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Onomatopeo


1997.01.03 その1

「ウダウダ」しながらの1996年、「ブツブツ」言いながら仕事場通い、池袋例会に行けなくて「イライラ」、
冷や汗「タラタラ」のエス討論会、「ルンルン」気分の上海ソウル、思い出笑い「ニヤニヤ」、
エス単語を「ボチボチ」覚え、覚えたら直ぐ忘れ記憶力の無さに「ホトホト」愛想つき、健忘症で脳は「スカスカ」、
毎日酒ばかり「バカバカ」飲んで胃は「ボロボロ」、また外国大会に行きたいなんて「ツラツラ」思う。

 
年賀状が中国の女性からで「ニコニコ」「ニヤニヤ」、正月は家で「ゴロゴロ」、食い過ぎでおなか「パンパン」
酔っぱらって「フラフラ」、始めたゴルフは下手くそでスコアは「メタメタ」、弓道も相変わらず「ダラダラ」、
ワープロだけは上達し「スイスイ」タッチで「ブツブツ」「モグモグ」言いながら「シコシコ」と、このクロコ原稿を書いている。

 
さてこの「 」に囲まれたカタカナは、毎日なにげなく使っている単語。
が、これらは2〜3文字の繰り返しで、繰り返しでなければ意味が通じない。
ウダしながらとか、ブツ言いながらとか、イラするニヤするタラする、ではなんだか分からない。

繰り返しによって初めて意味があるわけで、どうも日本語特有(?)の表現なのか。

じゃ、というわけで正月に実家に集まった家族親族一同で、使っている言葉を上げてみたら、
いや実に沢山あるのに一同ビックリ。 
これをみれば、なるほど会話を豊かにする微妙な意味合いを補っている。

と気になり、ちょっとだけ広辞苑を開いてみた。

擬 態 語 視覚・触覚など聴覚以外の感覚印象を言語音に写し表す語。 
「ニヤニヤ」「フラフラ」の類

擬 音 語・擬 声 語 
音響・音声をまねて作った語。 
「サラサラ」「ザワザワ」「ワンワン」の類。

 そう、これだな・・・しかしこんなこと誰でも知っている事、知ったかぶりして書くなんて相変わらず図々しいと
思っているナ。(読んじゃいないか)
外国語には、これに類する言葉はどうなっているのだろうか。
おそらく、単語の繰り返しによる擬態語や擬音語はナイだろう。 
しかし、外国語には繰り返し語はないとしても、意味からそれに類する単語はあるだろうか?


1997.01.03  その2

いずれ外国語は、語彙が少なく、日本語ほど豊かにはないはずだと勝手に思い、これらの言葉も豊かな表現
で日本語特有と思って調べたら、実はそうでもないようだ・・・

例えば、「ニヤニヤ」は [ 広辞苑 ]
1.気味わるく笑うさま。ひややかに、また、いやみに笑うさま。
2.悦に入ってうすら笑いするさま。
英語では 
(歯をむいてニッと笑う)grin (くすくす笑う) chuckle は (ひとりで)ridetacxe
( ばかにするように)moke sarkasme (とりいろうとして) flate

広辞苑で分かるように、「ニヤニヤ」は情景によって1.2.の意味合いをとらなければならないが、
英語やエスペラントでは、それぞれ別の単語で表現する事が出来る。

じゃ、「ブツブツ」は [ 広辞苑 ]  
1.つぶやくさま。
2.小言をいったり不平をもらしたりするさま。
英語では 
(不平をいう) grumble ( 不満 ) discontent
dissatisfaction は (不平を言う ) brumbli pledi やはり、同じだ。


でも「ウダウダ」は無いぞ。
[ 広辞苑 ] どうでもいいことを、いつまでもしたり言ったりするさま。 
とある。 
英語やエスペラント辞典にはナイ( 自分の辞書では )


日本語特有と思っていたのに、結構外国語にも表現豊かな単語があると、イライラしていたが、「イライラ」は
[ 広辞苑 ] 思うようにならず、気があせるさま。
英語では (苛立つ) be irritated be excited は   
(苛々する) incitigxi nerbozigxi ekscitigxi
あ、これは単に苛々するという単語を短縮表現しただけで、所謂擬態語とは違うナ。

ええい、不平「タラタラ」、じゃこれはどうだ
[ 広辞苑 ]  
1.しずくなどにしたたるさま。
2.好ましくないことを、長く続けるさま。
英語では   
dripping in drops (流れる) run pour は    
priparoli longlonge sian malkontenton.
どうだ、英語は単語としては無い( ようだ )、おそらく説明的に表現せざるを得まい、
エスペラントはまさに説明文であり、ピッタリの単語は無いゾ。


1997.01.03  その3

結局感情や状況を背景にして、いろいろ表現する単語が出来、さらに短文が組合わさって、これらの単語
が使われるようになったいうわけダナ。

 以下は家族親族皆で集めた表現繰り返し単語集。
hが擬態語 iが擬音語に仕分けしたが、当たっているかナ。
でもそれぞれ深い? 意味あいがあるよネ、どっちかというと感覚語だな。



i ガーガー    iゲラゲラ    hダラダラ    hヒーヒー    iボリボリ      iカタカタ    
i ゴーゴー     hチカチカ    hピーピー    hボロボロ    hカチカチ     iコトコト     
hチクチク     hヒクヒク    hポンポン     hカッカッ    hコロコロ     hチョコチョコ 
hヒタヒタ     iミシミシ     hカラカラ    hサクサク    hチョロチョロ  hヒヤヒヤ   
メキメキ     hカリカリ    hザクザク    hツイツイ    iヒューヒュー   iモグモグ   
hガリガリ    iザワザワ   hツラツラ    iヒュルヒュル   hモチモチ    hカンカン   
hサラサラ    hツルツル   iビュンビュン  hユラユラ     hガンガン    iシクシク   
hツンツン     hヒラヒラ    hユルユル    iギャーギャー  hシコシコ    iテカテカ   
hヒリヒリ     hウトウト    hキョロキョロ  iシトシト     hテレテレ    hビリビリ  
hギョロギョロ  iジャージャー hドカドカ     hピリピリ     iキラキラ     hジャラジャラ  
iドキドキ     hブーブー    hキビキビ   iジュージュー  hトコトコ     hフガフガ   
hキリキリ    iショボショボ  hトボトボ    hブカブカ     iキンキン     hジワジワ   
iトントン     hプカプカ     hグイグイ    hシンシン    hドンドン    hプチプチ  
iグーグー    hジンジン    hナヨナヨ     hフラフラ     iクチャクチャ  iスースー   
hネチネチ    hプリプリ    iグチャグチャ  hスイスイ     hニヤニヤ    hプンプン    
iグツグツ     hズカズカ   iバクバク    hペコペコ     iグビグビ    hズケズケ  
iパクパク    hベタベタ    hクラクラ    hスタスタ     hバサバサ   hペラペラ 
hグラグラ    hスヤスヤ    hバタバタ  hボーボー     iクリクリ      hズルズル  
iパチパチ    hボコボコ    hグリグリ    iゼーゼー     iパラパラ    hボサボサ   
hクルクル    hセカセカ   iバリバリ    hポタポタ     iクンクン      hゾクゾク    
iパリパリ    hボチボチ   iゲーゲー    hソロソロ     hバンバン    iポトポト  
iケタケタ    hタマタマ    hパンパン   hポリポリ                            
          



1997.01.15 その4      

というわけで、結論らしいものはないまま擬態語講座?はその3で終わりと考えていたが、
これを読んでさっそく親族から、反応があった。

※正月に兄弟家族が集合し、それぞれの子供たちが大きくなった今、話題も自然に中年か 
ら熟年への曲がり角、ボケ談義に花が咲く。
以前の家の電話番号を記憶しているかとか、子供たちの名前や過去の共通の知人の名前 
とか、日々の生活の記憶、朝歯を磨いたろうかとか、今日食べた食事の内容とか。そして、

最近良く使う単語が「アレアレ・・ソレソレ・・ホレホレ・・アノ・・コノ・ ・ホイホイ等々」いわゆる
指示代名詞ばかり繰り返す。
衰えのきている記憶にたいするアルツハイマー的恐怖感が、
一同実は自分だけではなか ったという安心感と連帯感で話が弾む。
そのうちにこの場が、この擬態語のおもしろさでさらに盛り上がり、いろいろな擬態語 
が集まったわけ。

次ぎなる手紙は、名前は忘れたが、自分のあの妹から来たものだ。
そろそろ自分の歳を忘れかかっている一見若い彼女は、次のように皆を心配していた。

『はやばやとこの研究成果を拝見しました。 
なかなかのものでないかとにやにや. にたにたしながら
時に爆笑しながら読みました。
ソレゾレ皆お互いのボケ具合を笑いながらも、心配していましたが、まだまだ大丈夫の 
ようですね。
ところで上記のはやばやとかまだまだとかは、擬態語でも擬音語でもないようですが、 
どういう種類にはいるのでしょう。
さらなる研究をお願いします。それにしても暇だったんだねー。
ボケボケのよいよいにならないよう、お互い気をつけて、二月に又皆様に合うのを楽し 
みにしています。』

 
次に、千葉方面のあの銀行に勤めているあの弟から電話、高校受験生の息子が、
この講座を読んで、あ・これってオノマトペだよと即座に言ったそうだ。
以下がその内容。


『擬態語や擬音語は言語学上はオノマトペといい、日本語にはこれが非常に多い。 
これらは感覚的なものであり、意味を説明するのは困難で、外国語に訳すのはまさに至 
難です。 
例えば「しとしと」を和英で調べると softly とあります。 
しかしこの softly を英和で調べると、柔らかに 穏やかに優しく 又は 小声で 
静かに となっています。
つまり、しとしと雨が降るを it is raining softly と英文 
にしてもシトシトの微妙なニュアンスは伝わらないわけです。 
しかし、オノマトペは日本だけにあるというわけでもありません。
例えば、中国には「ウェイウェイ」というオノマトペがあります。 
漢字で書くと「微微」であり、強いて訳せば「ほんのり」という意味です。 

つまりオノマトペは音楽です。
言葉で表せない人間の感性を音声そのものによって表現するからです。
しかし、そうであるがために、言葉の本質である抽象性を欠いてしまい 、
内輪の言葉(その言語を使う国民しか分からない)にならざるを得ないのです。』


1997.01.18 その5

あの弟の子供とは思えない、実に見事で明晰な説明である。
そうか、オノマトペは音楽なんだ。
聞き慣れないオノマトペってなんだ? 
といささかビックリしてさっそく辞書をひらいて見ると。
( これも、自分だけが知らないだけで、皆は知っている常識かもしれないな )
英和辞典では、あるある(これは有るを2回繰り返しただけだな)
onomatopeia 擬声語 とある広辞苑で オノマトペア [言] 擬声語に同じ
さて、エスペラントではオノマトペオ onomatopeo


なんか物足りなくて、本屋を漁ってみると、次のような説明があった。
語源をたどるとギリシャ語のオノマトポイア onomatopoiia 、
これは「語をつくること」自然界のオトをまねて語をつくることの意。 
フランス語でオノマトペ onomatopee  英語のオノマトペイアよりも短く、
日本語になじませやすいということもあって、フランス語のオノマトペと表現する。
                    柴田 武著 [日本語はおもしろい] 岩波新書

 
千葉の受験生に刺激されオジサンの興味はますます募る。
ここで、上に挙げた [日本語はおもしろい] 岩波新書および、
我が田舎の最近やっと開館した市営図書館で借りた〔擬音語・擬態語使い方辞典〕創拓社
からオノマトペの言語学的勉強をしてみよう。
(こんな素晴らしい辞典があるとは、相当高度な分析がされている)  

オノマトペには、清音・濁音・半濁音の3つに仕分けされるようだ。
同類語の音形が共通なグループには意味も共通している、このことがオノマトペの中核的な特徴とされる。

さて、この3つをイメージ分析してみると 
a. 清  音: 澄む   かすか  ごく軽い 小さい  細い  少量     好ましい  平均的 
b. 濁  音: 濁る   強い   重い    大きい  太い  多量     不快     強烈 
c. 半濁音: はずむ 鋭い   軽い    細かい  細い  やや少量  愛らしい  刺激的


以下の文章をみると 
1.高熱で赤ん坊は押しつぶされたような声で、ヒーヒー泣いている。 
2.うるさい! 朝から赤ん坊をビービー泣かすな。 
3.母親の乳が出ないので、空腹の赤ん坊はピーピー弱々しく泣いてばかりいる。

このヒーヒーは清音、ビービーは濁音、ピーピーは半濁音になる。
声  運動の状態 成立している状態  (事態に対する対応) 
a. ヒーヒー  :かすか  弱い    平均的  少量    どうしたらいいか困った 
b. ビービー :強い   強い     強烈   多量     うるさい やめろ 
c. ピーピー :鋭い   鋭い     刺激的  やや少量 かわいそうで悲しくなる
これらは同類語であり、基本的な意味が共通で音形が違う語である。
オノマトペには、この類が非常に多い。                   

1997.01.18 その6

また、ガブガブ カタカタのように、同一部分が繰り返された出来ている語、畳語形についても 
音・声・運動の状態、成立している状態として 
音・声・運動の状態:繰り返し、連続、進行、経過状態、畳みかけて勢いが加わる様子 
成立している状態 :状態の成立、存続の協調、複数、時間的に何度も確認する           

空間的にあちらこちらに確認するガブガブとは、「液体を大量に勢いよく何度も飲む音・ようす」
を示すわけで、またカタカタとは、「堅くてあまり重くない物体がほかの物体に連続して軽く打ち当たって出        
す音・ようす」(しかし、良く分析して的確に説明しているね) 
これは、要するに「繰り返し」である。
繰り返しだからこそ、オノマトペには「ふかぶか」「からがら」
のような連濁がないと著者は言う。
なるほど、本書その3で集めた擬音語・擬態語もこの分析に良く合致するではないか。

ある事態を表現するのに、オノマトペ以外の語を用いると、いくつもの語が必要になる。
全体のカオスを、分析して表現しなければならないからである。
これに対して、オノマトペを用いると、一語で済む。
カオスをカオスとして、分析しないで表すからである。
「がぶがぶ」の例で 
1.ビールをたくさん一気に何度も飲む。 
2.ビールをがぶがぶ飲む。
すなわち「がぶがぶ」が、「たくさん」+「一気に」+「何度も」を一手に表すから。 
これは、ことばの音と意味の間に論理的・必然関係があるからで、
オノマトペ以外では音と意味との間には何ら必然的関係はない。


犬をイヌという音でいうのは、犬の鳴き声とも犬の生態とも関係がない。
犬をワンワンと言えば、これはオノマトペから成立した名詞だから、音と意味との間に必然的関係が成立する。 
上記に示すガブガブやカタカタも非常によく意味を音楽?にしている訳だ。


さて、この本によればあの宮沢賢治はオノマトペが好きだったとある。

「・・・では並んで」先生は呼び子をビルルと吹きました。
それはすぐ谷の向うへの山へひびいてまたピルルルと低く戻ってきました。
「風の又三郎」このビルルとピルルルは宮沢賢治が創作したオノマトペであるとのこと。
濁音のビルルは濁る多量と言う意味あいから、強く大きくぶわーっと吹いているさまをしめし、
半濁音のピルルルははずむ・少量として、こだまのようなひびきを意図したオノマトペであろうと思われる。
また、水に落ちるドブンという濁音を清音にアレンジした作品もあり 

そのとき、トブン。黒い丸い大きなものが、天井からおちてずうっとしずんでま  
た上へのぼってゆきました。キラキラっと黄金のぶちがひかりました。  
『カワセミだ』子供らの蟹は頸をすくめて言いました。「やまなし」     


1997.01.18 その7

 賢治は、濁音であるドブンでは重いものが落ちて、ときに沈んだままになる感じであることを嫌って、
身軽なカワセミのために清音で始まる「トブン」というオノマトペを創作したのだろうと著者はいう。
なるほど、このように、感性のままにオノマトペが創作される場合もあるわけで、
これがあの息子が言う内輪の言葉になってしまうわけだ。
まったく、感性の鈍い人間や、まして外国人には理解が困難な言葉になりうる。


現代でも感性が鋭い人達は、見事にオノマトペでの会話をしてしまう。
カンピュータといわれている巨人軍の長島監督の会話を聞いていると、オノマトペだらけだ。
また、テレビなどでも頭の回転の早いタレント達の会話は、オノマトペが活躍しているし、
現代っ子の若者達の間の会話にも氾濫しているのがわかる。短い言葉にたくさんの意味を込め、
世代の範疇で理解しあう、悪く言えばスラング・隠語に近いオノマトペも体感的に創造させている。


だから、外国語・エスペラント語に訳す場合は、以上のこれらの分析を頭にいれて文章を作らなければ、
正確な意味は伝わらない。

では、実際にどんな形で日本文学などをエスペラントに訳しているのだろうか? 
季刊誌のRiverojに連載されている、太宰治のあの「斜陽」La suno sinkanta のエスペラント訳
をみてみるとおもしろい( trad. UEYAMA Masao 1910-1988 )

[母は毎日、お部屋でなんとなくグズグズしていらっしゃるのである]            
[C^iutage s^i inerte restis en sia c^ambro, s^ajne tamen senkiale.]
このグズグズを、理由もなく(senkiale) としている、敬語にあたる「いらっしゃる」は表現のしようもないが。

[と、とぎれとぎれにおっしゃって、イヨイヨはげしくお泣きになった]  
[s^i diris vorton kaj vorto kaj pli intense ploris.]
とぎれとぎれは、訳もそれらしい表現だイヨイヨは、よりはげしくと意訳系。

[花びらのような大きな牡丹雪が、フワリフワリ降り始めていたのだ]                       
[Neg^flokoj grandaj kiel petaloj de peonio ekfalis s^vebe kaj s^vebe.]             
このフワリフワリは、 s^vebe kaj s^vebe とまさに繰り返し表現の訳でピッタリ。
なるほど、繰り返しで意味を深める表現は使われている。
そういえば 良く使うエスペラント熟語で iom post iom(すこしづつ) pli kaj pli(ますます) 
なども繰り返し熟語だ。 

1997.01.18 その8

つぎは意訳の例 [そのひとだけには、ビシビシ叱られた]      
[nur s^i severe riproc^is min.]  
ビシビシを厳しく に意訳
[あんたたちのままごと遊びみたいな暮らし方を、ハラハラしながら見ていたんです]
[mi deantau^e rigardis vian konduton kun timo kvazau^ ludon de infanoj.]
ハラハラを 心配不安をもちながらに意訳
ままごとは ludon de infanoj 子供の遊びとアッサリ意訳している。

[私をいやにジロジロ見るようになった]  
[ofte jetas al mi suspekteman rigardon.]
ジロジロを疑いの目で見るに意訳
[・・・ひとりでクスクス笑った]
[Mi ellasis petolan ridon,sentante ・・・・]
クスクスをいたずらっぽい笑いに意訳

前に書いたように、表現を豊かにする手法として、オノマトペが活躍するわけが、文学書をとおして理解が出来る。

音感的表現の例が以下である
[お風呂場の硝子戸が真っ赤で、パチパチという音が聞こえる]           
[la vitrita pordo de la c^ambro spegulis helrug^an koloron, audig^is kraketoj.]
[また、コツコツと靴の音が聞こえてきた]
[li denove venis kun bot-kraketoj.] 
krak +eto(接尾辞 弱, 小を接辞する) これは、パチパチもコツコツも、
音の響きの感じとして同じ言葉で表現されている例だ。


で、エスペラント辞典でこの音感単語 kraki+eto を調べてみたらビックリ
kraki ( 火・拍手が ) ぱちぱち  ( 鉄砲が ) ぱん    ( 紙・落ち葉が ) かさかさ     ( ドアの把手が ) かちゃり   
( 粉・雪が ) さらさら        ( 物がわれて ) がちゃん ( むち・平手うちが ) ぴしり  ( 木が ) めりめり
( 菓子が ) ぱりぱり     ( 水車が ) かたこと ・・・・・・・・・などの音をたてることとある、

いやーびっくりしたこの単語一つでこの系統の擬音のほとんどすべてを引き受けている。
となると、この単語ひとつでこうなるわけだ。 
Li krakas per manoj.   かれは手をパチパチたたく。 
Pordo krakas.       ドアがパタンという。 
Vipo krakas.        むちがピシリという。
Dentoj krakas.      歯がガタガタいう。 
Kokino krakas.      めんどりがカッカッと鳴く。


1997.01.18 その9

しかし、これは擬音語でなく擬音であることの説明語であって、主語により雰囲気を想像して、
状況擬音を思い浮かべるヒント語みたいな言葉だ。
でも一つの単語に接頭辞や接尾辞を組合わせ、形容詞と副詞でいろんな表現が出来るわけで、
実は一面ではエスペラント語はとても便利なわけ。

同意語の英語のクラッカーはどうかな
crackle  ( 火が )がパチパチ音を立てる     
パチパチ( バリバリ )という音というぐらいで、エスペラント語ほどオールマイティではない
が ー ! 
和英辞典を調べていると 擬声語擬態語の説明が、わが所有の辞典351ページにしっかり掲載されていた

『日本語は英語よりはるかに多くの擬声語や擬態語をもっているので、日本語に相当する擬声語・擬態語が
すべてあるわけではない。
動詞、動詞+副詞(句) で表したり、意訳によらざるを得ない場合も多い。』
例として以下が示されている。

骨をガリガリとかみ砕いた          crunched on the bone.  
廊下はギシギシ音がする          the corridors creak ( make creaking sounds )
食器がカチャカチャと揺れた         Tableware was clattering.   
前歯2本がグラグラする           I've got two loose teeth in the front.   
柱時計のカチカチという音にイライラする I'm irritated by the ticking of the clock.  
ガラガラ音がする               makes a rattling sound   
パタパタはためく               fluttering

ドアーをドンドンたたく             pound on the door
ポンポンと手をたたく             clapped his hands
雨がザアザア降る              It's pouring
ズルズル飲む                 slurp
シクシク泣く                  sob   

トボトボ歩く                   plod  
ボリボリ掻く                  scratch
ジリジリする                  irritate  
ペチャクチャしゃべる             yack-e-ty-yak,-yack   
ハアハアいいながら聞く           pant

 英語にはあまり擬音語がないといいながら、けっこう擬音表現単語が揃っているな。
こうしてみると、英語でも結構豊富な表現が出来る訳で、なにも騒ぐ話じゃないぞ。

しかし考えてみると、同じ動作にも表情いろいろあり、これを様々な言葉で表現することは、
それだけ多くの単語を必要とし、言語を難しくする反面があり、豊富な単語の存在が必ずしも歓迎とは言えない。
エスペラント語に、不規則変化や多重単語を制限し、なるべく簡素化し使いやすい言語とするコンセプトがある。 
この根幹的思想から鑑みると、単語を組み合わせて擬態的擬音的表情を会話に含ませること、
これを大事にする必要があるだろう。


1997.01.18 その10

 ●秋は喨喨と空に鳴り/空は水色、鳥が飛び
これは高村光太郎の『秋の祈り』の一節である。
この喨喨(りょうりょう)は、らっぱや笛などの音が明るくほがらかに響きわたるさまを形容した擬音語である。
実は、この文は相原林司著の「漢字力を高める本」の中のある項の出だしである。
続けると、このように、日本語の擬音語や擬態語と呼ばれるものは、「喨喨」や「嫋嫋」、

あるいは「さらさら」「きらきら」のように、同じ文字、同じ音を反復した形のものが多い。
「嫋嫋」(じょうじょう)は、音が長く細く響く形容で、「余韻嫋嫋」などと使うものである。
「錚錚」(そうそう)という言葉がある。
もと、金属音がさわやかに響く形容であるが、それから転じて、「錚錚たる人物」のように、
非常にすぐれた人物の形容に使われるようになった。  
(相原林司著の「漢字力を高める本」より)


そうか、擬態語あるいは擬音語は、漢字表現もあるのだった。
では漢字擬態語擬音語を以下に
(相原林司著の「漢字力を高める本」より)
  
坦々  波瀾がなく無事なこと         タンタン  
悠々  落ち着いている様子          ユウユウ  
営々  休まずたゆまず仕事をするさま   エイエイ
汲々  余裕のないさま            キュウキュウ  
朗々  ほがらかに響く音を形容       ロウロウ  
丁々  物を続けて打つ音 (丁々発止)   チョウチョウ  
津々  わきだして尽きない形容(興味津々)シンシン 
揚々 ....得意な様子(意気揚々)        ヨウヨウ  
洋々  広々としている形容(前途洋々)   ヨウヨウ  
煌々  明るく輝く(電気が煌々と輝く)    コウコウ 
啾々  もの悲しく泣くこと(鬼哭啾々)    シュウシュウ
寥々  さびしいほど数の少ない様      リョウリョウ  
飄々  ふらりと現れ、ふらりと消える様   ヒョウヒョウ  
皎々  月光などが白く輝くのを形容     コウコウ  
濛々  濛々たる砂漠             モウモウ
滔々  勢い良く止まらない様         トウトウ  
嚇々  あかあかと輝く(嚇々たる武勲)   カクカク

 さて、以上の言葉を知っていましたかー

ああ、オノマトペに疲れてしまったのでここらでお開き。                                ジスラ