちよせられた掩卵部を多数みることは、われわれがしばしば経験する」とのこと。

でも、浮いているとは知らなかった(沈むこともあるそうです)。ミジンコに限らず「土の中にいろんなムシの休眠卵があって、条件が良くなると次々沸いてくる」と聞いてたので、沈んでるんだろうとばかり思っていました。こんなふうに浮いていると、例のコケムシの休芽(のうちのフロートブラストといわれるやつ)とほとんど同じ感じですね。やはり散布という意味もありそうですね。

ミジンコの場合、普段は単為生殖をしていて、この卵は条件が悪くなると雄と雌で作る、というからコケムシとは少々話が違います(コケムシの休芽は単為生殖)。

ところで、この「たまご」はかえるのだろうか?低温とか、そういう条件が必要なのか?かつて、水野寿彦博士は水深60mの湖底の泥からこれを採集して、ミジンコをかえすのに成功したそうですが。

また宿題。でも初めて実物を見たのでとても嬉しいです。


撮影:99/08/09