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島田荘司


『眩暈』 島田荘司(講談社ノベルス)
笑い1.0点 涙2.0点 恐怖2.5点 総合3.5点
 「占星術殺人事件」を愛読する青年の戦慄すべき日記。そこには荒涼たる世界の終焉が広がり、切断された男と女が合成され、 両性具有者となって彼に語りかける。醜悪な現実と蠱惑の幻想世界が今、驚天動地のトリックによって大いなる融合を果たす――。 (本書あらすじ引用)

 久しぶりに御手洗潔シリーズを読んだ。そのせいかどうか分からないが、御手洗の奇人さに辟易してしまった。どうやら彼に対する 認識が薄くなり、免疫力が低下してしまっていたようだ。また、今回の内容が、少々グロテスクな面があり、そういった意味でも、 途中で読むのがイヤになってしまった。よって今回は、低得点にした。


『新・異邦人の夢』 島田荘司(徳間文庫)
笑い2.0点 涙1.5点 恐怖0点 総合3.5点
 1984年から、島田荘司先生が様々な新聞・雑誌に載せたエッセイを収録したエッセイ集。その内容は、 音楽・ロンドン滞在記・占星術講義・身辺雑記・旅・自動車・パリダカールラリーなど様々なジャンルのエッセイが収められている。 全体的にミステリに関するエッセイは少ないが、島田荘司という人を知るには、最適の一冊だと思う。ただ、パリダカや車の エッセイが多く、興味のない人にはちょっと退屈なのではないかと思う。
 そんないろいろなエッセイがある中で、面白い趣向のエッセイがあった。それは、「島田荘司研究」という同人誌に寄稿された、 「吉敷竹史のホロスコープ」「加納通子のホロスコープ」というエッセイだ。その名の通り、島田作品において、御手洗潔と対極の 性格を持つ「吉敷竹史」のホロスコープを載せ、それについて解説したものだ。これは一見の価値があるかも。


『龍臥亭事件(上・下)』 島田荘司(カッパ・ノベルス)
笑い1.5点 涙2.5点 恐怖2.5点 総合4.5点
 御手洗潔が日本を離れて1年あまり経ったある日、彼の友人兼助手の推理小説家・石岡和己のもとに、一人の女性が訪ねてきた。 二宮佳世というその女性は、彼女に憑いている悪霊を祓うために、岡山県の山奥に一緒に行ってほしいのだという。そして、そこにある大樹の 根本に埋まっているはずの「人間の手首」を掘り出し、供養しなければならないという。
 彼女に連れられ、岡山県の山奥をゆくと、そこには龍臥亭という奇怪な旅館が待ち受けていた。そして到着して早々、彼らは殺人事件に 巻き込まれる。この時から凄惨で謎めいた連続殺人事件の幕が開ける。

 二千枚を超す、大長編本格ミステリ。今回は、御手洗潔の出番はゼロに近い。推理・解決役は、いつもは助手の石岡和己が担当している。 御手洗ほどの頭のキレがないので、これほど長編になったのかもしれない。でも、いつもは頼りなく思える石岡が、今回は非常に頼もしく 見えた。
 上巻は、普通の本格ミステリだが、下巻になると、実際にあったある事件の記録という色彩が強くなる。あとがきによると、ある意図があって その記録を書いたようである。この記録があることで、本書は、単なる本格ミステリではなく、社会派ミステリの要素が加わった本格 ミステリになっている。
 かなり猟奇的でヘビーな内容だが、舞台設定やトリックなどは面白いし、石岡和己は珍しく大健闘するし、お薦めの一冊である。


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