「誘拐」66b/郊外のパーキングエリア

「いたい、ぐすっ」
ほっぺもお尻も痛い。こんな痛い思いをして泣くなんて、いつ以来だろう。 小学生の頃を思い出した。小学生の時のような気分になってきた。
「おい、黙ってられるか?」
「は、はい…」
「でも黙りっきりも変だよね。幼稚園児じゃないし、お名前くらい言えないと。」
「うーん、そうだなー」
「それじゃあ、あなたのお名前は、岸本リサ。うん、それでいいでしょ。 私の妹って事で。あなたは岸本リサ、千葉市立下山小学校5年2組。 さ、言ってごらんなさい。あなたのお名前は?」
「ぐすっ、き、岸本、リサ」
「どこの小学校ですか?」
「千葉市立、下山小学校、ぐすっ、5年2組」
「あなたのお姉さんはどこですか?」
仕方なく目の前の女性を指差した。
「じゃあもう1回。あなたのお名前と小学校を教えてください」
「岸本リサ、千葉市立山下小学校の、5年2組、です」
「私とあなたの関係は?」
「えっと、この人が、お姉さん、です、ぐすっ」
「じゃあお姉さんの言う事を素直にききますか?」
「…はい…」
「きかなかったら、今度は百回は叩くからね。はい、車に乗って」
背中を押されて車に乗り込んだ。二人も乗り込み、すぐにエンジンの音がした。 数秒して、運転席の女性が急に振り向いた。
「おまえの名前はなんだ?教えろ」
「えと、岸本、リサ、です。」
「よし」
車が発進した。


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