「誘拐」00/公園

8月20日夕方。
TD大学3年生佐藤透(24才)はサークルの帰りに公園の日陰で涼んでいた。 近くのジャングルジムに小学5〜6年生くらいの女の子達が登って遊んでいる。
最近の小学生は大きいよなぁ。って僕が小さいだけなんだけど。 いつも小学生に間違われて困るんだよなぁ。 電車は塾帰りの小学生が結構いるから声をかけられたりしないけど、 「君、子供料金でいいんだよ」って言われた時はショックだったなぁ。 レンタルビデオショップなんかに夜遅く行ったりすると確実に声をかけられてしまう。 そんな時は学生証を見せればいいけど、最近は面倒くさくて嫌になってきた。 教育実習どうしようかな、就職活動うまくいくかな。
「ねえ、あなたどこの小学校?見ない顔ね」
小学生に小学生と間違われちゃったよ。面倒だから隣の小学校の名前を言った。
「塾通いなの?ねえ一緒に遊ばない?」
まさか一緒に遊ぶわけにもいかない。
「暑いから休憩してたけど、お母さんにすぐに帰れって言われてるから」
「ざんねーん」
面倒だ、もう帰っちゃおう。立ちあがって道に出ようとすると
「ねぇ君、山田町の佐藤さんだよね?」
20歳くらいの茶髪の女性2人が話しかけてきた。 この人達にも小学生と思われてるんだ。ほんと面倒。
「え、ええまあ、あそこのア……わーっ」
いきなり二人がかりで僕をかかえこんで近くにとまっていた車に押しこまれた。
「あれ?」
「あれって誘拐?」
「ねえねえどうしよう」
「おまわりさんよ」
ジャングルジムにいた女の子の声が聞こえたが、すぐにエンジンの音で聞こえなくなった。 口に中にハンカチを押し込まれ、毛布にくるみこまれた。

20分くらい裏道をくねくね曲がったように思えたが、毛布の中なのでよく分からない。 毛布をはがされ外に連れ出されてみると、割と大きいマンションの前だった。 人通りはなく、二人は割と堂々と僕をマンションの一室に連れ込んだ。僕は手をロープで縛られた。
「ごめんね、洋子ちゃん。乱暴に扱わないから、恐がらなくてもいいのよ」
「ちょっと用事があるだけだからね」
「あのー、僕、洋子って名前じゃなくて、佐藤透って名前なんですけど」
「おねえさん達をだまそうったって、そうは行きませんからね」
「違うんですって」


[次(01)へ]
[NSL-indexに戻る]