新世紀の幕開けに贈る”人間の復 活”
志木第九の会の設立以来満10年、このたび第8回定期演奏会を迎えます。 この間のご支援に改めてお礼申し上げます。21世紀の初頭にお贈りする私たちの演奏会のコンセプトは「人類の未来のための復活」
演奏曲はG.F.ヘンデル(1685−1759)のの対策、「メサイア」です。メサイアとは”救世主”。神の子イエス・キリストの生誕とその生涯、人類の罪を負って十字架にかけられ、その7日後に永遠の生命を得て復 活する壮大な物語を、ヘンデルは自らの感動の余り、楽譜を涙で濡らしながら作曲しました。
宇宙の中の地球が誕生してから46億年。地球の歴史を1年にたとえて、元旦の真夜中に地球ができたとすると、最初の生命が誕生したのが <体育の日>ごろ。大晦日の午後5時頃やっと誕生した人類が、自然や環境にさまざまな問題を起し、今や地球の生態系は危機に瀕しております。
世紀末の、何とかの大予言とか、Y2K問題
コンピューターがもたらす文明社会の終焉(しゅうえん)騒ぎが一段落し、新世紀を迎えようとする今、次のミレニアムを迎えるまで、生命が生きる最低限の環 境、つまり大気や水の安全性に明日はあるのか?キリスト教における復活の概念は、俗人には理解しにくいものがありますが、何十年何億年先に予想される、太陽系の名誉ある自然死の瞬間ま で、地球上の全生命が生き永らえるための英知を、既存のありとあらゆるものの贖罪(しょくざい)と、そこ からの輝かしい復活に求める必要があるのではないでしょうか。
ベルギーのアントワープ大聖堂を訪れると、ルーベンスの「キリストの降架」と「復活」の絵が、私たちを静かに見下ろしています。小説「フ ランダースの犬」の主人公ネロ少年が、一目見ることを渇望していた、祭壇画です。少年ネロは、この絵の足下で息絶えましたが、彼の存在は私たちの記憶細胞 の中に復活しています。
おそらくはたった1個の細胞が、すべての生命の起源
とするなら、前の世代の死から復活し、受け継がれてきた私たちの体内の細胞も、永遠の生命を保つに違いないし、それらを確実に次世代に引き継ぐ義務があり ます。新世紀への祈りを込めた、「メサイア」でありたいと思っています。三澤音楽監督は、昨年から2年続いてバイロイト音楽祭で合唱指揮をして きました。世界の檜舞台での腕の冴えに、少しでも答えられれば幸いです。
(伸 2000年10月)(注) 贖罪:キリスト教で、キリストが十字架にかかり、人類にか わって罪をあがなったこと。
P.P.ルーベンス(1577−1640)作「キリストの降架」と「キリストの復活」(アントワープ大聖堂)
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