「誘拐」11j2/横浜市TD大E同好会

「おー、おかえりー。どうだった?」
「どうだったって言われましても…」
「おまえら見てきたんだろ?」
「見ては来ましたが…」
「なんだ、違ったのか?」
「いや、確かに顔は佐藤なんだけど、着ている服が…」
「テレビに映った時のままだったのか?」
「いや、Tシャツにジーパンだったんですが…」
「いつもと一緒じゃないか」
「いや、Tシャツは女の子用のかわいい絵が描かれた…」
「服の柄くらいで見間違うか?」
「いや、なんとなく一回り小さくなったというか…」
「小さくなるかぁ?」
「いや、本当に小さく見えたんですよぉ。 それに、なんだかおびえてるような顔つきで、いつもの佐藤と全然違って…」
「まあ、事件の後であるからな」
「この子は佐藤に良く似た小学生の女の子ですよって言われれば、 はいそうですかって答えてしまいそうな…」
「なんだなんだ、結局どっちだったんだ?」
「一応俺の顔見て、ちゃんと俺の名前を言えたって事で…」
「他に何も話さなかったのか?」
「おびえた女の子みたいで、声かけられる状態じゃなかったんですよ」
「おびえた女の子って、佐藤なんだろ?」
「こうやって話してると自信が無くなってくるんですよ、 学生証も保険証も犯人に脱がされた服と一緒に捨てられたっていうし」
「おいおい」
「やっぱ、警察の人に『自信がない』って言っといた方が良かったですかねぇ」
「まあ見ず知らずの小学生の女の子がおまえの名前知ってるはずないし、 他に連絡付かないし、合ってるんだろう」
「はぁ」
「もういい加減下宿に戻ってるだろうから、行ってみるか」


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