森 博嗣
『封印再度』森 博嗣(講談社) |
興奮★★☆☆☆ 笑い★☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 熱中★★★★☆ 総合★★★☆☆ |
岐阜県の香山家には、不思議な家宝がある。その名は「天地の瓢(コヒョウ)」と「無我の匣(ハコ)」。
「天地の瓢」は、鍵が入った壺なのだが、その鍵は、口よりも大きく取り出すことはできない。一方「無我の匣」は、鍵がかかった小箱で、その鍵は、
「天地の瓢」に入っているのだ。鍵は壺を割れば取り出せるのだが、この家宝を残した香山風采は、割らないで出せと遺言し自殺したのだ。
しかし、その自殺も謎に包まれている。凶器もないうえ、部屋の中から鍵がかかっていて密室状態、そして、死体の傍らには血が付いた「天地の瓢」
と、血の付いていない「無我の匣」があった。
「封印再度」と「WHO INSIDE」をかけていて、うまい!と唸ってしまった。内容も、申し分なく、「天地の瓢」「無我の匣」の仕組みを明かすラストは
とても面白い。しかし、ちょっと気になる点もあった。まず、会話が不自然。全体的には、自然なんだけど、所々おかしい点がある。まあ、
僕だけがそう感じるのかもしれないけど・・・。そして、比喩的表現が多すぎる。なんか、無理矢理洒落た例えを用いているような気がして、
違和感を感じた。まあこれも、僕だけがそう感じているのかも・・・。他にもいろいろ気になる点はあったけど、僕は古本屋で買ったからあまり、文句はイエナイ。
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『すべてがFになる』森 博嗣(講談社) |
興奮★★★★★ 笑い★☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 熱中★★★★☆ 総合★★★★★ |
14歳の時、両親殺害の罪に問われ、その後、精神の問題により無罪とされた四重人格者の天才プログラマ・真賀田四季。彼女は、その一件以来、外界との交流を絶つように
孤島の研究室に閉じ籠もった。ひょんなことから西之園萌絵と犀川創平(主人公・探偵役)は、その真賀田博士の研究所を訪れることになった。そして、真賀田博士の部屋に入ろうとした瞬間
部屋の中から、ウエディングドレスを着た女性が進み出てきた。しかし、その女性は、すでに死んでいて、部屋の中にあるコンピュータには、「すべてがFになる」という謎の言葉が残されていた。
チャット・電子会議室・ヴァーチャルリアリティ・コンピュータウィルスなど、コンピュータ用語が頻繁に登場する。このページを見ることができる皆さんには簡単かもしれないけど、コンピュータとは縁遠い人
にとっては、ちょっと難しく感じるかもしれない内容だ。しかし、死体の登場シーンや、事件の真相はまさに衝撃を受けるに十分なので、コンピュータが苦手な人も、是非読むべきだと思う。
この作品は著者・森博嗣氏にとって、デビュー作(?)にあたるようだ。だから、まだちょっとレギューラー陣のキャラクターが確立されてなくて、個性が弱い気がした。それでも
久々に★5つ付けるくらいの面白さだった。 |
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『幻惑の死と使途』森 博嗣(講談社) |
興奮★★★☆☆ 笑い★★☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 熱中★★★★☆ 総合★★★★☆ |
その昔、一世を風靡した天才奇術師・有里匠幻(アリサトショウゲン)は、とある公園で、TVカメラと大衆が見守る中、大掛かりな箱抜けマジックを試みた。そして無事、箱から脱出し
その衆人の前に現れた彼の胸にはナイフが刺さっていた。さらに、数日後に行われた彼の葬儀の途中、今度は、有里匠幻の遺体が、見事に喪失してしまった。警察もお手上げなこの謎を、西之園萌絵と犀川創平が解明する。
森博嗣の作品は、本当に凝っていると思う。まだ三作品しか読んでないから、大層なことは言えないが、まずタイトルが凝っている。今回も「死と」と「使途」とかけてみたり、「封印再度」と「WHO INSIDE」をかけてみたり、
とにかくちょっと捻ってあったり、あまり推理小説っぽくないタイトルばかりだ。僕は、『〜〜殺人事件』みたいな、モロ推理小説というタイトルの本はあまり好きではないので、その点ではとても森氏の作品はよい。
そして、各章のタイトルも凝っている。今回は、「奇趣の予感」「奇絶の舞台」「奇怪な消失」・・・というように、すべて「奇」から始まっている。そして、もちろんトリックも凝っている。でも、なんか読んだあとに物足りなさを感じてしまった。
やはり、人間の欲望は果てしなくて、前回感じたモノよりももっと高度な驚きじゃないとだめなのか。最近の推理小説のレベルが高くて、スバラシイと感じる基準が高くなってしまったのか。それともただ単に、
自分の性格がひねくれてしまって、純粋に驚けなくなったのか。まあ、いずれにしても悲しいことだ。 |
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『冷たい密室と博士たち』森 博嗣(講談社) |
興奮★★★☆☆ 笑い★☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 熱中★★★☆☆ 総合★★★☆☆ |
マイナス20度以上の温度で実験ができる極地研究所の低温度実験室。そんな閉ざされた空間で衆人環視の中、男女2人の院生の死体が発見された。
すべての出入り口はロックされており、唯一の出入り口と目されていたシャッターも故障していて使えない。つまり入ることも出ることもできない完全な
密室で殺人事件が起こったのだ。この不可解な事件を、偶然事件に関わることとなった西之園萌絵と犀川創平が解く。
極地研究所の低温度実験室という場所が特異な意外はいたって普通の推理小説。特に強烈なインパクトはない。まあ、理系の作家らしくコンピュータがよく登場するのは
異例なのかもしれないが。 |
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『今はもうない』森 博嗣(講談社) |
興奮★★★☆☆ 笑い★☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 熱中★★★★☆ 総合★★★★☆ |
嵐の中の一軒の別荘で起きた二つの密室殺人事件。双子のような姉妹がそれぞれとなりあわせの密室で、死んでいた。その日その別荘に居合わせた人たちは、それぞれ自分なりの仮説を持ち密室の
謎を解こうとする。果たして、姉妹は、自殺なのか他殺なのか、それとも事故死なのか。
今回は非常にあらすじが書きづらい。今回は、殺人事件の結末の他にもっと驚くべき結末がまっているのだ。単なる嵐の中の一軒家で起きた密室殺人事件って言うだけだったら、
今回の話は、あまり面白くない。しかし、それ以外にも大どんでん返しが待っているため、総合★4つにしてみた。あまり多くは語るまい、とにかく読んでみて。 |
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『まどろみ消去』 森博嗣(講談社ノベルス) |
笑い0.5点 涙0.5点 恐怖0点 総合3.5点 |
「虚空の黙祷者」「純白の女」「彼女の迷宮」「真夜中の悲鳴」「やさしい恋人から僕へ」「ミステリィ対戦の前夜」
「誰もいなくなった」「何をするためにきたのか」「悩める刑事」「心の法則」「キシマ先生の静かな生活」の計11篇からなる短編集。
「誰もいなくなった」:大学のミステリ研究会が企画した「ミステリィツアー」。
参加者たちは、あるアパートの屋上に案内された。そこから、近くの建物の屋上を見ると、そこには30人のインディアンが
火をかこみ踊っていた。現場に行くと、そこには誰もいなかった。人が出入りするところには、見張りが立てられていたのに、
30人のインディアンの姿を見たものはいなかったのだ。
森博嗣氏といえば、西之園・犀川コンビが活躍するシリーズが有名だが、今回は2篇のみの登場となっている。
その他の短編は、それぞれ独立したものになっている。
どれも、割とおとなしめのミステリで、すごいトリックや、凄惨な事件が出てくるわけではない。最後の一文、1ページですべてを
ひっくり返すような短編や、読んだ後しばらくして著者の意図するところがわかったりする不思議なものが多い。中でも、
「何をするためにきたのか」という短編は、不思議で奇妙な読後感だった。また、その短編の主人公の思考が、僕のと結構似ていたため、
親近感を抱き、感情移入できた。だから、全短編中でこの不思議な短編が一番好きだった。
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『笑わない数学者』 森博嗣(講談社ノベルス) |
笑い0点 涙0.5点 恐怖0点 総合4.0点 |
伝説的数学者・天王寺翔蔵博士の住む三ツ星館でクリスマスパーティーが行われる。人々がプラネタリウムに見とれている
間に、庭に立つ大きなブロンズのオリオン像が忽然と消えた。博士は言う。「この謎が解けるか?」
像が再び現れたとき、そこには部屋の中にいたはずの女性が死んでいた。しかも、彼女の部屋からは別の死体が発見された。(本書アラスジ引用)
N大教授・犀川創平と西之園萌絵のコンビが活躍する(巻き込まれる?)シリーズ第3作。
今回は、殺人事件の謎解きと共に、巨大なブロンズ像消失の謎解きも楽しめる。とはいえ、二つの謎は共に、割とわかりやすい。
しかし、物語半ばから後半にかけて次々と明らかになる人物関係が、少々複雑でわかりにくかった。そしてさらに、何かをにおわせる
ラスト数ページの意味がわからなかった。おそらく重要な意味を持っているのだろう。もしわかる人がいたら教えてほしいくらいだ。
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『数奇にして模型』 森 博嗣(講談社ノベルス) |
笑い1.5点 涙0点 恐怖0.5点 総合3.5点 |
M工業大学のある研究室で女性の死体が発見された。現場は密室になっていて、その部屋の鍵を持っている
寺林高司は、すぐ近くにある公会堂の一室にいた。最有力の容疑者である彼は、同じく密室のその部屋で、女性の
首なし死体と共に昏倒していた。この事件の真相究明に犀川・西之園コンビが挑む。
ノベルスで500ページと結構な読み応えのある小説だった。この厚さを普通に読破するだけでも疲れる。
本書は、それにプラスαの要素が加わっていて、より一層疲れる。不覚にも途中で挫折しそうになった。その要素
というのは、”登場人物たちの会話や思考が、哲学的というか詩的というかとにかく理解するのに立ち止まるようなシーン
が多い”ということだ。これが森博嗣の持ち味といってしまえばそれまでなのだけど、不自然なほどに会話は
うまくできてるし、無知なキャラが一人もいない。まあ、登場人物のほとんどが大学生や教授だから、あまり
知的レベルの低い人を設定できないのかもしれないが。少々読み疲れた。
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