♪Column - 極私的JAZZCD評 トロンボーン、早島大祐によるジャズCD評。
第24回(2005.6.8) - 絹原一寛・日ノ下慶二クインテット "海と風" (自主制作、2005年)
学部を出てフィールに入団した当初から絹原一寛は譜面だけでなくなぜだかアドリブとかもよくできる男であった。 大学時代は相当、ぶいぶいいわしていたのだろうと、折を見て彼の同期や後輩などに話しを聞くと阪大のフルバンコンマス時代は「鬼」とも呼ばれていたらしい。今でも音楽へのまじめな姿勢≒「鬼」の名残、はうかがえるが、それは常に紳士の装いにくるまれているから現在ではそれは完全に周りの人間によい緊張感を与えてくれる種類のものになっている。 ただ、コンマス時代のキヌハラを語る同期や後輩たちの表情は、一様に少し「アンビリーバボー体験」をしたかのようなうつろなものになるから、きっと相当こわいものであったに相違ない。気の弱い私などは当時の彼の「鬼」仕切に接していたら震えがとまらなかっただろう。彼より先に生まれていてよかったと思う(笑)。 その後、就職もして精力的に働くかたわら、大いに売れたEGOラッピンのサポートもやりいのと、生半可のプロも裸足で逃げ出すほどの活躍を見せたのは周知の通り。仕事にアフターに、と両輪の活躍を現在にいたるまで見せている。まさに「わしゃ、止まったら死ぬんじゃ〜〜」状態である(笑)。 そんな彼がやはり腕利きの仲間と組んで一枚のCDRを作成した。しかもメンバーがそれぞれ曲を持ち寄って全曲オリジナル。枯葉とかをやって、安易ないやらしい系、ならぬ癒し系一丁上がり!を作ろうとしない心意気の高さにまず感心する。 そしてオリジナルのモチーフ。40歳以下の現在の日本人の「プロ」が作るオリジナルは大体、村上春樹作品か宮崎アニメの影響を受けたものと相場が決まっているが(笑)、本作は海洋写真家矢部洋一氏の写真とのコラボを意識して各自が曲を作ったとのことで、音と映像の交錯という、彼の本業である都市空間作りも視野に入れた、仕事とアフターのバランスの良い、なんとも地に足のついた作品になっている。曲名も安易な横文字にせず、「帆」「海風」「水飛沫」など漢字をチョイスしていて簡潔。誠に潔い。 現在、仕事がさらに忙しいであろうに、この作業。きっと彼はさらなる飛躍を期しているに相違ない。私のお薦めを挙げるとC「水飛沫」とE「セイル!」。ジャズらしいウィットに富んでいて、でリズムもしっかりした大変気持ちいい佳曲。皆様に一聴をおすすめします。 |
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