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梅原克文


『ソリトンの悪魔(上・下)』 梅原克文(ソノラマ・ノベルス)
笑い0.5点 涙2.5点 恐怖2.0点 総合5.0点
 21世紀に入って間もない八重山諸島沖で、惨劇は突然その幕を開けた。総工費20兆円をかけて建設中だった巨大海洋情報都市 ”オーシャンテクノポリス”が謎の発光現象とともに水没したのだ。さらに近くで操業中だった海底油田採掘基地”うみがめ2000”が 事故に巻き込まれる。しかし、それはまだ崩壊の序曲でしかなかった。調査の末、未知の”波動生命体”によって、惨劇が 引き起こされたことが判明するのだ。

 SF海洋冒険小説といったらいいだろうか。とにかく一級品のエンタテインメント小説である。上下巻で1600枚という かなりの長編だが、全く苦にならない。最初から最後まで、スピード感のある展開と、これでもかとばかりに連鎖するアクシデントと 派手なアクション。読む手を止めるタイミングに困るほどはまってしまった。はっきりいって、そこらのハリウッド映画の数十倍 は興奮したし、面白かった。
 ここであれこれ語るより、百聞は一見にしかず、とにかく読んでみてほしい。絶対に時間の無駄にはならない。ただし、 いかに頭の中で映像化できるかが評価をわけるポイントだと思うので、想像力に欠ける人には面白いかどうかはわからない。


『二重螺旋の悪魔(上・下)』 梅原克文(角川ホラー文庫)
笑い0.5点 涙2.5点 恐怖3.0点 総合4.0点
 遺伝子操作監視委員会に所属する深尾直樹は、ライフテック社で発生した事故調査のため、現地に急行した。 直樹はそこで、かつての恋人・梶知美が実験区画P3に閉じこめられていることを知る。だが、すでに現場は 夥しい血で染め上げられた惨劇の密室空間に変質していた・・・。
 事故の真相に見え隠れするDNA塩基配列イントロンに秘められた謎。その封印が解かれるとき、人類は未曾有の危機を迎える!(上巻アラスジ引用)

 梅原克文のデビュー作にして1600枚の大長編小説だ。
 3部構成になっていて、第1部を読んでいる時点では、「『パラサイト・イヴ』みたいなバイオホラーものなんだな」 と思っていた。しかし、2部になって急にSF小説っぽくなり、下巻の3部にはいるともはやバイオホラーとは言えない 全く別物のような小説になっていた。巻末に記された担当編集者による解説によると、第1部は、デビュー前に書いた中編を利用し、 それに2部、3部の書き下ろしを加えて長編にしたのだそうだ。僕としては、第1部だけでも良かったのでは?と思った。 何となくいろいろ詰め込みすぎて、無駄に長くなっている気がするのだ。
 しかし、これがデビュー作と考えると、将来が楽しみな作家だと思う。事実、2作目の『ソリトンの悪魔』は、同じく1600枚の長編で、 いろいろ詰め込んでいるが本作以上の出来になっている。


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