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新書


『睡眠の不思議』 井上昌次郎(講談社現代新書)
 人はなぜ眠るのか、なぜ不眠に悩むのか。眠りのコントロールタワー、脳。生物時計と宇宙時計のギャップ、 ホルモンと睡眠物質・・・など、からだのメカニズムを通して、未知の世界――眠りの謎を解き明かす。

 たいていの人が1日の1/3〜1/4もの時間を費やす、睡眠だが、多くの人が睡眠について知らないという。 夜になったら寝て、朝になったら起きる、と単純な習慣だが、単純だからこそ詳しく学ぶと結構面白い。とはいえ、 素人が読むには少々難解だった。
 レポートや論文を書いたりするときに参考に読むような本だった。


『活字のサーカス−面白本大追跡−』 椎名誠(岩波新書)
笑い3.5点 涙0点 恐怖1.0点 総合4.0点
 「カバンの底の黄金本」「蛭的問題」「明るいインド」「ドロリ目談議」「おせっかいニッポン」 「役人たちの安全」「ポケミスの女」をはじめとする計16篇の短編エッセイ集。
「カバンの底の黄金本」:旅人シーナマコトが、旅に出るときどんな本を持っていくか。 この問題に対し、彼はミステリ3冊・SF2冊・時代もの1冊・ノンフィクション2冊・エッセイ1冊・古典1冊という必殺の 黄金比をあみだした。

 作家であり、旅人であり、書評誌『本の雑誌』の編集長である椎名誠氏が、旅人で読んだ本や、日常生活の中で読んだ本を 紹介する本。だが、そこはシーナさんらしく、メジャーなものより専門的(マニアック?)なものが多い。ところが、 どんなにマニアックな本も、シーナさんのエッセイとからめて紹介されると、非常に興味をそそられ、明日にでも本屋で 捜して読みたい!という気持ちになってしまう。
 読書案内として読んでも面白いが、エッセイとして読んでもまた面白い。今で言うストーカーにつきまとわれていた話や 海に関する怖い話。ケンカして留置場に入った話、スプーン曲げ少年にあった話など、旅以外にも冒険的生活を送っているだけに、 平凡なエッセイとは一線を画する面白さだった。


『毒草を食べてみた』 植松黎(文春新書)
笑い0.5点 涙0点 恐怖0点 総合4.0点
 いまだ解毒剤のないトリカブト。0.06mgで象をも倒すバッカク。毒にも薬にもなるジギタリス。 史上もっとも残酷な毒・クラーレノキ。ストリキニーネの原料マチン。ガンをひきおこすポインセチア。 など計44の毒草が紹介されている。

 本屋でこのタイトルを見たとき、”なんとマヌケでそれでいてインパクトがあるタイトルなんだ!”と興味を引かれ 購入した。著者は実際、本書に出てくる毒草をすべて食べたわけではない。それでも数種類は、ちょっとかじってみたりしている。
 1つの毒草についてだいたい4〜6ページを使い、その毒に関する古代から現代までのエピソード、その効能、体験談や事件などが 書かれている。
 読んでみて、著者が「食べてみた」ということ以上に驚くのが、意外と身近に毒草が生えているということだ。 フクジュソウ・スイトピー・ヒガンバナ・スズラン・スイセン・・・など結構知られた草花も毒草として取り上げられている。 これらを、誤って食べてしまわないためにも本書をよく読むとよいと思う。それと、ミステリが好きな人には、 知識として読んでおくとより一層ミステリが面白くなるかもしれない。


『ニッポンの未来』 室伏哲郎(宝島社新書)
笑い0.5点 涙0点 恐怖0.5点 総合3.5点
 長引く不況に始まり、警察・教師の不祥事、相次ぐ少年犯罪と保険金殺人、党利党略ばかり気にして国民のことを考えない 政治家ども等々、あげたらきりがないほど暗いニュースばかりが目立つ世紀末。こんな日本に明るい未来はあるのか? 世界がうらやむ未来なんてくるのか?そんなことを考えているときに、この本を見つけたので読んでみた。
 内容は、徴兵制、結婚、少子高齢化などの問題から、悪徳警官、インターネット犯罪、保険金殺人、カジノ合法化まで 幅広い題材における日本の未来を予測している。どの予測も、辛口で、未来に希望がもてなくなる。これは、今のまま何も手を打たなかった 場合の未来予想図だと信じたい。しかし、今の日本を見ていると、どうあがいても明るい未来は望めないという気がしてくるのも確かだ。
 全体的に難解な言葉や表現を使ったりせず、わかりやすい文章なのだが、カタカナ英語やカタカナ表記がやたら多いのが気になった。


『なぜ人を殺してはいけないのか』小浜逸郎(洋泉社新書)
笑い0点 涙0点 恐怖0点 総合3.5点
 貧困と抑圧の少ない自由な近代国家となった日本は、旧来の倫理規範やモラルが薄れ、欠けつつある。 そこで本書では10の倫理学的な主題を根源から問い直している。その主題は以下の通り。
 第一問 人は何のために生きるのか
 第二問 自殺は許されない行為か
 第三問 「私」とは何か、「自分」とは何か
 第四問 人を愛するとはどういうことか
 第五問 不倫は許されない行為か
 第六問 売春(買春)は悪か
 第七問 他人に迷惑をかけなければ何をやってもよいか
 第八問 なぜ人を殺してはいけないのか
 第九問 死刑は廃止すべきか
 第十問 戦争責任をどう負うべきか

 何年か前、ちょっとしたブームのように問われ、多くの知識人がうまく答えようと挑戦した 「なぜ人を殺してはいけないのか」という質問。この著者はどう答えるのかと思って読んでみた。
 しかし、全体的にかなり難解だった。はっきり言って結局何が言いいたいんだと思った 質問もあった。出された質問にすぐには答えず、まず言葉の定義を述べたり、問い方が不適切だから こう問い直すべきだとか、ゆっくりと結論に向かうのだ。例えば、第八問は、 「人はなぜ人を殺してはならないと決めるようになったのか」と問い直している。
 難解とはいえ、なるほどと納得、感心できるところも多かった。特に第九問、第十問などは、 一読する価値大です。


『「哲学実技」のすすめ−そして誰もいなくなった…』 中島義道(角川oneテーマ21)
笑い1.0点 涙0点 恐怖0点 総合3.0点
 「哲学」の基本は、”自分の「からだ」から出た言葉を尊重して「ほんとうのこと」を正確に語りつづけること。そのかぎり、 他人を正確に批判し、他人からの批判を正確に浴びること”だ。デカルトやカント、存在論などを覚え理解しようとするのは、 哲学研究者であって哲学者ではない。哲学者になるには哲学的に「語る」訓練、つまり「哲学実技」が必要なのだ。
と語る著者が6人の塾生と対話する形式で書かれた哲学実技指南。

 哲学というのは小難しくて近寄りがたい学問だと思っていたが、本書を読んでイメージが変わった。ただ、読んでみて、 やはり僕は哲学者にはなれないし、正直、なりたくないなと思った。「きれいごと」は語らず、ひたすら真理を求め、他人を 傷つけても「ほんとうのこと」を語らなければならないという著者の意見は、「なるほど」とは思うものの、100%賛成できる わけではない。
 医学・法学・経済学はもちろん、文学だって社会の役に立っている。しかし、そもそも哲学は何のための学問なのかと思う。 哲学者が真理を求めたところでそれは自己満足なのではないか。その真理を広め、人を救おう社会に役立てようとすると、もしかして宗教に なるのか?と思いつつ読んでいたら、
 「哲学は、簡単に人を救えない。救済より真理を優先するものなのだから」
との記述があり、ますますわからなくなった。
 やはりこれ一冊では哲学はわからないなぁ。


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