「誘拐」66a/郊外のパーキングエリア

「はい、黙ってます、何もいいません」
思いっきり即答した。
「……なんか元気が有り余ってるな。縛っとこう」
車からロープを取り出して僕を縛り始めた。
「や、やめて、いた、そんな」
腕と体を縛られて、両手首も縛られて、両膝、両足首も縛られて。 手も足も縛られて、動けなくなった恐怖心でいっぱいの上に、 強く縛られてあちこちが痛い。
「はーい、これに入れちゃってね」
今度は、大きなカバンの口を大きく開けて構え始めた。
「や、やめて、そんな狭いところ」
「うるさい。こうしとこう」
口にタオルを巻きつけられた。
「うぐうぐ、うぐ」
「さて、入れるか」
カバンの中に放りこまれて。じじじじじ。夜で元々暗い視界が、本当に真っ暗になった。
「よっこらせっと」
ごとん。トランクに入れられたようだ。ロープがあちこちよじれて、余計に痛くなる。
「静かにしとけよ」バタン。
「これでしばらくは静かだな」
聞こえる声が小さくなった。
「あそこで飲み物買ってくる」
「じゃあ私のも買ってきて」バタン。
しばらく静かになる。たまに車が通り過ぎる音だけ聞こえてくる。 出来るだけ痛くないように、ちょっとずつ体を動かしてみる。 でも変な姿勢になって、今度は疲れてくる。 狭いカバンの中でなんとか楽な姿勢になった頃、車のエンジンの振動が始まった。


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