「誘拐」11b/東京都世田谷区のある家庭

「あら、あの子、もしかして…」
「そうだ、うん、あの時お子様ランチ食べてた子だ」
「じゃあ、あれって誘拐犯だったのかしら。恐いわねー」
「あー、あの子、やっぱり私より年下じゃなかったんだー」
「え?」
「24歳だっていってるー。でもお子様ランチ食べてたー」
「いや、あれは恐い誘拐犯に無理矢理食べさせられてたのよ」
「いいなーいいなーいいなー」
「あの後、まっくらで誰もいない山の中に一人ぼっちにされたんだよ?」
「いいなーいいなーいいなー」
「だからー、24歳にもなってお子様ランチなんて恥ずかしいでしょ?」
「いいなーいいなーいいなー」
「ちがうでしょ。そんな事言ってると、幼稚園に通わせますよ」
「むー…、いいなー」
「まったくもう。24にもなった男が、あんな若い女にいいようにされて、 声も出さずにお子様ランチ食べてるなんて、サイテーよねぇ」
「んー…、いいなー」
「あんな男の子みたら、馬鹿にしなさいよ、ね」
「ふー…、いいなー」


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