瞳、小学6年生

◎プロローグ

 新幹線乗るの何年ぶりかなぁ。九州に行っ た時だね、2年前か。あの時は新幹線に乗る だけで楽しかったな。行き先はハウステンボ スや長崎。家族3人で。もう帰りたいとか、 まだ帰りたくないってだだこねたっけ。
 今度は、知らない人の家に、一人ぼっちで、 片道切符。帰る所はないの。だってパパもマ マも、もういないんだもん…。

 私は、浜田瞳。十四歳、もうすぐ中三。岡 山の上御津っていう、ちょっと田舎に住んで たの。上御津中学に通ってたの、今までは。

 パパとママが交通事故で死んじゃったの。 悲しかった。もちろん、パパとママがいなく なった事が。そして、友達とも離れてしまう ことが。私の親戚は、東京にいる、ママのお 姉さんだけ。おばさんの家に引き取られるこ とになったの。春休み中だったからあんまり 時間がなくて、ほとんどお別れのあいさつも 出来なかった。このままみんなとはさよなら、 かな。

 おばの河葉洋子さんとは、二回ほど会った ことがある。優しい人よ。でも、伯父の健一 さんはお葬式でちょっと会っただけ。一晩中 泣いてたから、よく覚えてない。他の家族は 全然知らない。ママから結構お金持ちだって 聞いたけど、どんな人達だろう。ちょっと不 安。学校も転校だね。どんな所だろう。

 新幹線が動きだした。見送りに来てくれた 友達三人が離れていく。十四年間過ごした岡 山が、離れていく…。



◎一日目

 東京駅にはおばさんとおじさんが迎えに来 てくれてた。
「おじさん、よろしくお願いします」
「列車の旅、お疲れさま。十二時半か。ご飯 食べてないんだろ?食べてから家に行こう。」

 ご飯食べながら、おじさんとちょっぴり話 した。東京のこととか、テレビやマンガのこ ととか。パパやママのことや、岡山の友達の ことは聞かれなかった。気を使ってくれてる のかな?そんなにたくさんは話さなかったけ ど、伯父さんが優しそうな人だと分かって、 ちょっぴりほっとした。

「えっとぉ、他に家族はどんな方がおられる んですか?」
「父と母がいる。あと、おじいちゃんも、一 緒に暮らしてはいないけど、近い所にいるよ。 会社でしょっちゅう顔を合わせてるけど。」
「おじさんのおじいちゃんが、働いてるんで すか?」
「会長で、そんなに忙しい仕事をしてるわけ じゃないけど、会議にはいつも出ててるよ」
「じゃあ、おじさんのお父さんというのは…」
「重役やってるよ」
「それじゃ伯父さんは…」
「まだまだ課長、見習いだよ。それに部長は、 おじやいとこがいるから詰まってるし」
 ちょ、ちょっと待ってよ、会長に重役ぅ〜、 課長が見習いぃ〜?でもでも、岡山の友達に も、お父さんが会社の社長って人いたっけ。 社員二十人の小さな会社だった。あんなもの かもしれないし…。
「あと、娘の直美。最近クラブ活動に熱中し て、学校から帰って来るのが遅いんだ。そう だ、それで思い出した。明日学校に行こう。 始業式から通えるように色々準備しなくちゃ ね。」

 伯父さんが運転する車に乗って、家に向か う途中。
「ほら、あれがうちの会社のビル、河葉本社 ビルだよ」
 えぇ〜〜、おっきいなぁ、いったい何階建 てなの?
「おじいちゃんと父さんはいつも十八階にい る。僕は十五階。」
「あの建物全部ですか?」
「まさか。下半分は貸してるんだよ。」
 貸してる…。なんかとんでもない所に来た ような気が…。

「やあ、帰ってきたか。」
「おかえりなさい、健二」
 家に着いて車から降りたら、どこからか元 気な声が聞こえてきた。
「お父さん、帰ってたんですか。」
「今日は暇だったし、瞳ちゃんが来るという んでね」
 重役やってる、おじさんのお父さんと、お じさんのお母さんか。うっ、なんて呼べばい いんだろ。「おじさんのお父さん」では長過 ぎるし。
「瞳ちゃん、初めまして」
「初めまして。よろしくお願いします」
「そんなかしこまらなくてもいいよ。今日か ら一緒に暮らすんだから。直美と一緒におじ いちゃんおばあちゃんと呼んでくれればいい よ。代わり、瞳って呼ばせてもらうよ」
 おじいちゃんおばあちゃんか…。パパの方 もママの方も、私が物心つく前に死んじゃっ たから、そんな風に呼べる人いなかったんだ。
「それじゃ、おじいちゃん、おばあちゃん、 よろしくお願いします」
 きゃは、ちょっぴり嬉しい。

 それにしても、大きい家だなぁ。岡山にも このくらいの家はあったけど、それはお店と か工場とかやってる家だし。ここ、そんなに たくさん人が住んでるわけでもじゃないでし ょ?。それに東京って、とっても土地高いん でしょうぉ?
「居間はここ、台所がここ。お風呂がこっち で、トイレがここ。で、この階段を登って、 二階のトイレのここ。直美の部屋がここ。さ あ、ここが瞳ちゃんの部屋よ。」
 ドアを開ける。わぁ、広くてきれい…。
「物置き代わりになってた部屋を急いで掃除 したから、ちょっと汚いけど…」
「そんなこと全然ないです」
「まだ荷物は全部届いてないけど。洋服がな いか…。明日は直美のを借りればいいわね。 他は…取り合えず、これは机の上に置いてお くわね。」

 机の上に置いて、伯母さんは部屋から出て 行った。パパとママの位牌。そのうちにお墓 か何かにいれなきゃいけないのかなぁ。ずっ とここに置いておきたいなぁ。
 パパ、ママ、知らない人の家に住むことに なったけど、優しそうな人達ばかりで、良か った。パパとママのおじいちゃんおばあちゃ んは会ったことないけど、きっとあんな人達 だったんだよね。直美ちゃんは、年上かな年 下かな?お姉さんか妹ができるんだ。うれし いな。きっとみんなとうまくやっていけるよ。 パパ、ママ、見守っててね…。

「あら、瞳ちゃん、眠っちゃったの?」
「通夜も葬式もあまり眠ってないんだろ?そ れに荷作りに、新幹線。明日は朝まで起きな いよ、きっと。」
「でも、明日は学校に行くんでしょ?」
「少し早めに起こそうか」



◎二日目

 うーん、寝てしまってたのか。今何時?分 からないよ。ちゅんちゅんちゅん?朝か。昨 日は、東京について、昼ご飯食べて、おじさ んちに着いて、…私何時に寝たんだ?
「瞳ちゃん、起きた?」
「あ、はい。」
「よく寝たわね。ずいぶん疲れてたのね。」
「あのぉ、私、何時間寝たんですか?」
「十五時間ほどかしら」
 そんなに…。初日から随分寝ちゃったんだ。

 一階の居間に降りる。
「おはようございます。おじいちゃん」
「瞳、おはよう。ようやく起きたのか。」
 なんだかパパに呼ばれてるみたい。結構落 ちつく。
「今日は学校に行くんだってな。あそこの校 長は同級生だったんだ。そうだ、一緒に行っ て会ってこようかな」
「お父さん、なに言ってるんです」
「お前は今が一番忙しいんだろ、俺が代わり にいってやる」
 そうか、今日は転校先に行くのか。ちょっ ぴりわくわくしてきたぞ。東京の中学校って どんな所かな?どんな制服かな?岡山じゃセ ーラー服だったから、他のがいいな。でも、 可愛かったら、セーラー服でもいいや。

 朝ご飯を食べ終わったら、伯母さんが私を 呼んだ。
「直美の服を借りまょう」
 そういって直美さんの部屋に入っていった。
「直美さんは、もう出掛けたんですか?」
「そうなのよ。瞳ちゃんにあいさつくらいし ときなさい、って言ったのに。ほんとにクラ ブに熱中してるんだから。これはちょっと大 きいかな?」
「大き過ぎます」
「瞳ちゃんて小さいのねぇ。直美が大き過ぎ るのかな?これはちょっと子供っぽいかな?」
「…ちょっと大きいかなぁ」
「じゃあ、これならピッタリかな?」
「はい。これちょうどいいです」
「ちょっと子供ぽくない?」
「そうですか?」
「でも、こんなのしかないし…仕方ないか」
 子供ぽいなかなぁ。ブレザーにプリーツス カートだよ。
「直美が小学五年の時に着てた服なのよ」
 が〜ん。そう言われれば、タンスの手前に ある服はどれも大きい…。すんごく背が高い んだぁ。それに、けっこう細い。きっとすご くかっこいいお姉さんなんだろうなあ。今夜 会えるかな、早く会いたいな。

 おばさんが運転する車に乗って学校に向か う。おじいちゃんもついてきた。あっ、中学 校だ。もう着いたみたい。近いんだ………… あれ?通り過ぎたぞ。違うのかな?また中学 校だ…また通過。また中学校…通過。
「どうした、瞳」
「あのぉ、学校って、どこにあるんです?」
「ああ、岡山にいる時は公立に通ってたのか。 まあ田舎じゃ公立しかないからな。でも、う ちの一族では、男は西訓、女は白雪と決まっ ておるからな」
「白雪…しらゆきぃ〜?」
 岡山の田舎者だって知ってるわよ、その名 前。すごいお嬢様学校らしいじゃない。私に そんな所に行けと…。だいたい私は、上御津 中にいる時は平均よりちょっとだけ上、くら いだったんだから。そんな私が白雪なんかに 入れるわけないでしょう…と言おうと思った ら、着いちゃったみたい。

 おじいちゃんは校長先生に会いにいったの か、いなくなっちゃった。伯母さんは別の部 屋で待ってるとのこと。
 先生に案内されて、教室に入る。入口には 「編入試験会場」。なんだ試験するのか。じ ゃあ落ちちゃうな。
 教室には二人入っていた。小学三年と高校 生、ってとこかな?一緒に試験をするのが不 思議な取り合わせ。そういえば校門には小学 校と中学校と高校と大学の名前が並んでたっ け。そういう学校なのね。
 試験ということで、ちょっと緊張。高校受 験もまだなのに、試験だなんて。でも落ちて 当然の試験なんだから、気にする必要はない よね。

 問題用紙が配られる。まずは数学らしい。 スタート。うっ、これは結構やさしい。これ もだ。あれ?白雪って、実はけっこう簡単に 入れるのかもしない。始め三分の一はすらす ら出来る。ちょっと難しくなってきたな。で も出来ないことはない。あれ、これは難しい。 飛ばそう。次は出来そう。その次は…分から ない。後のは全部難しそうじゃない!さっき 飛ばした所を頑張ってやろう………。

 先生が回答用紙をもっていく。あの程度出 来ればいいのかなぁ。分かんないや。とりあ えず、頑張るだけ頑張ろう。
 次は国語、簡単…だと思う。あってる自信 は全然ないけど。一応私は国語が得意科目な んだから、答を書いておけばいいや。

 次は英語。あれ?私の隣に座ってる、小学 三年くらいの子も受けている。なんか知らな いけど、すごいなぁ。小学校のうちから英語 やってるんだ。私の方が出来なかったりした ら、ちょっとみじめだなぁ。がんばんなきゃ。

 三教科でおしまい。学校でやってる試験と はなんとなく違ってたけど、そんな難しいと は思わなかったなぁ。どのくらい出来れば合 格なんだろう。
 ちょっと外に出てお昼ご飯。午後には面接 があるみたい。私、面接なんか全然分かんな いよぉ〜。
「瞳、出来はどうだった?」
「う〜ん、前半分は簡単だったけど、後ろ半 分は難しかった」
「編入試験だからそうだろうな。半分とちょ っと出来れば十分だよ」
 そんなもんなの?白雪って簡単じゃない。

 そして面接。一人ずつ、両親も一緒に校長 室へ入っていく。まずは小学三年生らしき子 から。十分ほどで出てきた。短いんだ。次は 私。だめでもともと、だけど、やっぱりどき どきする。
 おじいちゃんとおばさんも一緒に入ってい く。おじいちゃんは顔見知りだからか、すぐ に座っちゃったけど、伯母さんは深々とおじ ぎをしてる。私も一緒におじぎする。
「分かってると思いますが、とてもうちの中 三では無理です」
 やっぱり駄目か。でも、おじいちゃんもお ばさんも冷静な顔。
「でも、思ってた以上に基礎学力はついてま す。公立中には、取り合えず点数が取れるけ ど、実は理解してない子が多いもんですが。 この子は簡単な所は確実に分かってます。こ れで公立中で真ん中付近というのが不思議で はあるんですが、試験で点取るよりも分から ない所をきちんと分かる努力をしてたんでし ょう。あと、のんびり屋さんなのかな?」
 これって、ほめられてるのかなぁ。
「で、どうなの」ふんふん、と聞いてたおじ いちゃんが、身を乗り出して聞いた。
「小学6年からやり直せば、東大だって行け ますよ」
「別に東大でなくてもいいが…」
 私が東大?すごいじゃない……じゃなくっ てぇ〜。
「小学三年とか言われるんじゃないかとびく びくしてたよ。」
「この子なら、頑張れば中一からでも大丈夫 かもしれませんが、小六からの方がゆとりが あっていいでしょう」
「ちょ、ちょっと、私が、小六ですかぁ〜」
あら聞いてなかったの?という顔の校長先生。
「このままどこかの中学校の三年に入っても、 大学なんて無理だよ。それが、小学六年の所 からきちんと勉強すれば、ちゃんと出来るよ うになる。誰でもできるようになるわけじゃ ないんだ、もったいないと思わないかい?」
「そんなこと言われても…」
「小六でいいよ。瞳も急に環境が変わったん だ、ゆとりをもたせてあげなきゃ。それに勉 強以外のことも色々覚えなきゃいけないしな。 中学校からじゃ遅過ぎることもある…やっぱ り五年からがいいかな」
 おじいちゃん何いってるのよ〜。
「出来るだけいろんな体験をさせれば、一年 間で大丈夫ですよ。それじゃ小学六年という ことでいいですね」
「ふむ、そういうことでお願いするよ」
 なんだか知らないうちに私、小学六年生に させられちゃったじゃない!

 面接の後、少し遠回りして川島デパートに 寄り、五階の制服売り場へ。おばさんが「白 雪小学校の制服、この子にね」というと、店 員さんが私の体を測る。上御津中に入学する 時も同じことやったけど、いまさら小学校の 制服だなんて…。
「始業式に間に合うかしら、八日なんでけど」
「八日ですか…、新学期で配送が大変立て込 んでいまして、八日か九日になってしまいま すが…」
「困ったわねぇ、編入だからすぐ必要なのに」
「一日か二日なんだろ?しばらくは直美のお 下がりでいいじゃないか」とおじいちゃん。
「それもそうね。それじゃ、お願いしますわ」
「こちらにお届け先をお願いします」

「おかえりなさ〜い」
 家に着いて車から降りると、今日も元気な 声が聞こえた。制服姿の、背が高くてすっご くきれいな人が立ってる。
「直美じゃないか。今日は早かったな」
「木曜日はいつも早いじゃない」
「そうだ、瞳に挨拶してなかったな、直美」
 この人が直美さんなんだ…すっごくかっこ いい!こんなかっこいいお姉さんができるな んて、うれしいな。胸には「2−3」、高校 2年、ということは二つ年上ね。
「直美さん、初めまして。」
「瞳ちゃんかぁ、可愛いね。なんだか妹が出 来たみたい」
「直美さんのお洋服お借りしました。」
「あ、小さくなった服でしょ、全部あげるよ」
「そうそう、直美、瞳ちゃんに小学校の制服 をあげてね。注文したけど、始業式に間に合 わないみたいなの」
「は〜い。ね、瞳ちゃん、小学校の制服のリ ボンって結び方難しいんだよ。教えてあげる から、おいで」
「あっ、はい」直美ちゃんに引っ張られて二 階に上がった。

「ほら、これが小学校の制服よ。早く着てご らんよ」
「え〜、恥ずかしいよぉ」
「小学生のくせしてなにが恥ずかしいだ、脱 がしてやる」
 あっという間に脱がされちゃった。
 小学校の制服かぁ。着るの恥ずかしいなぁ。 でも、かっこいい直美さんのお下がりだから…、 ええぃ着ちゃえ。
「どぉですぅ?似合わないでしょ?」
「可愛いよぉ。ほら、こっちおいで。」
 直美さんにリボンの結び方を教えてもらう。 でも難しい…こんなの小学一年生にできるのぉ?
「直美さん」
「直美ちゃんでいいよぉ」
「直美ちゃん…ですか?なんか呼びにくいです。 直美さんの方がいいです。」
「そおぉ?まあどっちでもいいか」
 できれば、直美お姉ちゃん…がいいな、と思 ったけど、ちょっと恥ずかしい。今すぐでなく てもいいや。
「私、中学三年なのに、小学六年に入れ、って 言われたんですよぉ〜。」
「あら、瞳ちゃん本当に小学生だと思ってた」
「ひっどぉ〜い。別にそんな背低くないでしょ う。胸だって普通よりちょっと小さいくらいだ し」
「だって可愛いんだもん、この制服も似合うし。 いつか一緒に登校しよう。友達に自慢するから」
「お世辞でもうれしいですぅ」
 ふと前を見ると、鏡に私と直美さんが写って る。直美さんが後ろから腕をまわして、抱きつ くようにリボンを結んでくれる。…きれい。わ たしって美人でもなんでもないけど、直美さん と一緒にこうしてると、けっこうかわいいなぁ。 いつも直美さんとこうして一緒にいたいなぁ。



◎始業式

 今日は始業式。ちょっと緊張する。中三の 私が小学六年のクラスに入ってしまうんだか ら…。いつまでやっていけるかなぁ。小学校 の制服を着る…やっぱり変だよね、中学生が 小学生の制服着るなんて。リボンを結ぶ…あ れっ、どんなだったかな。分かんなくなっち ゃった。直美さんに教えてもらわなきゃ。

「あれ、直美さんはもう出かけちゃったんで すか?」
「今日もクラブ活動で朝早かったのよ」
「リボン結べないのに…」
 私がそういうと、おばさんが近づいてきて、 リボンを結んでくれた。
「おばさんも結べるんですか?」
「直美が小学校に入学してからしばらくは私 が結んでたのよ。一年生の間だけだったけど、 ちゃんと覚えてるのよ」
 つまり大人に結んでもらうのは小学一年… 今おばさんに結んでもらった私、なんだか自 分がすっごく子供に思えてきて、ちょっと恥 ずかしい。早く結び方覚えなきゃ。

 おばさんが運転する車に乗って学校に行く。 こないだ来た時にはあんまり人がいなかった けど、今日は人がいっぱい。小学生から大学 生まで入り乱れて歩いてる。でも、男の子が いない…女子校だから当たり前か。でも私、 小学校も中学校も公立で、別に仲のいい男の 子がいたわけじゃないけど、一応目の前のど こかには男の子がいたから、男の子が全然い ないのもちょっと不思議な感じ。
 あの人達は中学生かな?向こうが中学校の 校舎みたいだね。私、あの人達と同じ歳か、 私の方が年上なんだよね。本当はあっちの制 服着てあっちの校舎に入っていくはずなのに。 なんで小学生と同じ制服着て、小学生と同じ 方向に歩いてるんだろう…。
 みんなは生徒用の入口に入っていくけど、 私はおばさんと職員室の方に向かう。

 職員室の入口でおばさんが名前をいうと、 しばらくして女の人が奥から出てきた。
「あなたが浜田瞳ちゃんですね。私が6年2 組の担任の白石洋子です」
「よろしくお願いします」
「急に東京に来て戸惑うことばかりだと思う けど、分からないことがあったら、遠慮せず に先生や友達に聞いてね」
 白石先生、まだ若くって、きれいで、優し そうな感じ…、ちょっぴり安心。
「それと、クラスのみんなはあなたより三歳 年下だけど、全然気にしなくていいからね。 あなたならすぐにクラスにとけこめるわ。」
 気にするなって言われても無理だよ〜。
「あなたも今日から十一歳ですからね」
 そんなこと言われても…。

 職員会議の間、職員室で待つ。目の前の鏡 に写る私を見て考える。小六の中に中三が入 れば絶対浮くよ。クラスに溶け込めずに、一 人寂しく机に座る日々が続くんだろうなぁ。 そうなったら登校拒否をしよう。そうすれば 公立かどこかの中三に戻してくれるはず。

 職員会議も終わって、ついに始業時間。白 石先生の後についてクラスに向かう。そうい えば私、転校は初めてなんだ。あいさつしな きゃいけないんだ。別に長い自己紹介はしな くてもいいと思うけど。
 6年2組の入口の戸の前に着いた。ざわめ きが聞こえる。私の同級生かぁ、でも三つも 年下、やっぱり小学生なんだよねぇ。
「しばらくここで待っててね」
 先生だけ中に入っていった。
「ごきげんようぅ」
「ごきげんよう。この6年2組は5年からそ のまま持ち上がりで、クラスメートも担任も 変わりませんが、小学校の最上級生です。気 持ちを入れ換えましょう」
 そろそろかな。やっぱりドキドキする。
「さて、今日からこのクラスに新しい友達が 増えます」
 教室の中が一気に騒がしくなる。私のため にこんなに騒いでくれるのは、やっぱりうれ しい。
「岡山から来た浜田瞳さんです。ご両親が交 通事故で亡くなられて、ご親戚に引き取られ ることになり、この学校に通うことになりま した。急に東京に来て色々分からないことば かりだと思うので、みんな親切に教えてあげ てください。それじゃ浜田さん、入ってらっ しゃい。」
 よしっ、入れ。前に進む。教壇に上がって、 この辺だ。前を向いて、あいさつっ。
「浜田瞳です。よろしくお願いします」
「はい、それじゃ、この席に座ってね」
 ふぅ〜、疲れた。たったこれだけのあいさ つなのに。どんな子がいるのか全然見なかっ た。ちょこっと隣を見る。隣も私の方を横目 で見てる。うーん、やっぱり小学生だ。こん なのと一緒に並ぶと浮いて見えるだろうなぁ。

「それでは、今日の予定。まず始業式。それ が終わったら十時までお掃除です。掃除の割 当はこの紙に書いてます。掃除が終わったら 教室に入ってください。お話や配る物があり ます。十一時から入学式です。入学式が終わ ったら各自帰るように。それでは並んで講堂 に入ってください。」

 みんな廊下に出て並び始める。背の低い順 みたい。
「瞳ちゃんはどの辺かな?」
 小学生にちゃん付けされるなんてぇ〜。
「もうちょっと前だね、孝子ちゃんより…低 いかな。敏子ちゃんと同じくらい…こんなと ころかな?」
 後ろから数えた方が早いんでしょ、どうせ。 えーとっ、一人二人三人四人五六七八九十… 十一番目?
「6年2組って何人いるんですか?」
「三十五…瞳ちゃん入れて三十六人だね」
三十六人中高い方から十一番目…一応真ん中 よりは高いけど、私より背の高い小学生がこ んなにいるなんて…。でもでも、顔つきとか 体つきとか、やっぱり違うわよね。背が低い 大人っているけど、見れば分かるもん。
 列が前に進みだした。
「ご両親が亡くなられて大変ね」
「でも、白雪に六年から転入してくるなんて めずらしいわね。他の学年ならともかく」
 そりゃあ、中三から小六に転入するなんて めずらしいわよ。
「ご親戚ってどちら?」
「河葉ですけど…」
「河葉って、四年生の真理さんとこ?」
 そういえばおじいちゃんが、うちの一族は 白雪とどこかに決まってるって言ってたっけ。 河葉家の親戚が他にもいるんだ。
「違います。直美さんと一緒…」
「えぇーっ、河葉直美先輩と一緒に住んでる の、すごぉーい。」
「えー、直美先輩とこなの、うらやましい!」
「本当?いいなぁ」
 わぁ〜、なんでそんなに騒ぐのよ〜。
「みんな静かにしなさい」
 先生が怒っちゃったじゃない。先生の一声 で静かになったけど、まだ少しざわついてる。
「瞳ちゃんいいなぁ、あんなかっこいい先輩 と一緒に住んでるなんて」
「この制服、直美さんのお下がりなんです」
「えーっ、いいないいな」
「直美先輩のお下がり着れるなんて」
 直美さんって、小学生にまで人気があるん だ。そりゃそうかもしれない。そんな人が私 のお姉さんになってくれるんだ。すっごくう れしいな。

 講堂に入る…なに〜この建物!まるでコン サートホールみたいじゃない…って、コンサ ートホールなんてテレビでしか見たことない けど。普通、講堂っていえば体育館のことじ ゃないの?
 でも、こんな広い所で始業式するの?1階 の後ろの方を見ると中学の人が座ってるみた い。2階の方は高校かな?制服じゃない人が 少しいるけど大学生かもしれない。小学一年 と中学一年はまだ入学式の前だからか、その 部分がぽっかり空いてる。
「瞳ちゃん、なにきょろきょろしてるの?」
「小学校から高校まで一緒に始業式するんで すか?すごい。」
「そお?普通そうじゃないの?萌友は幼稚園 も大学も一緒にやっちゃうらしいけど」
「あそこは人数少ないし、講堂も広いからで きるのよ、孝子」
「でも、音響はうちの講堂の方が断然いいわ よね。こないだ萌友でコンサートあったけど、 後ろの方はひどかったわ」
「そんなにひどかったかしら。私も後ろにい たけど、東部ホールよりはいいと思ったわ」
「東部ホールは目茶苦茶よ。あそこ、ザバト ルがコンサート開いたって聞きにいかないわ。 開くわけないけど。」
「由里ちゃん、いつも厳しいわね」
 …全然分かんない。由里ちゃんと孝子ちゃ んは何度もコンサートにいったことがある、 ってことは分かったけど。私は…コンサート なんてテレビでも見たことない。
 六年生の後ろは中三かな?楽しそうだなぁ。 あの人達と同じ歳なんだから、あっちに入り たい。あっちの大人っぽい制服を着たい。な んで小学生に混じって、小学生としゃべって るんだろ。
 始業式は先生のお話だから、退屈。眠って しまいそう。ここの椅子って気持ちいいもの ね…。うとうとしてたら、始業式が終わって しまったみたい。教室に戻っていく。あぁ、 中学生は向こうにいくんだ、ついつい目で追 ってしまうなぁ。向こうの列に行きたいと思 いながら、6年2組の列に並んで進んでいく。

 教室につくと、みんな白いスモックに着替 え始めた。そういえば、朝受け取った物にあ ったっけ。これだ。なんかガキっぽいなぁ。 掃除の時は着なくちゃいけないのかな。仕方 ないか。
「瞳ちゃんも教室の掃除なんだね」
 名簿をのぞいてみる。
「…そうですね」
「瞳ちゃんかわいいから、そのスモック似合 うよね。私なんか絶対変に見えるもん」
「そんな…」と言いかけて、その言葉の主を 見ると、私よりずっと背が高い…太ってはい ないけど、全体的に大きく見える。とても小 学生には見えない。中学生どころか、高校生 にさえ見える。ちらっと鏡を見ると、私の方 が小学生ぽく見える…。
「みんな私を見て、中学生が小学校の制服着 てるみたいっていうんだよ」
 本当の中学生の私の立場はどうなるのよ〜。
「瞳ちゃんって背は高い方だけど、細いしか わいいし、スモックみたいなかわいい服がよ く似合うよね」
 三つも年下の子にかわいい連発されても… 「大人っぽくてうらやましいです」
「やっぱり歳相応よ。私だって本当はまだま だかわいい服着てみたいもん。」
 小学生に説教されたくないわい…って、小 学生に見えないから困るけど。
「だいたい、なんで小学生のうちからハイレ グ水着きなきゃいけないのよ」
「ハイレグ水着…」
「もちろんモデルの仕事で着るのよ。始業式 のときあなたの隣にいた敏子ちゃん、あの人 はちゃんと小学生モデルの仕事が来るのに、 私は高校生モデルと一緒の仕事なのよ、ひど いと思わない?」
 あ〜、頭痛い。でもすごいなぁ。小学生の うちから何度もコンサートいったり、モデル やってたり。私なんて部活でテニスをちょこ っとやってただけ…。

 入学式も結構退屈だったけど、ブラスバン ドは上御津中のとは比べ物にならないくらい うまかった。高校生なのかな?

 帰りもおばさんが運転するの車で。私のひ ざの上には教科書がぎっしり。でも、小学校 の教科書なんだよなぁ、見たくないなぁ。
 途中、駅に寄り道。
「はい、瞳ちゃん。これは明日から使う定期 券ね。東京の電車なんて全然分からないでし ょ?明日は必ず直美と一緒に登校させるから ね」
 定期券…電車で通学するんだ。高校に進学 したら電車通学になると思ってたけど、もう 明日から電車通学なんだ。大変だ〜。
「そうだ、おばさん。明日からカバンがいる んですけど」
「あら、そうね。帰ったら直美のランドセル 探さなきゃいけないわね」
 えっ、ランドセルなの?そりゃ小学生だか ら当然かもしれないけど、私本当は中三なの よ、その私がランドセルなんて〜。



◎体力測定

 朝ご飯も食べて、制服に着替える。そして ランドセル。女の子なのに黒なんだ。でも、 ランドセルしょって外に出るなんて恥ずかし いよぉ〜。
 やっぱりリボンが結べない。直美さんにお 願いしよう。
「直美さん、ごめんなさい、リボン結べない の」
 しょうがないなぁ、って顔で結んでくれる。 小学生の制服着て、ランドセルしょって、リ ボンも結んでもらって、私って本当に小さな 子どもみたい。自分が本当に中学生なのか、 疑わしくなってきちゃう。
「さっ、行こう」
 直美さんに手を引っ張られて外に出る。恥 ずかしいようぉ。絶対変に見えるんだ。ほら、 あそこのおじさん、こっちを見てる。あっち のお姉さんも見てる。中学生がランドセルだ なんて、絶対変だよ。駅員さんに定期券を見 せる。中学生なのに子供料金の定期券、怒ら れないかな。
「あっ、瞳ちゃんだ、ごきげんよう」
あれは…幸子ちゃんだ。
「直美先輩ごきげんよう」
「幸子ちゃんもこの辺りに住んでるの?」
「私はここで乗り換えなの」
「瞳ちゃん、まだ電車のこと全然分からない みたいだから、見かけたらお願いね」
「はいっ、直美先輩。あっそうだ、白井大ホ ールのコンサートは来られますか?」
「行くわよ。瞳ちゃんも行こうよ。あっ、チ ケットはあるかな?」
「孝子ちゃんが行けなくなったって言ってた から、ゆずってもらえると思います」
 コンサートなんて初めて。どんなのかな。 なんだかわくわくするなぁ。

 白雪に到着。直美さんとは校門で別れて、 幸子ちゃんと校舎に向かう。
「ごきげんよう、幸子ちゃん、瞳ちゃん」
 由里ちゃんと美佳ちゃんだ。
「さっきまで直美先輩と一緒だったでしょ」
「いいだろう」
「幸子、あんたは邪魔よ。かっこいい直美先 輩とかわいい瞳ちゃんの、絵にも描けない美 しさ。声かけられなかったわ。駅にいる人全 部が二人の方を見てるんだから。噂の姉妹よ」
 直美さんと一緒にほめられて、すごくうれ しい。それに姉妹って言われるのもうれしい。 私、直美さんの妹なんだ。

 今日の午前中は身体測定と体力測定。体操 服に着替える。男の子がいないからか、みん な大胆に着替えるわね〜。下着のまんまで廊 下まで出る人までいる。
 美佳ちゃん、胸おっきい…そりゃ高校生モ デルと一緒にお仕事するくらいだからね。そ れにしても大人っぽい下着つけてるのね。他 の人は……どうして小学生があんな下着つけ てるのよ〜。あんな大人っぽい下着をつけら れるだけの胸があるのがうらやましいよぉ。
「あっ、瞳ちゃんのぱんつかわいい!」
…確かにガキっぽい。早く体操服着ちゃおう。

 おっきな体育館に入る。講堂と体育館は別 なんだ。向こうの方で中学生か高校生が授業 をやってる。
 体力測定は結構いい成績。やっぱり中学生 だもん。小学生に負けるわけないよ。でも、 背が高い子はみんな結構良かったわね。単に 体の大きさに関係してるだけかしら。
 体の大きさといえば、美佳ちゃんはもちろ んだけど、春香ちゃんとか陽子ちゃんとか、 私より背の高い子はみんな大人っぽい。しか も今は体操服姿。百三十五センチの智子ちゃ んみたいな子もいるけど、なんだか小学六年 のクラスだってこと忘れてしまいそう。
「瞳ちゃん、なに美佳ちゃんをじろじろ見て るのかなぁ?」
 智子ちゃんが話しかけてきた。
「大人っぽくてうらやましいなぁ、と」
「さては美佳ちゃんにも手を出そうとしてる な。直美先輩というすてきなお姉様がいるの に何が不足なんだぁ、このレズ娘めぇ。」
「レズってなんですかぁ?」
「知ってるくせにぃ。きれいな女の人ときれ いな女の人がえっちぃすることでしょ」
「どうやってエッチするんです?」
「知らないの?」
「知らない」
「本当に知らないの、瞳ちゃん?」
「知らない」
「え〜、瞳ちゃんって素朴なのねぇ。ごめん ね、変なこと聞いて」
 小学生に素朴と言われてしまった…。

 午後は算数と英語のテスト。やはり英語が あったのか…。でも私は二年間中学校で英語 をやってたんだぞ。数学だってやってたんだ ぞ。白雪と言えども、小学生に負けてなるも のかぁ〜。
 とはいえ、難しいよぉ。みんなスラスラ解 いてるみたいだし、なんか不安。悪い点たっ たらどうしよう。

 さて、家に帰らないといけない。でも、朝 一緒だった幸子ちゃんはピアノのお稽古だか らって別の方向にいっちゃった。直美さんは どこにいるのか分からない。自分ひとりで帰 らないといけない。
 朝と反対向きの電車に乗るんだよね。とい うことは…こっちか。ちょうど電車が来た。 これに乗ればいいんだ。
 田口駅、うん聞いた覚えがある。志田、こ れも覚えがある。向台、そうだ西向台で乗っ たんだ。じゃあ次だな。次の駅、次の駅…… あれぇ?通り過ぎちゃった!なんでなんでぇ? おうちが離れちゃうよぉ。この駅も通り過ぎ ちゃうのぉ、そんなぁ。あっ、ようやく止ま る。ここで降りちゃえ。
 でもなんだか大きな駅。どこに行けば戻れ るのか分かんない。どうしよう。とりあえず 階段を登れば…なんでこんなにホームがある のよぉ!岡山駅と同じくらいあるじゃない。 どれに乗ればいいのか分からないよ。もう四 時半だ。このままだと五時になって六時にな って…泣きたくなってきたよぉ。
「あら、瞳ちゃん。おうちはこの辺なの?」
「あっ陽子ちゃん、わ〜ん、よかったぁ」
「なんなの、泣くことないじゃない」
「降りたい駅で電車が止まらなかったの。ど うやったら帰れるのか全然分かんないの」
「…分かったわ。ちょっとこっち来なさい」
 掲示板の前まで手を引っ張られて行く。
「どこで降りたかったの?」
「西向台」
「あのね、快速に乗ったら西向台には止まら ないの。この図見れば分かるでしょ」
 …確かにそう書いてある。
「学校からだったら、普通に乗ればいいのよ。 これと同じ図はどこの駅にもあるから、ちゃ んと見なさいよ。分かった?」
「うん」
「次はここからの帰り方ね」
 また手を引っ張られて四番ホームに。
「このホームから出る普通電車に乗るのよ。 快速に乗ったら、また通り過ぎちゃうんだか らね」
 そこに電車が来た。
「ちょうどいいわ。これに乗りなさいね。も う間違わないでね」
「陽子ちゃん、ありがとう」

 なんとか家に帰り着いて、ほっと一息つい てから気付いた。私、道に迷って泣いちゃっ たんだ。それも、小学六年の陽子ちゃんに泣 きついちゃったんだ。陽子ちゃんに手を引っ 張られて、電車にまで乗せてもらったんだ。 そういえば、駅員さんが笑いながらこっちを 見てた。陽子ちゃんは大人っぽいから、私な んか、道に迷って泣きだした下級生に見えた だろうな…本当は中三の私が、道に迷って泣 きだした小学生に、見えたんだ。私、小学生 に泣きついて、小学生に手を引っ張られて歩 いたんだ。今度は恥ずかしくて泣きたくなっ てきた。



◎テストの点数

 今日は直美さんは朝早く登校。リボンはま たおばさんに結んでもらった。自分が小学校 の低学年のように思えてくる。早く自分で結 べるようにならなきゃ。
 駅まで歩くのはやっぱり恥ずかしい。下ば かり向いて歩いちゃう。窓ガラスに写るラン ドセル姿の私を見るたびに、恥ずかしくて顔 から火が出そう。

 教室に着くと、陽子ちゃんが来ていた。
「あっ、瞳ちゃん、今日は一人で来れた?登 校の時は普通しか止まらないから大丈夫か」
「はい、昨日はどうもすみませんでした」
「えっ、昨日どうかしたの?陽子」
「瞳ちゃん、間違って快速に乗ったみたいで、 川池で迷ってて、私を見たら泣きだしたの」
「道に迷って泣きだすなんてかわいいねぇ、 よしよし」
「今日は一緒に帰れるから安心してね」
「瞳ちゃんが泣く姿はさぞかわいかったでし ょうねぇ、陽子さん」
「泣きつかれた方はそんな心の余裕ないわよ」
 私、この人達にすっかり子供扱いされてる。 あのざまじゃ仕方ないかもしれないけど。私 の方が三歳も年上なんて、口が裂けても言え ないわ。どうしよう。

 一時間目は英語。まずはテストの点数。
「平均点は六十八点です。あんな問題でたっ た六十八点なんてなさけないですよ」
 やった〜、平均より上だ。七十五点だぞ。 ちらっと隣の孝子ちゃんの点数を見る。九十 点…それでも孝子ちゃん浮かない顔。中二ま でやってた私の立場はどうなるのよ!
 授業に入る。英語の教科書を当てられて、 みんなどんどん読む。なんでそんなに発音い いのよ。私恥ずかしくて読めないじゃない。

 二時間目は算数。これもテストの点数から。 平均は七十八点。私は七十七点…平均だ、一 点くらい無視無視。
 教科書を開く。あれ?岡山の小学校でこん なこと習ったっけ?…中一の教科書!だけど みんな当然という顔で見てる。しかも先生は 教科書通りの説明をしてない。あっ、こっち の本に書いてある。でも、岡山で習った時よ り良く分かる。そうかっ、マイナスかけるマ イナスがプラスっていうのは、そういうこと だったのか。今まで分かってなかったんだ。

 三時間目の社会はテスト。こんなこと、確 かに小学校で習った覚えがあるけど覚えてな いよ〜。ふぅ、なんとかテストの時間が終わ った。
「ねえ由里ちゃん、問題に出ていた鹿島って、 由里ちゃんちの別荘がある所でしょ?」
「えっ、茨城県に別荘持ってるの!」
「違うわ、瞳ちゃん。あの字の鹿島は佐賀県 の鹿島よ。少し離れたところで潟スキーした わねぇ、泥まみれになっちゃったけど」
 小学生に訂正されてしまったよぉ。

 四時間目は国語。これもテスト。先生は社 会の採点をしている。国語も難しいよぉ。
 国語のテストが終わったら、社会の採点結 果を返してくれた。平均七十点、私は五十九 点だよぉ。

 五、六時間目は家庭科、調理についての授 業。でもみんな、調理実習で何を作るのか、 で雑談の花が咲いている。
「総力を挙げてフランス料理のフルコースを」
「あなたがそう来るのなら、私は南米料理で」
「じゃあ私は中華を」「ならば私は和菓子よ」
 小学校の家庭科でそんなもの作んないでよ!

 帰る前に国語のテストを返してくれた。先 生がんばるなぁ。平均七十二点、私は七十九 点。理科をやってないけど、これまでのとこ ろで、平均よりちょっと上。私、白雪じゃ小 学六年生の平均程度なの?いくら白雪の中で も、これじゃ情けないわ。勉強くらいは中三 の意地を見せたいわよ。おうち帰って勉強だ!

 とは言ったものの、分からないよ〜。困っ たなぁ。あっ、直美さんが帰ってきたみたい だ。よ〜し、教えてもらおう。
「直美さ〜ん、お勉強、教えてくださ〜い」
「あっ、いいよぉ、こっちおいで。何が分か らないの?」
「社会の点数がすごく悪かったんです、みん な出来てるのに」
「地理ね。他の人達は自分自身旅行したり、 別荘があったり、その話を友達から聞いたり してるから知ってるのよ。瞳ちゃんもこれか らいっぱい旅行して、友達から話を聞けば、 自然と覚えられるから」
 そうなのかぁ。私は岡山以外は長崎に行っ ただけだもんなぁ。みんな、たくさん旅行を してるんだ。
「あと、算数なんですけど」
「どれどれぇ」
 ふむふむ、すごい、すらすらやってくれる。 そりゃ、小学六年のなんか簡単だろうけど、 とにかくすごい。尊敬しちゃう。
「直美さんすごいですぅ」
「そんなぁ、普通だよ」
「そんなそんな、とってもすごい、やっぱり さすがお姉ちゃんです」
 あっ、口がすべってお姉ちゃんって言っち ゃった。
「…瞳ちゃんにお姉ちゃんなんて言ってもら うとうれしいな、もっと言ってよ」
「そうですか?直美お姉ちゃん」
「うれしいよぉ」
 やったぁ〜!これで堂々とお姉ちゃんと呼 べるぞ!



◎一週間目

 白雪小学校に通うようになって一週間目。 身体測定やったりテストやったりしてたけど、 今はすっかり普通の授業をやってる。
 私、クラスの中で浮くんじゃないかって心 配してたけど、浮かなかった。むしろそっち が問題なのよ。同級生はいろんなこと知って て、おしゃべりするのが楽しいわ。幸子ちゃ んとは一緒に登下校して、時々寄り道に誘っ てくれる。光代ちゃんは小さな時外国にいっ てたから、よく外国のお話をしてもらう。由 里ちゃんはたくさん音楽家の名前知っている。 美佳ちゃんと敏子ちゃんにはモデルのお仕事 の話をしてもらう。毎日学校に来るのがとっ ても楽しいの。
 でも、私の方はかわいがってもらってるだ け。みんなに優しくしてもらってる…子供扱 いじゃない!みんな小学六年生なのよ。私の 方が三歳も年上なのよ。なんで甘えちゃうん だろう…。
 勉強の方だって、平均よりもちょっと上っ て程度。英語が得意科目になったのはうれし いけど、発音はみんなと比べ物にならない。 国語は元から得意科目だったけど、それでも トップというわけじゃない。
 つまり、私は白雪じゃごくごく普通の小学 六年生に過ぎないってことなの?

 お昼休み、なんだか廊下が騒がしい。
「ねえ、直美先輩のいとこってどの子?」
中学の制服を着た人が三人やってきた。
「瞳ちゃんはここで〜す」
「わっ、本当にかわいい!」
「あの人達だれ?」近くにいた孝子ちゃんに 聞いてみる。
「中一の先輩よ。真ん中にいるのが敏子ちゃ んのお姉さん」
 中一って、私よりも年下よ。
「敏子、瞳ちゃん借りるわね」
「貸賃五万円!」
「二十年ローンでね」
 教室から連れだされちゃった。
 でも、この人達私より年下なんだ。先輩な んて呼びたくないなぁ。困ったな。
「どこに行くんですか?」
「中高校舎でも案内してあげるよ」
 渡り廊下を渡って、となりの建物へ。
「体育館はもう使った?」
「はい。体力測定の時に」
「ここがプールね。で、図書館ね」
「おっきい…」
「中高と大学の人が使えるの。瞳ちゃんは来 年からだよ。早く使えるようになるといいね」
 …私は小六だから使えないんだ。この人達 は中一だから使える。私より二つも年下なの に。
 でもこの人達、本当に私を子供みたいに扱 うの。私を見下ろすような目で見てる。私よ り背が小さい子も、自分の方が大人なのよ、 子供を連れて歩いてるのよって顔をしている。 なんで年下からこんな目で見られなくちゃい けないのよ。

 次の建物に入る。すっごく大人っぽい人達 ばかり。まるでOLみたいだけど、一応制服 着てるね。高校生かな?ということは、ここ は高校の教室か。制服着てなきゃ高校生だな んて分からないよね。
 ここが四年五組…えっ、小学四年じゃない わよね。この人の胸には…四年五組だ。どう ゆうことなの?
「四年五組ってどういうことです?高校生に 見えるんですけど」
「中学と高校を通して学年を数えてるの。中 学一年は一年、中二が二年、中三は三年、高 校一年が四年で高二が五年、高三が六年」
 小さな子供に教えるように話してくれる。
「ふ〜ん、面倒ね」

 中一の教室に入って、さんざんなでなでさ れて、抱きつかれて、おもちゃにされた後、 小六のクラスに帰ってきた。

 掃除が終わって、社会の時間。高校生を四 年五年六年という、って話を思い出していた。 …そういえば、直美お姉ちゃんは「2−3」
だったっけ、ということは中二…まてよ、そ んな馬鹿な。でも高校一年であんなに大人っ ぽい人達ばかり。直美お姉ちゃんは大人っぽ いけど、そこまでではなかった…じゃあ中二 なんだ。つまり、私より年下だったんだ!
 あぁ私ったら、年下の子にお姉ちゃんなん ていってたんだ!

 夜になって、算数のことを聞くふりをして (でも本当に分からない問題だけど)、直美 さんの部屋に入る。
「あのぉ、質問なんですけどぉ」
「どれどれぇ」
 私の分からない問題をすらすら解いてくれ る。すごいの、とても尊敬してるの。でも…。
「そうだ、直美…」
 …お姉ちゃん、という言葉が素直に出てこ ない。
「……お姉ちゃんは、何年何組なんですか?」
「二年三組よ」
「二年って、中二ですか?」
「高校は四年五年六年って数えるの。それに 私そんなにおばさんに見える?そりゃ、瞳ち ゃんに比べればおばさんだけどぉ〜」
 直美さん、私に抱きついてくる。こんなき れいなお姉ちゃんがいるなんて、すっごくう れしい。似合いの姉妹って言われるのも、う れしい。鏡に写ってる、すらっと高い直美さ んとちょっと子供っぽい私、自分でも絵にな る姉妹だと思うわ。でも、年上の私が妹で、 年下の直美さんが姉なの…。



◎コンサート

 学校に通い始めて二回目の土曜日。今日は コンサートの日。美佳ちゃんと由里ちゃんと 幸子ちゃんも来るの。
 どんな服着ていけばいいのかなぁ。全然分 からない。そうだ、直美お姉ちゃんに聞けば ……私また直美さんをあてにしてる。直美さ んが私より年下なのが分かった後も、勉強を 教えてもらっちゃった。年下を「お姉ちゃん」 と呼んで、色々教えてもらって、最後にぺこ りとおじきして部屋を出る、なんだか嫌なん だけど、でも他に頼れる人がいないの…。

「直美…お姉ちゃん、どの服着ていけばいい かなぁ」
 直美さん、しばらく考え、にたぁ〜と笑っ て、タンスの奥から服を取り出した。
「これにしよう!」
「わっ、そんなふりふりを着るんですか!」
「瞳ちゃんに絶対似合うよ」
 そんなの小学生だって着ないのに、なんで 私が…あっという間に、直美さんに着せられ てしまった。
「ちょっとこっち向いてね」
直美さんが私の顔に手をあてて、何かをし始 めた。
「もう小学六年生なんだもん、このくらいの お化粧はしなくちゃ」
 あわてて鏡を見ると、唇と頬にかすかなお 化粧…。ちょっぴり大人の気分。
 でも、お化粧も直美さんにしてもらわない と、私何もできないの…。

 おばさんと直美さんと一緒にコンサート会 場に。会場は学校の講堂よりも狭いかな?
 中央の階段を直美さんと一緒に降りていく。 みんな直美さんの方を見ている。フリフリド レスの私なんか、おまけよね。
 美佳ちゃん由里ちゃん幸子ちゃんはもう座 ってる…お化粧ばっちり決めちゃってるじゃ ない、この人達。服も大人っぽいし。私一人 だけガキっぽい服じゃないの。この中で私が 一番年上なのにぃ〜。
「瞳ちゃんかわいい!私の隣に座ってね」
「何いってんの私の隣よ」
「そんなことでケンカしないの。間に座って もらえばいいでしょ」
 もう一人、美佳ちゃんのそばに立ってる。
「あのぉ、そちらの方は…」
「あっ、紹介するわ、私の妹の香織、五年生 なの」
 が〜ん、五年生でこんなに大人っぽいなん て…。そりゃ美佳ちゃんの妹だから当然なの かもしれないけど、私より全然大人っぽいじ ゃない。化粧もばっちり。私の薄化粧なんて、 お子様の遊びにしか見えないわ。私より四歳 も下なのよ…。

 孝子ちゃんのチケットをゆずってもらった から、直美お姉ちゃんとは離れ離れ。座席は 一番前の中央。会場は一番後ろまで埋まって る、すごい人気なのね。そんなコンサートの 一番いい席を取ってるんだ、この人達。
 そういえば、この三人の親らしい人が見え ない。
「みなさんのご両親はどうなさったんですか?」
「仕事で忙しいから来れないのよ。すごく聴 きたがってたけど」
「うちの親は洋楽はあんまり聞かないの。今 日も歌舞伎見に行っちゃった」
 この人達、自分たちだけで聴きに来てるん だ、小学生なのに。

 ベルがなって、幕が上がった。オーケスト ラだ。クラシックのコンサートなんだ。学校 の音楽の授業で何度か聞いたことあるけど、 つまらなかったな。寝ちゃわなきゃいいけど。

 目の前のチェロの人が弾き始めた…チェロ ってこんな音だったんだ。知らなかった。学 校のレコードで聴いたことあるけど、こんな 音じゃなかった。こんなきれいな音じゃなか った。
 隣のバイオリンの人も弾き始めた。嘘よ。 こんなきれいな音が出るなんて。そんなこと 誰も教えてくれなかったじゃない。
 むこうにいるピアノの人もフルートの人も ホルンの人も弾き始めた。すごいわ、こんな 音がこの世にあったのね。きれいとか素晴ら しいとか、そんな言葉を使っても嘘になりそ うなくらい。涙が出てきちゃう。涙が止まら ない。

「瞳ちゃん、どうしたの?」
 演奏が終わっても、まだ涙が止まらない。 みんな拍手をしている。私だってしたい。で もそんなことが出来る力は残ってないの。涙 を流すことにすべての力を使ってるから。
 指揮の人が振り返って、礼をしている。拍 手をしないと失礼だわ。ほら、私のことに気 付いたじゃない。変に思ってるわ。こっちに 降りてくる。私の手を握った。
「Thank you.」
 なぜあなたがサンキューをいうのよ。私が 言わなきゃいけないのに。私は拍手もしてな いのよ。ただ泣いてるだけなのに。

 アンコールも終わって、座席を立つ人もい るのに私はまだ涙が止まらない。
「お化粧、すっかり落ちちゃったわね」
「初めての瞳ちゃんに、一番前の席は刺激が 強過ぎたかしら」
「私も泣いたことがあるわ。八歳の時だった かしら。お父さんに初めて連れていってもら った時だった。何もしらない私の目の前に、 いきなりきれいな音を突き出されて、泣く以 外方法がなかったの」
 由里ちゃんが私の頭をなでながら言った。
「さあ、泣きながらでいいから、歩きましょ う。おうちに帰って、泣きながら寝るのよ。 朝起きた時とっても気持ちがいいわよ」

 由里ちゃんに手を引っ張られながら、私は 歩いた。どう見ても私は、泣き虫の、何も知 らない小さな女の子。由里ちゃんや美佳ちゃ んや幸子ちゃんに比べればなんにも知らない の。どう見たって私の方が子供よ。私の方が 三歳年上なんてどうでもいい。心の中で年上 ぶっててごめんなさい。これから真面目に白 雪小学校の六年生をやります。みんなの同級 生というのもおこがましいけど、これからが んばって、みんなの同級生にふさわしい小学 生になります。
 直美お姉ちゃん、自分の方が年上だなんて 思ってごめんなさい。私がどんなにがんばっ ても、直美お姉ちゃんより年上になんかなれ ない。でも、一生懸命がんばって、立派な妹 になります。
 みんな、なんにも知らない私にもっと色ん なこと教えてください。



◎エピローグ

 今日もおばさんにリボンを結んでもらった。 クラスの中で大人に結んでもらってるのは私 だけかな?それはちょっとはずかしいなぁ。 夏休みになるまでにはなんとか覚えなきゃ。
 今日は直美お姉ちゃんと一緒に登校。自慢 のお姉ちゃんと一緒に街を歩けるなんてうれ しいな。
 小学校の制服はまだちょっぴりはずかしい けど、でも今日は胸をはって歩こう。ガラス に写るランドセル姿の自分を見て、うれしく なってくる。白雪なんて誰でも入れるわけじ ゃないもんね。自信をもって「白雪小六年二 組浜田瞳、十一歳」って言えるよ。
 駅の改札のおじさんだ。よし、思い切って 言ってみよう。
「おはようございます!」
「おはよう」
 にっこりほほえんでくれた。変だなんて思 ってないんだ。ちゃんと普通の小学六年生に 見えるんだ。自信がでてきたぞ。

 学校の校門に入る。
「直美先輩ごきげんよう」
「あっ、瞳ちゃんだ」
「本当にお似合いの姉妹ですよねぇ」
 中一の人達だ。私の先輩なんだ。よし、声 に出して言ってみよう。
「先輩、ごきげんよう」
「よしよし、白雪生らしくなってきたぞ」
 こないだは年下だなんて思ってたけど、今 日はなんだか中一の人がすごく大人に、すご く大きく見えるの。だって、白雪の先輩なん だもの。

 教室に着いてあいさつをすると、みんな一 斉に私の方を向いた。
「瞳ちゃん、コンサート聴きて泣いたんだっ て?」
「あの堅物のメイフィンがわざわざ降りてき て握手をしたんですって?」
「あ〜ん、そんな素晴らしい演奏だったの。 聴きたかったよぉ」
「でも瞳ちゃんは純粋よねぇ、音楽聴いて涙 を流すなんて。私も遠い昔はそうだったんだ けど…」
「遠い昔って何十年前のこと?」
「まだ十二年も生きてないのに、何十年はな いでしょぉ」
 そうか、私は田舎から出てきた、何も知ら ない素朴な小学六年生なんだ、みんな私をそ う思ってるんだ。実際そうなのかもしれない。 みんなよりちょっと遅れてるけど、みんなか らいろいろ教えてもらって、追いつかなきゃ。

 さあ授業。せっかく校長先生がぴったりの 学年に入れてくれたんだ。勉強もがんばらな きゃ。

 昼休み、白石先生に呼ばれて職員室へ。
「どうかしら。お友達は出来たかしら」
「はい、昨日は孝子ちゃんにコンサートのチ ケットをゆずってもらって、由里ちゃん美佳 ちゃん幸子ちゃんと聴きにいきました」
「その話聴いたわ」
 先生、くすくす笑ってる。
「クラスのみんなからかわいがられてるわね。 でも来年は中一になるのよ。もうちょっと大 人にならないとね」
 そうか、来年は中一なんだ。一ヵ月前は岡 山で中学二年生やってたはずだけど、なんだ か嘘みたい。今朝会った中一の先輩達はすご く大人に見えた。来年、私もあんなふうにな れるのかしら…。そのためにも立派な小学六 年生にならなきゃ。
 廊下にある鏡の前に立って髪をなおす。胸 には校章に「小」の字と「6−2」の記章。 それを見て大きくうなずいた。



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