目覚ましが鳴った。いつも聞いている目覚ましの音とは違う。なんだか可愛らしい音。 あ、女子小学生の部屋に連れ込まれて、寝ちゃったんだ。部屋の中や布団の匂いが ちょっと違う。ここってよそんちなんだ。よそんちに泊まっちゃった。 「あー、いつもより早く寝たはずなのに、学校でも寝たのに、まだ眠いよー」 僕を抱いて寝ていた女の子がそんな事を言った。僕はネグリジェを着たまま、女の子に 抱かれて寝ちゃったんだ。今お布団から出るとネグリジェ姿を、自分でも見るし、 他人からも見られてしまう。でもよそんちだし、いつまでも布団から出ない訳にも いかないし。それに昨日は久美ちゃんにも裕子ちゃんにも色々とお姉さんぶられて しまって恥ずかしかったから、せめて早起きくらいは。 「よしっ。起きよう。透くんも起きよう!」 久美ちゃんが起き上がって布団がはがされてしまった。また一歩遅れてしまった。 「はい…」 遅れて起き上がる。下を見ると、自分が着ているネグリジェが見える。 「じゃあ着替えようか」 良かった。このまま洗面したり朝ごはんを食べる訳じゃないんだ。それなら安心。 などとのんびりと思ってたら、久美ちゃんはさっさとタンスに向かっていた。 「このワンピースなんて着てみない?きっとぴったりだよ」 また僕にお下がりを着せようと企んでいる。 「いや、あの、僕は、昨日着ていた服で」 「ダメだよー。あの服のままで昨日は学校で寝ちゃったんだから。女の子がそんな服を 着て行くなんて」 「いやだから僕は男子大学生で…」 「ほらほら、このワンピース、どう?」 ネグリジェほどフリルいっぱいではなくて、むしろ飾りのないワンピースだけど、 だからといってワンピースである事には変わりない。 「あの、スカートはあまり…」 「えー?そうなの?私も面倒な時があるけど」 またタンスの中を探し始めた。 「やっぱ下着も替えた方がいいよ?」 「え、でも…」 「これなら大き過ぎないと思うよ」 小学生女子用の下着を渡された。多分背が伸びる前のお下がりだから、女性っぽい下着 ではない。警察で着替えとして渡されたのと同じような感じ。誘拐犯からはもっと 女の子っぽい下着を渡されたから、マシな方かもしれない。仕方ないから、パンツは ネグリジェの中で着替える。それからネグリジェの手だけを抜いて、中でごそごそ やって、渡された下着に半分腕を通して、そして一気に着替えた。 「あ、透くんってそういう体操服の着替えみたいな事を出来るんだ。うん、女子は みんなやってるよね」 恥ずかしいからこんな着替え方をしてしまったけど、女子みたいな着替え方だと 言われて、ちょっと後悔した。でも久美ちゃんの目の前で堂々と脱いで女子の下着を 着るなんて、それはなんだか変というか、羞恥心のない小さな子のようにも思えて、 ちょっと嫌だし。 「スカートが嫌なら、このジーンズはどう?」 渡されたジーパンは、パッと見た所では特に特徴がなく普通だ。でもお尻の方を 見たら、大きく○と×がオレンジ色の刺繍で入っていた。太ももにもブランド名が 入っていて、色の使い方がちょっと女の子っぽいというか子供っぽい。それが目立ちは するけど、そこまで変でもない。これを嫌だと言ったら、もっと女の子っぽいのを 出されそうだから、これで妥協しよう。 「これでいいです…」 渡されたジーパンをすぐにはいてしまう。早く上を着て、下着を隠したい。 「これ、いいと思わない?子犬柄だよ」 渡されたシャツには、全体に小さな犬の柄が入っていた。全身が子犬柄。さすがに これは子供っぽ過ぎる。 「あ、あの、これはちょっと…」 「じゃあ…」 そう言いながら久美ちゃんが手にしたのは花柄のシャツだった。 「あ、やっぱりこれでいいです」 「だよねー。やっぱ子犬だよね」 花柄よりはマシと思って、我慢して全身が子犬柄の服を着る。こんなのを着てたら 余計に小学生だと思われてしまう。大学に行く途中に、またどこかの小学校の先生に 捕まって、学生証を見せて男子大学生だと分かってくれても、『あなたみたいな 小さな子がこんな時間に一人で歩いてたら、周りの大人が心配します』とか言われて、 小学校に放り込まれてしまう。どうしよう。 「今日は寒そうだから、これを着た方がいいね」 久美ちゃんがセーターみたいな物を手にしていた。良く見たら、毛糸で出来たパーカー だった。色はオレンジや赤や黄色だけど、大人でもこういうのを着ている人はいる。 これを上から着るのなら、子犬柄も隠れるかも。 「あ、ありがとうございます」 「その子犬柄、気に入った?私はもう着れないから、あげるね」 子犬柄の方にありがとうと言った訳じゃないけど、まあいいや。渡されたパーカーを 上から羽織る。子犬柄はこれでほとんど隠れた。襟は隠れないけど、仕方ない。 袖を引っ張って手を出そうとしたけど、なんだか長い。良く見ると、裾も長い。 もしかしたら、背が伸びた後に買った大きい服なんだろうか。 「あの、これって大きくないですか?」 「そう?」 「袖が長いし」 「ちょっと長いね」 「丈も長いし」 「それはそういう服なんだよ。ちょっと大きいけど、似合ってるよ」 「そ、そうですか…」 給食着でも似たような事を言われたような気がする。 「じゃあ朝ごはん食べよう」 立ち上がった久美ちゃんに手を引っ張られて立ち上がる。 「お姉ちゃん、おはよう」 「おはよう」 1階に降りて、久美ちゃんの後ろについて食卓がある部屋に入ると、久美ちゃんの お姉さんが制服姿で朝食を食べていた。 「あ、あの、おはようございます…」 「おはよう。また可愛い服を着せられたのね」 「は、はい…」 制服姿の女子高生の前で、小学生のお下がりの子供っぽい服を着ているなんて、 年下の高校生にますます子供に見られているように思えて、恥ずかしくてドキドキ してしまう。 でも、朝起きたら制服姿のお姉さんが朝食を食べていた、というのは初めての経験だ。 町で見かけるだけの高校生のお姉さんが、朝起きたら突然自分の家にいるような。 いや、突然お姉さんが出来たような、そんな感じ。ちょっと新鮮でちょっと嬉しくて ドキドキしてしまう。でも僕よりも年下だから、本当は妹か。僕が子供っぽい服を 着ているせいで、自分でも訳が分からなくなる。年下の女子高校生をお姉さんだと 思ってしまったなんて、今度はみじめになってドキドキする。 そのお姉さんと、僕を妹扱いする久美ちゃんと、3人で同じ食卓を囲む。 「二人とも、おはよう。はい、朝ごはんですよ」 「いただきまーす」 「い、いただきます…」 なんだか姉妹3人で一緒に朝ごはんを食べてるような気持ちになる。僕が一番末っ子。 ほんとうはこの中で一番年上の男子大学生のはずなのに、自分が末っ子の妹のような 気分になってしまう。二人がちらちらと僕の方を見ている。 「あれ?何もかけないの?」 久美ちゃんがそう言って、僕の卵焼きに醤油をかけ始めた。 「あの、そんなにたくさんかけないでください…」 「そんなにかけたら、お子様には辛いわよ」 この二人が僕のお姉さんになったような、僕がこの二人の妹になったような。 久美ちゃんのお母さんも嬉しそうに見てるし。恥ずかしいけど、なぜだかちょっと 嬉しい気持ち。僕はこのまま、久美ちゃんと一緒に小学生に通わなきゃいけない のかな。だってお姉ちゃんが高校生なのに、僕が大学に通うなんて。僕はもっと 子供っぽく小学生らしくしなきゃいけないのかな。 「そういえば、あなた」 「はい」 久美ちゃんのお姉さんが僕のお姉さんになって話しかけてくれた、そんな気持ちに なりながら返事をした。 「24歳の男子大学生だってお母さんに聞いたけど、本当?」 自分がこの人の妹になったような気持ちになりかけていた時にそんな事を言われて、 ドキっとする。 「え、あの、その」 「そうそう、お姉ちゃん。夏休みに児童公園で間違われて誘拐されちゃった、あの子」 「ああ、テレビでお巡りさんと一緒に写ってたあの子ね」 「そうそう」 「へえ、24歳の男子大学生なんだー」 自分は小学生の妹なんだ、という気分に今まで浸っていたから、いまさら 24歳の男子大学生だと言われても、小学生の妹になった気分から抜け出せない。 24歳男子大学生のままで小学生の妹にさせられたような、妙な気分。 24歳の男子大学生の女子小学生なんだ、僕は。 でもいつ知ったんだろう?今朝知ったばかりなら、僕が今まで女子小学生の振りを していた事になるから、怒ってるかも。 「あ、あの、それっていつ聞いたんですか?」 「昨日、お母さんに台所で聞いたわよ。すぐ後にネグリジェを着てるのを見たけど」 あの時にもう知ってたんだ。それで怒ってないみたいだから、ちょっとほっとした。 でも、昨日の夜に僕がネグリジェを着たり、今もこんな服を着ているのを見て、 どう思っていたんだろう。どうしてすぐに何か言ってくれなかったんだろう。 小学生の妹みたいな気分のままで一晩過ごして、一緒に朝食を食べて、僕が本当に 妹になっちゃった気持ちの時に言うなんて。みんな、僕が24歳の男子大学生だと 分かった上で、僕を小学校に通わせようとしているんじゃないか、そんな気持ちに なってしまう。 「これじゃ20歳くらいの女性に誘拐されちゃうよね。山田町で一人住まいなの?」 「あの…そうです…」 「停電がなくても危ないんじゃない?」 「そんな事はないです……と思います」 「でも実際に誘拐されてるんだし」 「そ、そうですね…」 「やっぱり大人や、高校生中学生のお姉さんと一緒にいなきゃ。小学生だけでも数人 一緒にいれば安心だよ」 結局、幼く見えて危なっかしいから小学校に通わせたいという、小学校の先生と 同じ気持ちなのか。それどころか、危なっかしいから僕を二人の妹にしちゃおう、 そう思っているようにも見える。僕がお子様だから、背丈だけでなく振る舞いも きっと子供っぽいから、みんなそう思ってるんだ。だったらあまり文句はいえない。 お姉さんが朝食を食べ終わった後、少しして僕たちも食べ終えた。 「お姉ちゃん、終わった?」 久美ちゃんが、洗面所のある方向に大きな声で話しかけた。 「あと3分!」 「じゃあ後3分待とう、ね」 「はい…」 久美ちゃんのお姉さんぶった言葉が、ちょっと胸に刺さる。僕はこの家に初めて来た んだから、いろいろ気を使ってくれてるだけ。そう考えてみても、やっぱり年下扱い されてるようで、久美ちゃんの方がお姉さんに見えて、自分が余計に幼い子に 思えてしまって、悲しくなる。 そんな気持ちでちびちびお茶を飲んでいたら、久美ちゃんのお姉さんが歯磨きを 終わったようだ。 「さ、行こう」 久美ちゃんに手を引っ張られる。歯磨きもお姉ちゃんに連れていってもらう、 そのくらい幼い子になっちゃった気分。小学5年生どころか、低学年、あるいは 幼稚園児みたいな扱いだ。 「はい、歯ブラシ」 洗面台で久美ちゃんに歯ブラシを渡してもらう。昨日使った子供向けの歯ブラシ。 それで久美ちゃんと一緒に歯を磨く。高校生のお姉さんは一人で歯を磨いたのに、 僕は小学6年生に連れられて歯磨き。そして鏡に写っている僕は、久美ちゃんよりも ずっと子供っぽい服装だ。 「ひゃんとひはふほお」 久美ちゃんは歯ブラシを口に入れたままそんな事を言う。そして十分に磨いたと 思った頃。 「ほら、これ」 久美ちゃんが僕に水の入ったコップを差し出してきた。 「…ありがとうございます」 こんなものまで小学生に取ってもらうなんて。そう思いながら水を口に入れて ゆすいだ。 「ところで、この歯ブラシは持って帰る?おうちで使う?」 「い、いえ…」 子供用の歯ブラシなんてもう使わないよ、と思ってそう言った。 「じゃあ、今度来た時のために、ここに置いておくね」 久美ちゃんは、他の歯ブラシが入れられたコップの中に、僕がもらった歯ブラシを 入れた。僕はまたここに泊まりにくるのかな。いや、僕はもうこの家の子になって、 このままずっと、この子供向けの歯ブラシを使い続けるような気がしてきた。 僕はこの家の子になって、久美ちゃんの妹になって、これからずっと小学校に 通う事になる、そんな気がしてきた。 「ほら、顔を洗って」 久美ちゃんはもうタオルを手にしている。待たせるわけにはいかないから、 急いで顔を洗った。 「そんな慌てずに、しっかりと洗いなさい」 嬉しそうな声が聞こえたので、もう1回洗う。 「じゃあ拭いてあげるから、ね」 こんな事までしてもらうなんて、僕は一体何歳なんだろう。久美ちゃんに片手で 顔を押さえられながら顔を拭いてもらった。他の人から顔を触られるのが、 ちょっと変な感触。 久美ちゃんが顔を洗い終わるのを待って、久美ちゃんの部屋に戻った。 「さ、そこに座って」 部屋に戻ってすぐにそんな事を言われた。 「まだ何かあるんでしょうか…」 「髪をとかすに決まってるじゃない」 ああ、女の子ならそういうのもあるかな。でもそんなにかしこまってやる事なのか 良く分からないまま、言われた場所に座る。久美ちゃんは鼻歌を歌いながら 僕の後ろに座り、僕の頭にブラシを当てた。結構力が入って、ちょっと痛く感じた けど、それが気持ちよく感じなくもない。久美ちゃんは楽しそうにやっている。 こうして後ろから頭を触られるなんて、知らない人から触られたら気持ち悪いけど、 久美ちゃんなら気持ちいいかな。 とはいえ、女の子に比べたらずっと短い髪だからすぐに終わった。 「じゃあ私も髪をとかなきゃ」 久美ちゃんが自分でブラシを頭に当てようとしていた。昨日からずっと、小さな子の ように久美ちゃんになんでもやってもらってる。このままじゃ、僕は本当に何も 出来ない小さな子になっちゃう、そんな気がした。 「あ、あの、僕がやりましょうか?」 なんだか分からないけど、とにかくそう言ってみた。 「え?透くんがやってくれるの?」 なんとか口をはさめた。言いたい事を言ってしまわないと。 「あの、なんでもやってもらって、僕が何もしないのは申し訳ないかなって」 「そんな事ないのにー。でも、それなら、私の髪をとかしてもらおうかな」 「は、はい」 なんだかお姉さんにお手伝いをお願いされて喜んでる小さな子みたいな気分に なった。やっぱり小さな子だけど、何もしない子よりはいい、と思った。 「はい、ブラシ」 ブラシを受け取って、さっき久美ちゃんがやったようにブラシを当てる。 久美ちゃんの髪の毛を触っている。友達の女子の髪を、あるいはお姉さんの頭を 触っているようで、ちょっと嬉しい。でも24歳の男子大学生が女子小学生の頭を 触っていると思うと、なんだか悪い事のような気もしてくる。僕はどっちだろう? でも久美ちゃんも僕に頼んだんだし、僕は小学生のつもりで久美ちゃんの髪を とかせばいいんだ。 そう思いながら3回目のブラシを入れたら、ちょっと引っかかった。 「いたっ」 「ご、ごめんなさい」 なにかすごく悪い事をしちゃったような気持ちになり、すぐに謝った。 「最初から頭のてっぺんをブラシするんじゃなくて、下の方からブラシして、 段々と上の方からブラシするようにして。ね。引っかかった所はゆっくりと」 「はい…」 久美ちゃんの『いたっ』の声でちょっと気持ちが小さくなって、怯えながら、 久美ちゃんに教えられた通りに下からちょっとずつブラシを入れた。 「こんな感じでいいですか?」 「うん、もうちょっと強くやってくれてもいいよ。急に引っかからなければ」 急に引っかからなければ、というのが難しいんだけど、ちょっとだけ強くしてみる。 それから十数回やった後。 「そのくらいでいいよ。ありがとう」 ようやく終わった。久美ちゃんの髪の毛を触らせてもらって、仲良くなれたような 気がしたけど、でも僕はへたくそで久美ちゃんに痛い思いをさせちゃった、 やっぱりお子様なんだ、そんな気持ちにもなった。 「さて」 久美ちゃんが僕の方を向いた。 「それじゃあ一緒に小学校に行こうか」 そう言われて一瞬、『僕はやっぱり小学校に行かなきゃいけないんだ』と思って しまった。 「え、あの、僕は大学に行かなきゃいけなくて」 「ああ、そうだったね」 一応それは覚えててくれたんだ。 「今日使う教科書とか、取りに行かないといけないし…」 「そうだね。一緒に取りに行こうか」 一緒に?一瞬考え込んだけど、そうする必要がある理由は思いつかなかった。 「あ、あの、川の向こうで遠いですし、僕一人でも…」 「危ないよー。だから私も一緒に行くよ」 危ない、と言われてしまうと断れない。立ち上がった久美ちゃんに、また手を 引かれて立ち上がり、玄関に向かった。 「お母さーん、私たち、学校に行くからー」 「あら、もう行くの?」 久美ちゃんのお母さんが玄関まで来て、僕に向かって話し始めた。 「昨日今日はありがとうね。久美ったら、今まではお姉ちゃんに甘えっぱなし だったのに、妹みたいな子が来たら、急にお姉さんぶっちゃって」 「そんな事ないよー」 久美ちゃんがほっぺをふくらませていた。 「やっぱり妹みたいな子がいたら成長するのね。あなたのおかげで久美がすっかり 大人になったわ。ありがとう。今夜まだ停電が続いてたら、うちに来てね」 「は、はい…」 さすがに停電がそんなに長く続くことはないだろう、と思いつつ、一応返事をした。 「じゃあいってらっしゃい」 「いってきまーす」 「お…あ…い…いってきます…」 『お邪魔しました』と『ありがとうございました』とどっちを言おうとか迷ったら、 久美ちゃんにつられて『いってきます』と言ってしまった。なんだか今夜もここに 帰ってくるような気がしてしまった。 玄関から外に出ると、裕子ちゃんが待っていた。 「呼びに行こうかと思ってたんだけど、ちょうど出てきたね」 「うん、今日はこの子がいたから、ちょっと早めに出てきた」 「透くん、可愛い服を着てるね。久美ちゃんのお下がり?」 「あ、あの…はい」 「私の背がすぐに伸びて、すぐに着れなくなった服なの」 この服で、小学生に混じって道を歩くなんて恥ずかしすぎ。でも誰も変と思わない んだろうな。 「じゃあ小学校に行こうか」 「いや、あの、僕は…」 「ああ、そうそう、今日使う教科書を取りに行かないといけないんだって」 「ああ、そうだね。家に帰ってないんだから、今日の教科書もないんだ。 じゃあ私たちも一緒について行ってあげよう」