「誘拐」11f/山田町のとある家の前

「あら、おはようございます。で、結局誘拐事件はどうなったの?」
「佐藤さんちではなかったらしくて、結局山田小の子じゃなかったみたいだけど」
「なーんだぁ……って、近くで子供が誘拐されたのは変わらないのね」
「でもその子、西山田小の子に話し掛けられた時に『山田小だ』って答えたらしいんだけど」
「あら、そうなの?でも全員に確認の電話入れたんでしょ?」
「だから違うのよ。もうほんと紛らわしい事を言う迷惑な子よねぇ。どこの子かしら」
「私立行ってる子かしら。でもそんなお嬢様が行方不明になったら、それはそれで騒ぎになって分かるはずよねぇ」
「夏休み中だから、遠くから遊びに来た子とか」
「そんな子が山田小だなんて嘘つくかしら?」
「家出少女?」
「それなら考えられるわね」
「家出少女の小学生がこの辺うろついてるの?で誘拐されちゃって。やーねぇ」
「別の意味で子供を外に出せないじゃないの。」
「いいじゃない、家出なんかして知らない街を歩いていると怖いお姉さんに誘拐されて恐ろしい目にあうって、 子供に言い聞かせれば」
「嘘つくとひどい目にあいますよって」
「そうよねぇ」
「ほんと、どんな子なのかしらね。よっぽど悪い子なのよ、きっと」
「あら内田さんに高尾さん、おはようございます」
「昨日の誘拐の話をしてるんですけどね」
「ああ、あれ?テレビでやってるわよ」
「山田小の子じゃなかったんでしょ?まったく迷惑な嘘ついて、どんな女の子なんだか」
「……山田小の子じゃないし、女の子でもなかったような」
「え、あれってもしかして男の子?」
「24歳の男子大学生だって話だけど」
「うっそー、だって朝テレビで見た時の格好ったら…」
「あれは犯人に着せられたって」
「でも、犯人は若い女2人組じゃなかったの?」
「それじゃあ、24歳の男子大学生が、児童公園歩いてて、 西山田小の女の子から声かけられて、『自分は山田小の子だ』って答えて、 若い女2人組に誘拐されて、あんな服着せられたってわけ?」
「そうなるわねぇ」
「なによ、そんな奴のせいで私たちは昨晩心配したりしたわけ?ばっかみたい」
「誘拐されたんだかなんだか知らないけど、 『ご迷惑をおかけしました』の一言くらいみんなの前で言ってほしいわよね」
「そんなのが児童公園を歩いてるの?やあねぇ、不良少女より悪いじゃない」
「でもテレビで見た限りでは普通の小学生の女の子だったわよね」
「だったらなお困るじゃない。知らない子と遊んじゃダメって言い聞かせなきゃ」
「とにかく、その女の子…じゃない、その男子大学生、どんな奴なの?」
「住所はこの辺だったような」
「一度顔を確認しておかなきゃ」


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