宮部みゆき
『ドリームバスター2』 宮部みゆき(徳間書店) |
笑い1.5点 涙2.0点 恐怖1.0点 総合4.0点 |
「目撃者」:殺人犯の顔を目撃した理恵子は、警察に協力し、法廷でも証言をした。
そんな彼女の夢に侵入した脱走死刑囚を追い、シェンとマエストロのコンビは理恵子の”場”にジャックインした。
「星の切れっ端し」:母の治療費を稼ぐため賞金稼ぎであるドリームバスター(DB)を目指すスピナー。
彼は5回目の試験でようやく合格し、DBとなった。DBでありながら彼は、DBという存在自体に疑問を感じるという矛盾した
気持ちを抱いていた。そんな彼の最初のミッションは、シェンとマエストロのコンビと組んでの任務だった。
ドリームバスターの待望の続編。
テーラから脱走し、地球の人たちの夢に侵入した死刑囚を追いかけ捕まえる賞金稼ぎ―ドリームバスター。シェンとマエストロは
地球の中でも特に「日本」を担当するDBという設定になっている。SFファンタジーといえど、そこは
宮部みゆきで、しっかりとしたドラマを盛り込んでいて、読み応えがある。
本書で二作目だが、まだ長い物語のプロローグといった感じがする。今回も、シェンの過去が明らかになったり、
今後のストーリーに影響してきそうな新事実がいくつか出てきているのだ。”脱走死刑囚を全員捕まえて終わり”という
単純なエンディングにはならなそうな気がする。
前作から結構、時間がたってしまっているので人間関係とか用語とか忘れてしまっていた。これから「ドリームバスター」を
読もうと思っている人は、やはり第一作から読みはじめないと物語を堪能できないかもしれない。
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『ブレイブ・ストーリー 愛蔵版』 宮部みゆき(角川書店) |
笑い2.5点 涙3.5点 恐怖2.0点 総合4.5点 |
東京の下町に親子三人で暮らしている三谷亘。しかしある日、父が亘と母を捨て愛人のもとに行ってしまった。
家族をもとどおりにしたいと強く願う亘に、幻界への扉は開かれた。幻界の旅人となったワタルは、
自分の運命を変えるため、長く厳しい冒険へと旅立った。
剣と魔法の長編ファンタジー。
こんなRPGやってみたいなと思いながら宮部さんはこれを書いていたのではないかと思ってしまうくらい、
テレビゲーム色の濃いファンタジーだ。仲間を集め、魔法と剣を駆使して試練に立ち向かい、ボスを倒し、
成長していく。RPGの王道といった感じだ。登場するキャラクターも様々で、種族や宗教、街の様子や産業など
世界観もしっかりしている。ただ、あの『指輪物語』のような壮大さは感じなかった。
愛蔵版ということで、謡口早苗さんの挿絵が随所に掲載されていた。しかし、カラーは一枚だけで、あとはすべて
一色刷り。そのため、幻想的である挿絵のよさがあまり感じられなかった。もっとカラーの挿絵を載せてほしかった。
本書を読んで、映画「ネバーエンディング・ストーリー」が頭に浮かんだ。似ているわけではないのだが、
ふと思い浮かんだのだ。ワタルの冒険が書かれたこの分厚い本を読んでいる自分の姿と、
アトレイユ(だったかな?)の冒険が書かれた分厚い本を読んでた、あの映画の主人公の姿がだぶったのかもしれない。
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『誰か Somebody』 宮部みゆき(実業之日本社) |
笑い1.0点 涙2.0点 恐怖0点 総合4.0点 |
財閥会長の運転手・梶田が、自転車にひき逃げされて命を落とした。広報室で働く編集者・杉村三郎は、
義父である会長から、遺された梶田の娘二人の相談相手に指名される。その相談とは、妹の梨子が父親の思い出を
本にして出版し、犯人を見つけるきっかけにしたいというものだった。
しかし姉の聡美は、幼い頃に遭った誘拐事件と、父の死に対する疑念を打ち明け、父の過去を調べることになる
妹の行動には反対するのだった。
宮部みゆきの書き下ろしの長編。しかも、近頃はSFやファンタジーが多かったが、本書は現代ミステリーであり、
まさに「待ってました!」という一冊だ。
しかし、率直に言って”普通”だった。財閥会長の娘と結婚したという逆タマにのった中年の男性が主人公だったり、
「中年男性の一人称」という今までの宮部作品にはなかったような文体だったり、コンツェルンとか自転車のひき逃げとか、
色々と普通じゃないところは多々あったのだが、面白さは普通だなと感じた。
また、タイトルの「誰か」という言葉を意識して読んだせいか、作中、やたらと「誰か」という言葉が目に付いた気がした。
村上春樹、伊坂幸太郎、佐藤多佳子などの小説を読んだとき、作中ではジャズや洋楽が使われていて、それが何となくかっこ
よかったり、おしゃれっぽい印象を受けたし、聴いてみたいと思った。実際ローランド・カークのCDを買ったし、
ビートルズにちょっとはまった。しかし、本書で使われているのは何と美空ひばり、それともう一曲はネタバレになるかもしれないので
書かないが、それも古めの邦楽。まあ、ストーリー上必要だから使うのだろうが、なんとなく庶民派宮部という感じがした。
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