「誘拐」11e/西山田小学校校職員室

「あ、おはようございます」
「おはようございます。昨日の誘拐事件、報道されてますね」
「んー、最初は山田小学校の子だって言ってましたけど、人違い誘拐だったみたいですね」
「そうらしいですよねぇ。場所から考えると、やっぱりうちの児童じゃないかしら」
「昨日は確認も何もしてないですからね。まあ保護されたんですから良かったですけど」
「やはり警察に行ってみた方がよいでしょうか」
「うん、うちの児童の可能性が高いんだから、早く行って確かめて、 それに子供を安心させてあげなきゃ」
「テレビを見た感じでは5、6年みたいだから、5年主任と6年主任、 それに教頭の三人、でよろしいですか」
「それでは行ってまいります」
「よろしくお願いします」
「……しかし、あの児童公園であんな事が起るとはねぇ」
「いつも人が多い場所だから安心してたんですが」
「夏休みも、あと10日、というかまだ10日もあるというか」
「同じ小学校の子が地元で誘拐されたんですから、不安も大きいでしょう」
「親御さんもそうでしょう。…顔見せ程度に家庭訪問でもしますか?」
「そうですね。高学年の子は親しい友達がさらわれた訳だし、 低学年は低学年で不安が大きいだろうし」
「三人が帰って、様子を聞いてから相談しましょう」
(テレビを見る)
「ほー、あんな遠くまで連れ回されたんですか。恐いなー」
「犯人からも相当な扱いを受けたみたいで」
「いやまったく、なんといったらいのか………ん?」
「え?」
「………んーと、んー、とりあえずうちの児童ではない……のかな?」
「…いやまあ、なんといったらいいのか」
「…それでもうちの地元で女の子…じゃないのか…とにかく誘拐があった事は変わりはないし…」
「それはそうだ…が…」
「あの三人、どうするんだろう…」


[11目次に戻る]