「誘拐」11d/横浜市内の女子高の体育館

「それじゃあ、お昼にしよう」
「よいしょっと」
「…ねぇ今朝のニュース見た?」
「見た見た。誘拐でしょ?」
「西山田ってすぐそこじゃん。やーねー、恐いよ」
「でもさ、誘拐犯って、二十歳前後の女二人組だって話じゃないの?」
「えー、そうなの?」
「もしかしたら、私達と同い年かもね〜」
「えーー……それはないでしょ、確か車を運転してるはずだから」
「あ、そうか。でも中学生が小さな子を誘拐したってのもあったし、 誘拐事件が近くであったら私達も疑われたりするかもよ?」
「小さい女の子誘拐するっていったら、やっぱロリコンの男じゃないの〜?」
「これからは女子高生も疑われる時代なのよ〜」
「やーねー」
「そこのテレビつけてみようよ」
「………」
「………なによ、これ、男子大学生なの?」
「なにそれ?」
「こんなひらひら襟のブラウスに真っ赤なスカートはいて?」
「あれは犯人に着せ替えられたって話だったと思うけど」
「それでもねー。変な奴」
「他のチャンネルにしてみよ」
「……えー、これが男子大学生?やだー」
「こんなの誘拐したって私達が疑われたら、やだよねー」
「変なこと言わないでよー。まるで私があんなの誘拐する変態みたいに」
「あんな男子大学生を間違って誘拐する犯人も間抜けよねー」
「チャンネルかえよ」
「……女子小学校で保護されたって、なによそれー」
「いいじゃん、こんなの女子小学校にでも通えば」
「えー、やだよ、そんなの気持ち悪い」
「えー、こんなのがTD大通ってるって方がやだよ。私受験するつもりだったのに」
「どうせ女二人組に誘拐されて着せ替えられるような男なんだからさ、 いじめて追い出せばいいじゃん」
「こいつ、うちの近くに住んでるじゃない」
「絶対どこかで会うよ」
「警察署前で会うかも」
「もう、私が誘拐して、どっかの女子小学校にほうりこんでやろうか」


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