ついに川浜高校ラグビー部は宿敵相模一高を破り全国大会へと出場した
そして順調に１回戦２回戦へと駒を進めたのだが　ただ一人それがおもしろくない人物がいた　内田治男の父玄治であった
「もう我慢ができん！」
内田勝「どうしたんだよ　おやじ」
玄治「どうしたもこうしたもあるもんか　わしは花園へ行って来る」
勝「 花園？おやじ応援行くんだったら俺も」
玄治「応援じゃない　わしは文句を言いにいってくるんだよ」
勝「おやじなんだよ？それ」
玄治「止めるんじゃないよ　今日という今日は腹の中煮えくりかえってな　」
玄治の次男治男は川浜高校ラグビー部員である　しかし今度の大会においては１回戦２回戦と控えにまわって出場することが出来なかった　そのことが玄治にはどうにも我慢ができないのであった

遠征先旅館にて
玄治「滝沢君　どうして治男を試合に使ってくれないのだね　治男のどこが悪いと言うんだ？　親の贔屓目で言う訳じゃないがね　わしゃどう考えても治男がな他のレギュラーよりは劣っているとは思えんのだ　あいつはねぇ子供の時から兄貴の影響でラグビーには慣れ親しんできたし　動きだって兄貴よりはずっとすばしっこい　いったいどこが足りないというのだね　滝沢君！事実あんたは予選の時はずっと治男を使ってきたじゃないか　それを花園に来たとたんにどうして使わなくなったんだ　どうも理由がわからんよ　あんたは知らないだろうがねぇ　そりゃもう涙ぐましい努力をしてきたんだ　あれは去年の秋の頃だったか・・」

〜回想シーン〜
玄治と勝と治男の三人で夕食を食べていた　ところが治男は食べながら居眠りをしてしまう
勝「治男　なにやってるんだ？」
治男「あっ　」
そしてまたおかずをつまみながら居眠りをしてしまう
勝「治男　大丈夫か？」
治男「うっ　うん」
玄治「治男　そんなにつらいんだったらラグビーやめてもいいんだぞ」
治男「だれがやめるものか」
玄治「しかしな　それじゃいまに体を壊してしまうぞ」
治男「うるさい！　今度ラグビーやめろなんて言ったらな　勘当するぞ」
玄治「お前　勘当って　それは親が言う言葉だよ　ばかだなお前は・・」

玄治「それはねぇ　あんたにいわせればうちの子だけでなくみんなそうだというかもしれない　しかしねぇ滝沢君　やはりわしは親として一度息子を花園のグランドで戦わせてあげたい　いやそれも実力が格段落ちるというなら諦めもするが　どうも納得できんのだよ　どうだろうね滝沢君　次の試合には治男をぜひ　」
滝沢賢治「できません」
玄治「できない？」
賢治「今の状態では治男君を試合に出すわけにはいきません」
玄治「なっ　なぜだ？」
賢治「試合にはいつもベストメンバーでのぞむ　それが私のモットーだからです」
玄治「じゃあ治男はベストじゃないと言うのか」
賢治「はい」
玄治「よくもそんなことを　滝沢君一体だれのおかげでこうやって試合ができると思っているんだね　えー？　ろくに金もない貧乏なこのラグビー部のためにな市長と掛け合って特別な補助費を出させたのはこのわしなんだぞ」
賢治「ご厚意は感謝しています　しかしそれとこれとは話が別です」
玄治「この恩しらずが　ちくしょう　治男が出ないのなら帰る」
取り残された賢治は一人苦悩していた
また治男も遠征先の旅館の部屋の隅で一人沈んでいた

そしていよいよ前年度の優勝校城南工大高との対戦であった
前半こそ押し気味に試合を進め戦いチャンスをうかがっていた川浜ラグビー部であった ところが後半開始直後末永が足を負傷し退場を余儀なくされた　交代選手を告げようとする賢治を治男は祈る様な目で見ていた　
そして賢治は治男を交代選手に選んだ
「はい」満面の笑みをうかべ治男はグランドへと出ていった
スタンドの応援席から治男の姿を玄治は見つけ
「治男ー　ガンバレよ治男！　ははー　いや今出ていったの私の息子なんですよ　ぜひ応援よろしくお願いしますよ　がんばれー　ファイトー　」と興奮を隠しきれなかった

ところが治男はボールを持って突進してくる城南の曽根にタックルができず転がり込んでしまう　そして再び後ろから曽根にタックルをしようとするがどうしても飛びかかることができない
賢治はおもわず「いかん！」
そしてトライを決められてしまう
玄治「うーわぁー　ちくしょう　ははは　いやー　愛嬌　愛嬌！」
玄治の言葉とはうらはらにグランドの治男の表情はくもっていた
そしてそのトライをきっかけに試合の流れはがらりと変わってしまった
治男のタックルを軽く避けてトライを重ねる城南の曽根
その姿を見て苦悩に顔をゆがめる賢治と玄治
そして　ノーサイド　３６対４であった
相模一高ラグビー部監督勝又は「初出場でここまでやるのは立派ですよ」と賢治の妻節子をなぐさめる　　しかし岩佐校長は「負けは負けだ　しかし滝沢君はどうして内田みたいな選手を使ったのかね」玄治はその言葉になにも言い返せなかった

そしてラグビー部のスローガンは全国大会出場から打倒城南工大高にかわった
賢治の檄に一斉にグランドへと飛び出す部員達だが一人治男だけが学生服のまま立っていた　
賢治「内田　なにしてる」
治男「あの・・」差し出された封筒には『退部届』と書かれていた
賢治「なんだこれは　本気か　本当にやめるつもりなのか」
治男「はい」
賢治「ちゃんと顔を上げて返事しろ」
治男「やめます」
賢治「理由はなんだ　言ってみろ　あれだけラグビーが好きだったお前が何故やめる気になったんだ　内田」
治男「俺・・　俺自信がなくなったんです　だって俺　いくらやったって・・　いくら一生懸命やったって・・　だってそうでしょう先生　俺どうしたって駄目なんでしょう　城南工との試合に負けたのも元はといえば俺が・・・　　駄目なんですよ・・俺　」
泣きくずれる治男　それを厳しくみつめる賢治
賢治「分かった　この退部届け確かに受け取った　どうしたんだ　お前の退部を認めると言ったんだ」
部室を出ていく賢治　そして治男は一人残される

その夜治男は玄治に連れられて賢治宅を訪問する
玄治「滝沢君　あんた一体どうゆうつもりなんだ　そりゃねぇ城南との試合に負けたのはこいつのミスが引き金になったのはそれはわしも認めるよ　しかしねこいつ一人でラグビーやってる訳じゃないんだよ　他に１４人もいるじゃないか　それをあんたがねこいつ一人で負けたように責め立てて」
賢治「誰もこいつ一人を責めちゃいませんよ　おっしゃる通りラグビーは１５人でやるスポーツです　うちのチームが城南に負けたのはチーム全体の力がまだまだ城南に及ばなかったからです」
玄治「じゃあなんでこいつをやめさせたんだ　かわいそうにこいつは自分一人で責任をしょって」
賢治「やめるといったのは内田本人ですよ」
玄治「だっだからそういう時は慰め励まして引き留めてやるのがあんたの役目じゃないのか　そうだろう　それを簡単に退部届を受け取るなんて　それが子供を指導する人間のとる態度か」
賢治「内田さん　あなたのそういう甘い態度が息子さんを駄目にしているんですよ　まだわからないんですか　私が全国大会に入って内田をメンバーから外したのは予選の時からこうなることが目に見えていたからです　私は予選の時からいえそれ以前の練習の時から内田にはことあるごとにもっとしっかりタックルするように言い続けていました　内田も頭では分かっていたはずです　しかしいざとなるとどうしても体の方が逃げてしまう　勇気がないんですよ　内田には」
玄治「勇気？」

賢治「ええ　いくらいいセンスを持っていても勇気がなければラガーマンの資格はありません　いいですか　敵の攻撃を防ぐ唯一の手段はタックルなんです　相手がキックしたボールをチャージするのもタックルをかけようと突っ込めばこそできるのです　そりゃタックルは恐いですよ　正面から突っ込めば首を痛めるかもしれない　後ろからかかれば相手のスパイクで顎を蹴られるかもしれない　それでもやらなきゃいけないのがタックルなんです　それがラグビーなんです　そのタックルが治男君にはどうしてもできない　これじゃラグビーになりません　あの試合でも末永が負傷した時他の選手を出すべきだったのかもしれません　でも私はもう一度治男君に賭けてみようかと思ったんです　内田お前が何故先発メンバーから外されたのか一番よく分かっていたのはお前だったはずだ　そうだな　だからお前が今度こそ１５分の１の責任をはたしてくれることを信じて出場させたんだ」
治男「１５分の１・・？」
賢治「そうだ一人一人が自分の責任をきちんと果たす　それがラグビーなんだ　それが勇気なんだ　私だって現役の時にはずいぶん恐い思いをしました　まして相手が体の大きい外国人選手の時なんか　まるで象の足みたいなのが砂を蹴立てて突進してくるのですからね　そいつに突っ込むのは並大抵の勇気じゃ務まりません　でもその勇気を与えてくれたのは責任感でした」
玄治「責任感？」
賢治「ええそうです　今ここでこいつの突進をくい止めるのは俺の責任だ　俺がやらなくて誰がやるんだって　その責任感が私の勇気の源だったのです　でもお前はあの試合でもとうとうその勇気を持つことができなかった　それでも俺は待った　あの手痛い敗戦の中から今度という今度こそ勇気とはなにかとお前が掴み取ってくれることを信じてな　だがお前は発奮するどころか負け犬みたいにしっぽを巻いてやめると言ってきた　だから俺はやめろと言ったんだ　勇気のない奴に用はないからな」
治男は玄治を引っ張るように賢治宅を後にした

そして一人考え込む賢治に節子は話しかける
節子「あなた少し言い過ぎだったんじゃないの」
賢治「言い過ぎ？」
節子「そりゃあの子が甘えん坊だっていうのは分かるわよ　でも子供の中には叱れば叱るほど落ち込んで駄目になる子もいるんだから」
賢治「だからそんな奴に用はないっていってるんだよ」
節子「あなた　それじゃあなた自分で落ちこぼれをつくることになるのよ」
賢治「落ちこぼれを？」
節子「そう言っちゃなんだけどあなたが赴任したころの川浜高校はラグビーだけでなく学校全体が落ちこぼれみたいだったでしょ　それをあなたが必死に努力してここまでもってきたんじゃない　それなのに今になってあんな子は必要ないなんて　あなたらしくないわ」
妻の言葉がぐさりと胸に突き刺さったまま数日が過ぎた　だが治男は練習に姿を見せず賢治もまたどう対処したらいいのかわからぬまま数日がすぎた
そんなある夜・・・

さてスクール★ウォーズ第２１話のダイジェストです いかがでしょうか
私にとってとても思い入れのある話です　そこでこちらをＨＰの立ち上げ記念に製作させていただきました　しかし私の拙い文章のあらすじ紹介ではとても気持ちが伝わらないと思いエンディング部分は書きませんでした
他にもこの回の話の中では多々省かせていただいた箇所がありますので　ぜひ今発売されているＤＶＤでご鑑賞いただきたいと思います

帰ってくる　この若者は今度こそ間違いなく勇気という武器を身につけて帰ってくる　賢治の胸にまた一つ熱い思いがこみ上げてきた