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SF


『透明人間の告白』H・F・セイント,高見浩 訳(新潮社)
 これは、今まで僕が読んだ本の中で確実にBEST5に入ります。
 透明人間になりたいというのは、誰もが一度は思ったことがあるのではないでしょうか?しかし、 この本を読むと、ちょっとその考えが変わるかもしれません。透明というのは一見便利そうですが、 透明が故に不便なことはたくさんあるのです。どう不便なのかはこの本を見てもらえばわかります。
 とにかく、ここで僕からあれこれ聞く前に、ぜひ本屋で探して読んでほしい、なければ注文してでも 読んでほしい、この一言につきます。


『笑うな』筒井康隆(徳間書店)
興奮★★☆☆☆ 笑い★★★☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 筒井康隆のショートショート集。「笑うな」とはいうものの、つい笑いがこみ上げてくる話が多い。しかも、ただおかしいだけでなく、時代を反映した社会風刺的な話もある。 時代を反映したと言っても、これは初版が1975年となっている。僕は1976年生まれだから、僕が−1歳の時の作品だ。この本は、いつものように古本屋で買ったので、 今、書店で見つかるかは知らないが、読んで損はないと思う。ただ、最近、推理小説ばかり読んでいた僕には、物足りなかった。


『心狸学・社怪学』筒井康隆(角川文庫)
興奮★★☆☆☆ 笑い★★☆☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 総合★★★☆☆
 言わずと知れた、SF界の巨匠・筒井康隆のSF短編集。タイトルを、心理学ではなく、心「狸」学に、社会学ではなく、社「怪」学にしたところに、著者のこだわりが見える。 内容もタイトルにふさわしく、「ナルシシズム」「条件反射」「ゲゼルシャフト」「ゲマインシャフト」など、心理学・社会学の用語を題名とした 作品ばかりだ。しかし、その中身は、書かれた当時、マスコミを騒がせた出来事や、現代風俗を毒をもって風刺したものになっている。
例えば、「条件反射」は、瀕死の重傷を負った男が、ブタの胃袋、イヌの心臓、ウマの肝臓をそれぞれ移植し、なんとか一命を取り留め、その結果 日常生活に、各々の動物の条件反射が現れてしまうという話だ。これにより、当時世間を騒がせていた、臓器移植について一石を投じている、とも考えられるが、 ほんとにそうなのだろうか。
だいたいこの短編集は、全体的に、猥褻で下品な表現が多すぎる。すべての話が、猥褻で下品といっても過言でないくらいだ。 読む人によっては、気分を害してしまうかもしれない。だから、あまりおすすめはしない。


『ミラーマンの時間』筒井康隆(角川文庫)
興奮★★★☆☆ 笑い★★★☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 「暗いピンクの未来」「デラックス狂詩曲」「超能力・ア・ゴーゴー」「白いペン・赤いボタン」「ミラーマンの時間」の全5作からなるSF短編集。
 「ミラーマンの時間」:顔の右半分に醜い痣(あざ)があって劣等感に悩まされていた昌夫は、ある日、痣のある右半分を鏡に押し当ててみた。その時ちょうど時計は4時を指した。すると、みるみる右半分が鏡に吸い込まれ、次の瞬間、痣のない左右対称の昌夫がそこにいた。左右対称の昌夫には 心臓が2つ、肝臓が2つアリ、さらに空も飛べるスーパーマンになっていた。その日から、昌夫はスーパーマンとしての使命を探す苦悩の生活を送ることになる。
 「超能力・ア・ゴーゴー」:音痴でおしゃれにも興味のないガリ勉の津木は、ある日、脳外科の大家である父親に 自分の脳を手術して、音痴を治してくれと頼む。そして手術後、津木は作曲も演奏も天才的にこなせるようになる。しかし、天才がゆえの、孤独な生活が待っていた。

 現実社会から遠く離れていて笑える短編集だ。筒井さんのSF小説は何冊か読んだが、これが今のところ一番面白かった。ただ、初版が昭和52年と、ちょっと古く作品中に少年が未来に飛ばされるシーンがあるのだが、その時飛ばされた先が昭和63年なのだ。 昭和63年といえば、もう過去なので、ちょっとSFっぽくなくなってしまっている。でも、それはそれとして、面白かったりするのだが。


『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』 フィリップ・K・ディック(ハヤカワ文庫)
笑い★☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 恐怖☆☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 <最終世界大戦>により、地球は放射性降下物、<死の灰>に覆われてしまった。そのため大半の人間は、火星へと移住した。しかし、火星へ移住をする事を許されない一部の 特殊者や、一部の人間は、死の灰に覆われた地球で暮らしていた。<死の灰>により、ほとんどの動物が絶滅していた地球では、生きている動物を飼うことが一つのステータスとなっていた。 人工の電気羊しか持っていないリック・デッカードは、いつか本物の動物を手に入れたいと思っていた。そんなとき、火星から8人のアンドロイドが地球に逃亡したとの知らせが入る。 バウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)のリックは、そのアンドロイドの首にかかった莫大な懸賞金を狙って、アンドロイド狩りを始めることになった。

 難しい。面白いのだけど難しい。やっぱり翻訳物は原文で読まないと醍醐味が半減してしまうみたいだ。といっても僕は原文では読めないので仕方ないけど。このところSF小説 を全く読んでいなかった、それどころか時代小説ばかり読んでいたため、頭の方がついていけなかったみたいだ。でも、ここに書かれている未来が現実となったらイヤだなぁ。 でも、もし核戦争なんかが起こったら地球はこんな世界になってしまうんだろうなぁ。そうそう、この『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』は、映画化されているのだそうだ。 映画の題名は「ブレードランナー」というそうだ。僕はまだ見たことがないので、近いうちに見たいと思う。やっぱり映画は原作読んでから見なきゃね。


『串刺し教授』 筒井康隆(新潮社)
笑い2.0点 涙0点 恐怖1.0点 総合2.5点
 計17作からなる短編集。
 どれもが短すぎて、あらすじが書けない。さらに、本書のジャンルもわからない。とりあえずはSF のコーナーに置くことにする。
 はっきりいって訳が分からない。面白い面白くないというそういうレベルではなく、僕には理解 できない作品が多かった。理解しようとすると、頭がショートしておかしくなりそうな気がする。 それがねらいなのかどうかは知らないが、この短編集を書いた筒井氏の頭の中は、どうなっているのだろうか。 そんなことを考えさせられた作品だった。


『午後の楽隊』 眉村 卓(講談社)
笑い2.5点 涙0点 恐怖1.0点 総合3.5点
 「知りつくした街」「むこうの機械」「鍵束の中に・・・」などの他計38編のショートショートが収録されている。
 「知りつくした街」:小川正樹は、ふとした思いつきで子供の頃に遊び回った家の周辺を、 自転車で見に行くことにした。おぼろげながら記憶にある町並みを走るうち、長年住んでいながら、今までに全く見覚えのない 道に出てしまった。最初は、喜々として走っていた彼だが、次第に言いようのない恐怖を感じ始めていた。
 「鍵束の中に・・・」:浅川は、ある日自分の鍵束の中に、見たことのない鍵が混じっていることに気づく。 実は、金属製でもプラスチック製でもないその奇妙な鍵は、どんな鍵穴にも合う魔法の鍵だった。

 中学の頃、星新一のショートショートを読みあさってからというもの、SFショートショートは全くと言っていいほど 読まなかった。久しぶりにショートショートを読んでみたが、やはり物足りない。1話平均4ページくらいしかないという 物足りなさもあるが、それ以上に、書かれた時代とのギャップがあり、現代の方がよっぽどSF的になってしまっている、 ということも物足りなさの一因である。話の中で”映話”というテレビ電話のようなものがでてくるが、 今では普及こそしていないものの、もう実物が売っている。宇宙旅行も、お金さえあれば可能になりつつある。 ただ、タイムマシンや宇宙人との交流など、まだSFとして読めるものも多数ある。


『地球になった男』 小松左京(新潮文庫)
笑い2.5点 涙0点 恐怖0点 総合3.5点
 「コップ一杯の戦争」:日本人サラリーマンが、核ミサイル戦争の戦況を居酒屋で酒を 飲みながら、ラジオで聴いていると・・・。
 「紙か髪か」:もしもある日突然、この世から「紙」が消えたら・・・。
 「御先祖様万歳」:山奥の村にある洞窟は、百年前の江戸時代につながっていた。
 「地球になった男」:もしも、自分のなりたい物や人に何でも変身できる能力を持っていたら・・・。
 「蜘蛛の糸」:芥川龍之介が書いたのとは、違う世界の「蜘蛛の糸」の話。
以上のほか、「日本売ります」「オルガ」「ぬすまれた味」など計13作からなる短編集。

 星新一とSF界の双璧をなす小松左京のSF短編集。
 SFといっても、宇宙人やらロボットが登場するようなガチガチのSFではなく、日常の生活のそばにあるSFといった感じなので、 とても読みやすい。全体的にユーモアに富んでいて、普段SFを読まない人でも、抵抗なく読めると思う。


『家族八景』 筒井康隆(新潮文庫)
笑い1.0点 涙1.5点 恐怖2.0点 総合4.0点
 「無風地帯」「澱の呪縛」「青春讃歌」「水蜜桃」「紅蓮菩薩」「芝生は緑」「日曜画家」「亡母渇仰」の計8作からなる連作短編集。
「無風地帯」:人の心を読むことができるテレパシーの能力を持った火田七瀬。彼女がお手伝いさんとして 雇われることになった尾形家は、一見平和な家庭だった。しかし、彼女が彼らの心の中を読むと、そこには、憎悪・軽蔑・猜疑に満ちていた。
「水蜜桃」:七瀬がお手伝いさんになった桐生家。その主人は定年退職して以来、家族から邪魔にされ、 悶々とした日を送っていた。そしてついに、その攻撃の矛先が七瀬に向かう。七瀬は、自分のみを守るため、テレパシーを使い彼に対抗しようと試みる。

 人の心が読めてしまう能力を持っていたら、便利な反面、七瀬のように人間心理の深みや裏側を否応なく知ることになってしまう。精神力の 弱い人なら、すぐに人間不信や人間嫌いになってしまうだろう。  それにしても人間心理が巧みに描写されていて、とてもリアルな家族像が表現されている。読んでいくと、何となく気分が悪くなり、 滅入ってくる。それを、七瀬のキャラクターがうまく緩和してくれている感じがした。


『日本沈没(上・下)』 小松左京(光文社ノベルス)
笑い0.5点 涙2.0点 恐怖3.0点 総合4.0点
 小笠原諸島北方の島が、一夜で消えてしまった。深海潜水艇”わだつみ”で原因究明に向かった田所博士一行は、海底に驚くべき 異変を発見する。全国各地で地震と噴火が頻発する中、田所博士の指示で、政府は極秘に”D計画”なるものを進めていく。そんな折、東京を 第二次関東大震災が直撃する。

 SFの巨匠・小松左京氏のいわずと知れた傑作。昭和48年初版のSFとはいえ、今読んでも全く遜色ない。 むしろ、三宅島周辺で地震や噴火が相次いでいる現在(00/9/3)読んでみると、あながちSFとは言えないのではないか、 という気すらしてくる。それゆえ、本書には、ホラー小説並の恐怖点を付けてみた。
 SFとして確かに面白かった。しかし、日本を沈めるためには、それなりの原因が必要で、その原因を説明するために、 難解な地学用語が頻出し、かなり読みづらかった。不本意ながらあまりに難解なので、所々とばして読んでしまった。
 上下2巻というかなりのボリュームと、専門用語が頻出することを念頭に置いた上、未読の方は読んでみて下さい。


『七瀬ふたたび』 筒井康隆(新潮社)
笑い1.0点 涙2.0点 恐怖1.5点 総合4.0点
 「邂逅」「邪悪の視線」「七瀬時をのぼる」「ヘニーデ姫」「七瀬森を走る」の計5編からなる連作 短編集形式。
 「邂逅」:ある夜、20歳になった七瀬は、乗客もまばらな汽車に乗っていた。 その時彼女は、乗っている汽車が崖崩れで脱線する夢を見た。気になった七瀬が、テレパスで他の乗客の心を読んでいると、 自分と同じ能力を持った少年と、予知能力を持った青年の存在を知るのだった。
 「ヘニーデ姫」:とある外国で知り合った女性と帰国中の機内で、七瀬は超能力者に 強い殺意を抱く人物の存在を感じた。しかし、相手は、意識に殻をかぶせているため心を読むことができない。 命の危険を感じる七瀬がホテルに戻ると、以前知り合った予知能力者が七瀬のもとを訪れ、暗殺者が 近くにいることを警告した。

 精神感能力(テレパシー)、予知能力、透視能力(クレア・ヴォヤンス)、念動力(テレキネシス)、 時間旅行者(タイムトラベラー)といった様々な種類の超能力者がたくさん登場し、活躍するSF小説 である。前作『家族八景』よりも、エンタテイメント性が強くなっている。
 全体的にうまくできていて面白かったのだが、読後が重苦しくやるせない感じになるので、その点が 僕にとってはマイナスだった。


『空想科学への大冒険 透明人間の作り方から絶滅動物の再生まで 未来科学研究所編(青春出版社)
笑い1.5点 涙0点 恐怖0点 総合4.0点
 「宇宙移住計画」「絶滅動物再生」「不老不死」「透明人間」「人工冬眠」「サイボーグ」「宇宙旅行」 「架空動物製造」「人格改造」「タイムトラベル」「空飛ぶ円盤」「人工知能」の計12のテーマについて 最先端の科学技術を紹介しつつ、実現の可能性について割と真面目に検討している。
 例えば「不老不死」は、癌細胞を構成している”不死化細胞”に着目した細胞レベルで 検討したり、「透明人間」では、ペンタゴンが開発しているのではないかという ”カモフラスーツ”などを紹介したりと、こういった類の本にありがちな怪しさも多少あるが、全体的には、 実現するのではないかと夢を見させくれる本だった。


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