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SF


『アイ・アム I am.』 菅 浩江(祥伝社文庫)
笑い0点 涙2.0点 恐怖0.5点 総合3.5点
 円柱形のボディに特殊ラバーの腕。ホスピス病院で目覚めた<ミキ>は、プログラミングされた高度な知識と技術で、 難病の子供や末期がん患者たちを介護すべく活躍を始めた。機械のボディを持ったロボットの<ミキ>は、 ときおり奇妙な記憶が蘇える。それにより<ミキ>は自分が本当にロボットなのか疑問を抱き始める。

 僕はホームヘルパー2級の資格を取るために、とある老人保健施設で実習をしたのだが、本書はその実習の帰りに立ち寄った 古本屋で何気なく手にした一冊だ。介護ロボットが主人公のSFで、褥瘡(じょくそう)の好発部位とか、ボディメカ二クスとか、 声かけとか、ヘルパーの講習で習ったりまさに今、実習してきたようなことが書かれたりしていたので、非常にリアルに感じた。
 だが、ストーリー的には予想通りの結末で、少し残念だった。とはいえ、その結末に至るまでのストーリーはなかなか感動的でよかった。


『しゃばけ』 畠中 恵(新潮文庫)
笑い2.5点 涙1.5点 恐怖1.5点 総合4.0点
 江戸有数の薬種問屋の若だんな・一太郎は、極度の病弱で外出もままならない。そんな彼の店で手代として働いている 佐助と仁吉は、実は、犬神・白沢という妖怪だった。そのほかにも、一太郎の周りには、彼を守るように、 たくさんの妖怪が存在していた。
 ところが両親や手代(犬神・白沢)の目を盗んで外出したある夜、一太郎は人殺しを目撃してしまう。 その日以来、彼の周囲には、猟奇的殺人事件が相次ぐことになる。一太郎は、犬神、白沢、鳴家、蛇骨婆ら 妖怪たちの協力を得て、その事件の解決に乗り出すことにした。しかしその矢先、一太郎も命を狙われてしまう。

 日本ファンタジーノベル大賞最優秀賞受賞作。
 妖怪たちに守られる病弱な若だんな、手代として働く妖怪、菓子作りが苦手な菓子屋の跡取り、などなど キャラクターが豊富だし、連続殺人事件というミステリの要素もしっかししているし、若だんなの出生の秘密と いったストーリーも盛り込まれてたりと、受賞作だけあって結構面白いエンタテイメント小説だった。
 本書には、何種類かの妖怪が登場するが、どれも妖怪としての説明はほとんどない。著者が、説明しなくても わかるでしょと思っているのか、それとも「妖怪」ということが大事なのであって、「どんな妖怪か」ということは たいした問題でないと思っているのかはわからない。しかし、こういう普通に妖怪が出てくる小説を読むと 京極夏彦の功績は大きいなと思う。
 じっくり読むには物足りないが、通勤、通学などには最適の軽い読み物だ。通勤、通学以外にも 妖怪好き、ファンタジー漫画好きなどにもおすすめ。また、江戸の町人、商人の生活もなかなか 面白く書けているので、時代小説好きな人にもいいかも。


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