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ノンフィクション


『この日本をどうする−再生のための10の対話−』石原慎太郎(文藝春秋)
笑い0.5点 涙0点 恐怖0点 総合4.0点
 平成11年1月〜平成12年10月までに行われた都知事・石原慎太郎と11人の対談。対談タイトルと対談者は以下の通り。
 「「言語空間」をブチ破れ!」     vs西村真悟
 「逆襲せよ、日本!」         vs石原伸晃
 「誰が国民を守るのか」        vs金美齢・志方俊之
 「都政という恋愛小説」        vs福田和也
 「東京は永遠の首都だ」        vs日下公人
 「新債券市場構想とナスダックジャパン」vs孫正義
 「子供を救え」            vs白井智子
 「法華経を生きる」          vs松原泰道
 「「自力」か「他力」か」       vs五木寛之
 「政治家は体の中に国家を持て」    vs中曽根康弘

 だいぶ前、SMAPの草なぎ剛が韓国でスターを目指すとういうような番組を見て、韓国の青年は ある年齢になったら一定期間軍隊に入る(兵役拒否もできるようだが)ということを知った。そして、入隊している 韓国人の青年はインタビューの中で、「日本の若者は国のために何をしているのか?」という発言をしていた。それを 聞いて僕は考えて込んでしまった。日本には、選挙も行かず、日本の行く末など無関心で、愛国心などとは程遠い若者がほとんど なのではないだろうか。
 そんなことを思いながらこの本を読んだ。専門的で難しいところもあったが、読んでいて目が醒めるような気分だった。 ちょっとした言葉じりをとらえて批判したり、諸外国の機嫌をうかがうばかりで何もしない政治家やマスコミに惑わされず、 本当に日本を良くしようと思っている人は誰か、を国民は見極める力が必要だなと思った。
 「憲法は破棄して、新憲法を起草したらいい」「黒船のような衝撃、外圧がないと日本人は絶対に変わらない」 「アメリカ信仰もいい加減にやめるべきだ」など、少々過激だったり右寄りの発言などもあったが、印象に残った一冊だった。


『くたばれ!自民党〜13の症候群〜』鎌田 慧(アストラ)
笑い0点 涙0点 恐怖0点 総合4.5点
 ゼネコン・大企業のための政治、憲法改悪の動き、少年・老人・福祉の切り捨て、二世議員による国会の幼稚園化、 666兆円もの債務などなど、自民党の13の問題点・悪事を怒りとともにわかりやすく解説している。

 タイトルの勢いそのままに、終始、怒りの論調で書かれている。
 本書によると自公保の与党はダメ、野党も骨抜きで頼りにならないという。じゃあ誰に政治を任せればいいというのか。 「とりあえずは、政党にまかせるのではなく、身近な市民運動や地域の労働運動や農民運動をひろげ、護憲・環境・福祉の ネットワークを強めるしかない」と著者は言っているが、それで国を動かすには限度があるだろうと思うが。
 すべての政治家が国を良くすることだけを考えている清く正しい人々ばかり、なんていう理想郷のような国はありえないと思う。 だからロクでもない政治家がいることには多少は目をつぶるから、誰を信じていいのか、どの部分はまだ救いようがあるのか、 というようなことも書いて欲しかった。
 この著者はガイドライン・盗聴法・「日の丸・君が代」法などたくさんの例をあげ、日本は戦前回帰路線を走っている、 行きつく先は平和憲法の改悪だというようなことを言っている。また、”子供に奉仕活動を義務付けるのは徴兵制復活の 滑走路だ”とか”戦争はいつも自衛のためといういいわけからはじまる。自衛隊は「自衛」するだけなら必要のない 兵器も購入している”など印象的な発言も多くあった。
 先に読んだ石原都知事の本とは部分的に対極ことを言っていたりして、両方とも「なるほど」と思っただけに、どちらを信じていいのか わからなくなってきた。ただひとつハッキリわかったのは、「金がすべて」という社会をつくった自民党はくたばれ!ということだ。


『地球は「沙漠」という資源をもっている』SRG研究会・監修/柴野利彦・著(ダイヤモンド社)
笑い0点 涙0点 恐怖0点 総合4.0点
 21世紀後半には、現在の世界の人口は2倍の120億人に膨れ上がると予測されている。その時、飢餓や病気や貧困が この地球を襲う。悪いことは重なるもので、それと同じ頃に化石燃料の枯渇も訪れる。さて、「エネルギー」をどうする、 そして「食糧」をどうする――
 本書は私たちの眼前に横たわる最大の難問に、正面から取り組んだ技術者たちの物語である。(本書あらすじ引用)

 SRGとはシルクロード・ジェネシスの略称。そしてこの本を監修しているSRG研究会が目指しているSRG構想とは、 ”中国の沙漠に太陽光発電基地を建設し、そこで得られたエネルギーを利用し、地下の水を汲み上げ灌漑して、野菜や牧草を 育てる”という計画だ。これにより無電化だった農村に産業を興させ雇用を創出、さらに余剰電気を売ることで貧困を 改善する。という遠大な計画なのだ。
 これがうまくいけば沙漠化はくい止められるし、石油や石炭などの有限の燃料に頼る必要がなくなり、太陽光によるクリーンな エネルギーのおかげで大気も汚染しなくてすむ。さらに人口増加による食糧問題も解決する。一石ニ百鳥くらいの効果があるようだ。
 本書を読んで知ったのだが、「沙漠」といっても見渡す限り”砂”ばかりというわけではないのだという。年間を通じて降雨が少ない荒地を 「沙漠」といい、そこに「砂沙漠」も含まれている。そして、この計画を進める中国の沙漠は、地下2〜3メートルのところに 地下水があることが多いのだそうだ。
 中国の問題だから関係ない、という考えはどうやら間違っているようだ。SRG構想は大気汚染・エネルギー問題・食糧問題などアジアという 枠をも越え、地球レベルで考え、進めていくべき計画だと痛感した。


『この一秒−極限を越えた十人の物語』畠山直毅(NHK出版)
笑い0.5点 涙3.5点 恐怖0点 総合4.5点
 「浪花デン助ブルース」:『タイム』誌で「21世紀最も影響力のあったアジアの20人」に選ばれた 井上大佑。彼はカラオケを発明した男だ。だが特許をとっていなかったのだ…。そんな彼の半生。
 「九十三点目の奇跡」:122対0というギネス級の大敗をした深浦高校野球武の話。
 「看守と十三階段」:名古屋刑務所の看守・板津秀雄が経験した、死刑囚との出会いと別れ。
 「踊り続けたマハラジャ」:インド映画『ムトゥ踊るマハラジャ』を日本で上映すべく奮闘した映画評論家・ 江戸木純の話。
 「独房のシャドウボクシング」:刺青をしたボクサー・大嶋宏成がボクサーになるまでの経緯。
 「新宿ナポレオン」:13年間、1日3,4時間の睡眠で働き続けた「新宿の居酒屋王」太田篤哉の話。
 「平成・野球狂の詩」:松坂投手と投げ合うことを目指す女性。明治大学野球部・小林千紘の話。
以上のほか「ひとりだけの水神祭」「ゴビの魔法使い」「凶弾の残像」を含む計10編からなる短編集。

 誰もが経験する人生の分岐点。本書ではそうした分岐点となる瞬間、そしてそこに至るまでの物語を描いたノンフィクション・ノベルである。
 文章は読みやすく、長さも手ごろ、取り上げる人物も魅力的で、とても面白い短編集だ。
 ここに出てくる人物、出来事は、「聞いたことがある」「知ってる」という人が多いかもしれない。でも、その背景にはこれほどの感動や 苦労があったことは知らない人がほとんどだろうと思う。『ムトゥ踊るマハラジャ』が上映されるまでにこんなことがあったとは。 まだ見ていない僕は今更ながら見てみようかな、と思ったほどだ。また、逆に世間的には知られていない所にも、物語は埋もれている。たとえば「看守と十三階段」 「ゴビの魔法使い」などはとても感動的で考えさせられる話である。
 おすすめの一冊。


『テレビを面白くする人、つまらなくする人−口外禁止のテレビの法則−』
放送作家A(日経BP社)
笑い1.0点 涙0点 恐怖0点 総合3.5点
『日経エンタテインメント!』1997年4月号〜2001年5月号に連載されていた「テレビの法則」をまとめた一冊。
 この内容では仮名での執筆もやむを得ないかなと思う。それほどテレビ業界の裏側を暴露しまくっている。

 最近テレビがつまらない。ドラマは久しく見てないし、バラエティも素人が出るものばっかりだし、情報バラエティも似たような テーマが多いし。でも、その裏側を知れば少しは楽しくなるかなと思い、この本を借りてみた。ところが逆にテレビって真面目に 見るものじゃないなと思うようになってしまった。まあ、「テレビは愚民化の道具」という人もいるくらいだから、 無理して見る必要はないのだ。でも、一方ではブラウン管にうつらない制作レベルの人たちは大変そうだな、 そういう多くの苦労のもとに番組ってできているんだなぁと実感した。
 本書の内容で興味深かったのは金銭の問題、素人出演の問題、ヤラセの問題についてだ。例えばゴールデンタイム1時間を 1回制作するのにドラマで平均4千万円、バラエティでも2千万円かかる。中継を1ヶ所入れると200万円以上かかるとか。 1万人以上の登録者がいる「素人バンク」があるとか。素人が出ているドキュメンタリータッチのバラエティ「○○」や「△△」( 本文中では実名は挙げていないが読めばすぐわかる)も実は台本があるとか。某クイズ番組は出演者によっては事前に 答えを教えてもらっているとか。
 テレビ業界に興味がある人、テレビ業界で働こうと思っている人は必見なのでは?


『ロケットボーイズ(上・下)』ホーマー・ヒッカム・ジュニア/
武者圭子訳(草思社)
笑い2.0点 涙4.0点 恐怖0点 総合5.0点
1957年、ソビエトの人工衛星スプートニクが、ウエストヴァージニア州の小さな炭鉱街の夜空を横切った。 その輝きに見せられた落ちこぼれ高校生のホーマーは決心した。”ロケットを作ろう!”と。 友達を数人誘い、ロケット作りが始まった。
 度重なる失敗にも、父の猛反対や町の人々からの嘲笑にもめげず、ホーマーらはロケットの試作を続けた。そして、 奇人だが頭の良い同級生を新たに仲間に加えた彼らは、いつしか「ロケットボーイズ」と呼ばれ、町の人気者になっていく。 しかし、炭鉱の監督であるホーマーの父は決して認めようとはしなかった。

 のちにNASAのエンジニアになったホーマーの高校三年間を描いた自叙伝。
 ホーマーが「ロケットを作ろう」と提案したときに、無理だと反対したり馬鹿にしたりすることのなかった仲間たち。 頭ごなしに反対せず、子供の夢を尊重し支持した良き理解者の母親。その他、ロケットの製作をかげながら手伝う抗夫や、 科学フェア参加を校長に直訴したライリー先生など、ホーマーをとりまく人々がとても魅力的である。もちろん反対する人や、 アメフト選手の兄だけを誇りに思っている父親など、ロケットボーイズの前に立ちふさがる人々もいる。こうした人間関係が とてもよく描かれているのだ。
 本物のロケットを高校生が作るという発想もすごいが、それはやはり広大な国土や、ソ連と競っていたという国情、そして ロケットの材料が手に入りやすい炭鉱町という環境が大きく影響していたと思う。狭い日本じゃ、ペットボトル・ロケットが 関の山だろう。
 「失敗は恥ではない」「夢を持ち、育てていこう」「出会いを大切に」など多くの学ぶべきことがこの本にはある。 中高生や子供を持つ親御さんには、とくに読んで欲しい一冊だ。
 ちなみに本書は、映画化され『遠い空の向こうに』という邦題で公開された。


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