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プロレス



『反骨イズム 長州力の光と影』辻義就(アミューズ・ブックス)
興奮★★☆☆☆ 笑い★☆☆☆☆ 涙★★★★☆ 総合★★★☆☆
 この本は、今年の1月4日に引退してしまったプロレスラー・長州力の半生を飾らずに書いたものです。書いたのは、テレ朝のアナウンサー辻さんです。 辻アナの世間での知名度はどのくらいかは知らないけど、プロレス界(特に新日本プロレス)では知らない人はいないでしょう。

 タイトルにある「光と影」の、「光」はいわゆる、今までマスコミで伝えられているレスラー長州力の顔。「影」は、在日韓国人二世・郭光雄の顔のことだそうです。 長州力を知っている人にとっては、知られざる長州力の姿やその他貴重な写真、藤波やマサ斉藤が語る長州など見所満載です。長州力を知らない人は、レスラー長州力 としてではなく、在日韓国人二世・郭光雄としての半生を読んでほしいですね。


『リングの外も危険がいっぱい』田中秀和(三一書房)
興奮★★★☆☆ 笑い★★★☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 総合★★★☆☆
 この本の著者は、新日本プロレスをちょっとかじったことのある人なら誰もが知っているであろう人なのだ。「田中秀和」愛称 「ケロちゃん」。この人こそ、新日本プロレスいや、プロレス界一有名なリングアナウンサーなのだ。プロレスを知らない人のためにちょっと一言。 リングアナウンサーとは、「赤コーナーより○○選手の入場です!」とか、リング上でレスラー紹介を行ったりする職業なのだ。テレビ放送ではほとんどカットされている このリングアナウンサーの仕事も、実際会場に行ってみると、とても大切な仕事なんだというのがわかる。リングアナウンサーのコールが始まると一気に会場のテンションは上がり これから始まる闘いに向けて、観る方も闘う方も気合いが入るのだ。

 さて、このようなリングアナウンサーがなぜ本を出しているかというと、実は、プロレス会場にはその日の対戦カードやその他いろんな情報が載っている「パンフレット」が販売されている のだ。そのパンフレットに、ケロちゃんは、選手と興行先を廻ったときのお話、つまり旅行記のようなものを連載しているのだ。それがある程度たまると、こうして 1冊の本にして出版しているのだ。
 内容は、はっきり言ってプロレスに興味のない人は全く面白くないものだろう。全体的に日記調で書かれていて、全国各地方の試合会場での出来事、 試合後の控え室での出来事、移動のバスでの出来事などなど、普段は見られないレスラーの1面をおもしろおかしく書いている。しかも、この本は、1992年に出版されたものなので 文中には、星野勘太郎とか、松田(エル・サムライの本名)とか山本(天山の本名)など懐かしい名前が出てきて、プロレスファンには大変面白い本だ。ただ、前述したとおり プロレスに興味のない人にとっては、なんのこっちゃわからないだろうし、全く面白くもないと思う。


『私、プロレスの味方です』村松友視(角川文庫)
興奮★★☆☆☆ 笑い★★★☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 総合★★★☆☆
 「プロレス」というジャンルを設けたからには、この本を読まないわけにはいかないでしょう。プロレスファンにとって、この本はそれほど有名な存在だと思う。

 この本で話題に上がっているレスラー(例えば、フィリッツ・フォン・エリック、ビル・ロビンソン、タイガー・ジェット・シンなど)は、ほとんど今、テレビや会場で見ることはできない。つまり、 昔のレスラーばかりなのだ。だから、ここ数年で急激にプロレス狂となった僕には、なじみがない人ばかりなのだ。だから、僕は、いまいちこの本の醍醐味を感じることはできなかった。

 しかし、「プロレスは、プロのレスリングではない。・・・プロレスとは、プロレスとしか呼びようのない」ものなのだ、という著者の言葉は妙に印象深かった。
 まあ、プロレスに興味のある人は読んでみたらいいと思う。


『仰天・プロレス和歌集』夢枕 獏(集英社文庫)
興奮★☆☆☆☆ 笑い★★★☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 総合★★☆☆☆
 古本屋で偶然見つけ、なにやら珍しいので買ってみたが、はっきりいって面白くない。
 まず第一に「和歌集」と銘打っておきながら、その大部分が五七五七七の定型から外れていて、単なる「ひことこ」集、または「ボヤキ」集 になっている。
 第二に、一句ごとに付いている解説が、変に芝居じみていて、しゃべり口調で、不自然なのだ。もしかすると、著者は、ラジオのDJかなんかの設定なのかもしれないけど ちょっといただけない。
 でも、いくつかこれは上手いという句(?)があったので挙げてみる。
「社長を殴って銭を稼げる商売が他にあるか」
「このマスクよりも派手な技で勝たねば許してくれない観客がおそろしい」などなど。


『16文の熱闘人生』ジャイアント馬場(東京新聞出版局)
興奮★★★☆☆ 笑い★★★☆☆ 涙★☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 これは、全日本プロレスの会場で買った本だ。しかも、その場でジャイアント馬場本人にサインまでしてもらったサイン本なのだ。といっても、試合会場でG・馬場関連グッズを買った人は誰でも G・馬場のサインをもらえるのだが・・・。

 以前は、テレビで関根勤とかに真似されるコミカルで頼りなさそうな馬場、それと現在もリングに上がっているスローモーな馬場、のイメージしかなかった。 しかし、この本を読んで僕のG・馬場に対する考えは大きく変わった。G・馬場はすごい人なのだ。偉大な人なのだ。還暦すぎても現役でがんばっている ことも確かにすごいが、そこに至るまでの過程が偉大なのだ。

 ほとんどの人は知らないと思うが、G・馬場は、昔ジャイアンツのピッチャーだったのだ。一軍で投げたのは3回しかないそうだが、二軍では、2年連続 最優秀投手に選ばれた野球人だったのだ。しかし、けがに泣き、夢半ばにして引退した。その後、力道山に弟子入りしプロレスの道へ。そして、アメリカ遠征し 極貧の生活と地獄の特訓に耐え、数年後には、メーンイベンターにまで登りつめる。しかし、その遠征中、力道山の死を知り帰国。そして、日本プロレスを 経て、独立し全日本プロレスを設立し、現在に至る。
 全体に、馬場さんの優しさとエネルギーが漂う本である。一般の書店ではあまり見かけないかもしれないが、これはぜひ読んで欲しい一品だ。


『烈闘生 傷だらけの履歴書』武藤敬司・蝶野正洋・橋本真也(幻冬社)
笑い3.0点 涙0点 恐怖0点 総合3.0点
 プロレス好きの人なら誰もが知っている、新日本プロレスの”闘魂三銃士”(武藤敬司・蝶野正洋・橋本真也)。本書は、彼らの7時間を超える ロングインタビューをもとにして書かれたものである。内容は、それぞれの子供の頃の話や、中学・高校での話、プロレス界に入ったきっかけ、 そして今後のことなど様々な、そして貴重な話が満載である。これを読めば、よりプロレスが面白くなるし、彼らの意外な一面や性格も垣間見ることが出来る。 ただし、「プロレスなんか興味ない」という人にとっては、何の面白味もない本である。しかし、プロレスに少しでも興味のある人ならば、そして、武藤敬司・蝶野正洋・橋本真也 のうち一人でも名前を聞いたことがある人ならば、楽しめること請け合いである。


『君はまだプロレスを知らない』馳 浩(PHP文庫)
笑い2.5点 涙0点 恐怖0点 総合3.0点
 本書の著者である馳浩という人は、元国語教師であり、参議院議員であり、現役プロレスラーでもある。数年前までは、 アントニオ猪木率いる新日本プロレスで活躍していたが、今では故・ジャイアント馬場が設立した全日本プロレスの選手になっている。
 そんな波乱に満ちた経歴を持っている元教師の議員レスラーが、自らが主戦場とするプロレスについて、様々な角度から書いている。 たとえば、「プロレスラーの私生活」「プロレスラーの趣味」「必殺技誕生秘話」「レスラーの下積み時代」などプロレスラーだから書ける 興味深い話の連続である。
 例によって、プロレス嫌いの人には面白味に欠けるが、プロレスファンならば馳ファンならずとも読むべき一冊であろう。


『マッチメイク』不知火京介(講談社)
笑い1.5点 涙1.5点 恐怖0.5点 総合3.5点
 新大阪プロレスの会長であるダリウス佐々木が、タイガー・ガンジーとの試合中に、ガンジーの凶器攻撃によって流血し倒れ、 そのまま起き上がることなく死亡した。検死の結果は毒殺。しかも毒物が検出されたのはガンジーの凶器ではなく、 ダリウス佐々木が隠し持っていた猫爪カッターだった。果たしてこれは自殺か他殺かなのか?

 第49回江戸川乱歩賞受賞作。
 僕はまだ未読なのだが、長年、新日本プロレスのレフェリーを勤めてきたミスター高橋氏が『流血の魔術 最強の演技―すべてのプロレスは ショーである』というプロレス界のタブーを暴露する本を出版し、話題を呼んだことがある。そのタブーの一つが、 「マッチメイク」だ。つまり、プロレスには筋書きがあって、その筋書きの中で観客を興奮させ、感動させ、魅了する。 プロレスは完成されたエンタテイメントであり、ショーであるというもの。
 僕は、数年前までよくプロレスをテレビで見て、雑誌で見て、会場に足を運んで見たりもした。その時は、レスラーによっては、 この技の次にはこの技を出すというパターンもあったし、相手もあえてその技を受けるというシーンもよく見た。しかし、 勝敗まで決まった筋書きがあるとまでは思ってもみなかった。だから、「マッチメイク」の暴露はショックだった。
 しかもジャイアント馬場亡き後、三沢は全日本を脱退し新団体を設立。武藤は新日本プロレスを脱退し全日本プロレスの社長に。 橋本も新団体設立。とプロレス界はゴタゴタし始めて、僕のプロレス熱は一気に冷めて行った。今ではほとんど見ていない。
 と、プロレスについて語ると長くなるので、この辺で本書の感想に移ろう。
 主人公は、新大阪プロレスの新人レスラー山田聡。そのほかの登場人物は、長州や藤波、坂口、猪木などをモデルにしたと思われる レスラーばかり。ただ、一昔前のプロレスという感じがする設定だ。
 ミステリーではあるが、非常にプロレス色が濃く、プロレスを知らない人はちょっと読みづらいかもしれない。僕は、 プロレスもミステリーも好きだが、ある人物の殺害方法はわかりにくかったし、ラストのゴタゴタした感じもあまり 良いとは思えなかった。試合シーンやレスラーが鍛えられていく様子などは、リアリティがあって面白かっただけに、ちょっと 残念な感じはした。次回作は、プロレス小説、格闘技小説を書いて欲しい。


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