産業廃棄物不法投棄監視業務 12月の巡回監視報告

おばあちゃんの「自然との優しい共存」

85歳とは思えない元気な
おばあちゃん。

 軽自動車がやっと通れる位の九州山地の林道をパトロールしました。不法投棄は何もありません。ふた山越えたでしょうか、随分入り込んだみたいです。そろそろ引き返そうかと思ってると「エッこんな所に」とビックリする集落に出くわしました。
 林の合間に点々と家の屋根が見えますが、よく見ると明らかに廃屋でした。奥まった谷間に7〜8戸の集落です。そのまま林道に車を止め、家の回りを眺めていると、後ろから一台の軽乗用車が止まって、中年の女性の方が降りてこられました。

 なんと、この中の一軒にお母さんが独りで住んでいらっしゃるそうで、週に2回は熊本から会いに来ると言うことでした。
 なるほどよく見ると上の方の一軒家付近から煙が立っていました。是非お母さんに会ってみたいと思って、大きな買い物袋をさげた娘さんの後をついて行きました。
「私の家(熊本市内)に連れてきても2日ともたないんですよ。
すぐ帰りたいと言うんです。
今でも元気に畑仕事をしています」と。
 煙は今日の農作業で庭の畑の草を燃やしてる煙でした。

 「山、川、木、岩すべてが想い出です」と娘さんは付近を案内してくれました。 生活用水は、昔弘法大師様が立ち寄られた時、杖で掘って水を出されたそうで、コンクリートの水槽には水が満タン。渇水期でも雨期でも水量は全く変わらないそうです。

 遙か下に見える集落に小学校が見えます。昔は片道50分ほど歩いて通ったそうです。「ここのお家のビワは甘くて美味しかった」「この上のシイの木の下に観音堂があります」見上げるとでっかいシイの木が生い茂っていました。
 以前林業や炭焼きが盛んな頃は、20世帯70人程住んだ活気あふれる集落だったと懐かしく話してくれました。


この集落までは町道からさらに小さな林道を4〜5km程の所ですが、
毎年夏は役場から数回林道の草刈りをしてくれます。
でないと通れなくなります。
ある年は途中までで終わっていたため再度役場にお願いに行ったそうです。

県道に面した下の集落の方は
「ここも山里バッテン、あそこはここよりもまだ山奥ですバイ」と、
中腹にかすかに見える廃屋を見上げながら話を聞きました。

しかしおばあちゃんにとっては、このうえもない生活の場。
便利な都会の雑踏の中で、
当たり前のように暮らす人々の心身はいかがなものか。
おばあちゃんはそんな事を考えてるかもしれませんね。

平成15年1月16日は、年が明けて初めてこの地区のパトロールでした。
 昨年一緒に訪ねた相棒の池田さんもご年輩です。車の中で、気になる独り暮らしのおばあちゃんの話になり、昨年撮った写真も持ていましたので持参することにしました。訪ねた時は土間の竈の前に座って昼ご飯の準備中。薪が上手に燃えていました。
 娘さんからは耳が遠いと聞いていましたので、後ろ姿に戸口から大きな声で「おばあちゃ〜ん!」と叫び、何度目かにやっと気づいて振り向いてくれました。ビックリされましたが、写真を手に振ってみせると、想い出したように安心して出てこられました。

 帰るとき「写真代をあげんと.....又来てもらえんから....」と心配されます。池田さんがおばあちゃんの耳元で「長生きしなっせよ(してください)」と叫びましたが、何度かめにやっと「長生きね」と言ってうなずかれました。

写真を手に笑顔のおばあちゃんです

家の前の崩れそうな石段を降りながら振り返ると、いつまでも写真を見つめるおばあちゃんと、
枯れた雑草の中の大きな古木の梅に、膨らむつぼみがとても印象的でした。
3月までパトロールは続きます。真っ白い梅の花が咲く頃に、もう一度訪ねてみることにしました。

おばあちゃん いつまでもお元気で!