2月14日の、放課後の教室。 「望月先輩、これを受け取ってください!」 「ありがとう」にこっ。 「いえ、こちらこそ、受け取って頂いてとっても嬉しいです! それでは失礼します!」 ぱたぱたぱたぱた。 「………ふぅ。10個目か」 「佳世ちゃん、すごいねー、もてもてだねー」 「まーねー。女子中だから当然なのかも知れないけど」 「じゃあもう1個おまけに、はい。私から」 「……美奈ちゃーん。どうしてあなたがくれるわけ?逆じゃないの?」 「逆じゃないよ。どう見たって、私が、佳世ちゃんにあげる、 その方が普通でしょ?誰だってそう思うでしょ?ね?」 「こいつめ……なんでお前の方が背が低いんだよ、こいつめこいつめ」 「私のせいじゃないもーん。佳世ちゃんがバスケなんかやるからー」 「どうしてお前の方が細いんだ」 「ふふーん」 「胸はぺたんこだけど」 「むっ」 「それに随分伸びたね。転校してきた時は男の子みたいだったのに」 「へへへ」 「触らせて」 「どぞどぞ」 「私も伸ばそうかなー。でもバスケあるしー」 「お団子してる人もいるでしょ?」 「うーん、面倒そうだなー」 「じゃ、これ。手作りだよー。うまく出来たでしょ」 「どうしてお前の方が、そんなに上手に出来るんだ」 「それは努力の賜物よ。ほらほら11個目」 「先輩!」 「あ。どうぞどうぞ。お先に。私は後でいいですから。どうぞ」 「いえ、橋本先輩!」 「は?」 「これを受け取ってください」 「は、はあ」 「ありがとうございます!」 ぱたぱたぱた。 「……嬉しい?」 「いやはや、なんとも複雑な」 「でも今の子、どっちかというと貰いそうなタイプじゃない?」 「そうだね。あの子なら、一緒に歩いてても、私の方が…」 「そういう基準で選ぶのか」 「ふふーん」 「じゃあ、私んちで食べるの手伝って」 「はい、じゃあ帰りましょう」