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京極夏彦


『巷説百物語 小豆洗い』京極夏彦(角川書店)
興奮★★☆☆☆ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 総合★★★★☆
 注:この話は、角川書店が出している季刊『怪』の第零号に掲載されているものです。だから、読みたいときは、季刊『怪』第零号 をお探しください。

 今回の話には、京極堂はおろか、榎木津探偵・関口先生などの面々は出てこない。そのかわり、『嗤う伊右衛門』に登場した 小股潜りの又市が登場する。おそらく、『嗤う伊右衛門』の世界の延長線上の話なのだろう。
 内容は、ある僧が、大雨のなか山道を急いでいると、一人の僧があらわれ、この先の橋が雨で落ちているから、夜が明けるまで下にある小屋で 休んだほうがいいと言ってくる。その小屋には、すでに数人の人が休んでおり、暇を持て余した彼らは、百物語をはじめる。そして、彼らが話す百物語を聞くうちに その僧は、小豆を研ぐような音を聞き、次第に顔色が変わってくる。

 『嗤う伊右衛門』のような、不思議な世界が全体に漂っていて、短編ながら京極夏彦の魅力は十分に味わえる作品でした。


『巷説百物語2 白蔵主』京極夏彦(角川書店)
興奮★★☆☆☆ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 総合★★★★☆
 注:この話は、角川書店が出している季刊『怪』の第壱号に掲載されているものです。だから、読みたいときは、季刊『怪』第壱号 をお探しください。

 「白蔵主」は、「はくぞうす」と読み、僧に化けた狐のことらしい。今回も、前回同様、京極堂や榎木津は出ず、小股潜りの又市 が登場する。
 内容は、白蔵主が住むという杜で、狐を殺しその皮を売って生業としていた男が、狐杜に迷い込む。そこで彼は、一人の女性に会い、気を失ってしまう。 その後彼は、化かされているとも、夢とも、現実ともわからない世界に入り込み、混乱する。そんな折一人の僧が彼の前に現れる。

 今回は、読んでいるこちらもよく読まないと混乱してしまうような内容でした。


『巷説百物語3 舞首』京極夏彦(角川書店)
興奮★★★☆☆ 笑い☆☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 総合★★★★☆
 注:この話は、角川書店が出している季刊『怪』の第弐号に掲載されているものです。だから、読みたいときは、季刊『怪』第弐号 をお探しください。

 「舞首」は、「まいくび」と読み、3人の賭博師がいさかいをおこし、捕らえられ、首を切られ海に捨てられた後も、首だけになった姿でいさかいを続けている 妖怪のことのようだ。
 どうやらこの「巷説百物語」は、小股潜りの又市・山猫廻しのおぎん・考物の百介・言触れの治平の4人が、レギュラーとなっているようだ。 とはいえ、彼らは、最初、職や名を偽ったりしているのだが・・・。キャラクター作りが巧い京極さんだけあって、それぞれがしっかりとした特徴と役割を持っていて 非常に読みやすいし、感情移入しやすい。ただ、性格や職業を表しているようなのだが、小股潜りとか、山猫廻しなどの肩書きの意味が、僕はよくわからない。

 内容は、簡単に言えば、女癖の悪い悪五郎、賭場を営む黒達磨の大親分の小三太そして、首切りの又重という腕に覚えがある3人が、それぞれの利益のために斬り合うという話なのだが、 そう簡単には、終わらないのだ。最後には、どんでん返しが待っているのだ。

 今のところ、この『怪』第弐号が最新刊です。次号の発売予定は、『塗仏の宴−宴の始末−』の発売予定と同じ7月だそうです。


『巷説百物語4 芝右衛門狸』京極夏彦(角川書店)
興奮★★☆☆☆ 笑い★★☆☆☆ 涙★★★☆☆ 総合★★★☆☆
 村中の人に慕われている、真面目でよく働く人柄のいい好々爺・芝右衛門。そんな彼のもとにある日、災いが訪れた。彼の孫の一人が、人形浄瑠璃を見た後、行方知らずとなり、 頭をかち割られた惨殺体で発見されたのだ。そんな孫を亡くした悲しみに打ちひしがれている芝右衛門のもとに、いつの頃からか1匹の狸が訪れるようになった。不思議なことにその狸は、人語を理解するのだ。 さらに、ある日芝右衛門が「今度は人にでも化けて来てくれ」というと、数日後見知らぬ老人がやってきて、自分はいつも食べ物をいただいている狸であるというのだった。
 そんなおり人形浄瑠璃の人形遣いの屋敷で、夜中人形が一人で動いているとか、人形倉からすすり泣きが聞こえるなどのうわさが広まる。

 この作品は、角川書店から出ている『季刊 怪 第参号』に収められている50ページほどの短編だ。短編ではあるが、京極氏の味は良く出ていた。しかし、早く 『塗仏の宴〜宴の始末〜』が読みたいものである。


『巷説百物語5 塩の長司』 京極夏彦(角川書店)
笑い★☆☆☆☆ 涙☆☆☆☆☆ 恐怖★☆☆☆☆ 総合★★★☆☆
注:この話は、角川書店が出している季刊『怪』の第四号に掲載されているものです。だから、読みたいときは、季刊『怪』第四号をお探しください。
 加賀の国の小塩ヶ浦というところに、馬商いをしている大きなお屋敷があった。そこの2代目の主・長次郎が今回の話の中心。長次郎は、馬の扱いに慣れているだけでなく、商才にも長けていたので 先代に大層かわいがられていた。2代目となってからも、謙虚に勤めていた。ところがある日、山で山賊に襲われ、妻子と先代を一遍に失ってしまった。それから長次郎は、先代と妻子への弔いと称し、 毎月、貧しい者たちに施しをするようになった。と、同時に、人前に滅多に顔を出さなくなってしまったのだった。

 例によって、小股潜りの又市・考物の百介・言触れの治平が登場する。ただ今回は、山猫廻しのおぎんは、名前だけしか出てこない。「塩の長司」というのは妖怪なのかは知らないが、 『絵本百物語』の「塩の長司」の絵はすさまじい。さむらい風の男が馬を頭から丸呑みしていて、ちょうど半分ほど呑み込んだところの絵なのだ。まさに、ビックリ人間大集合といった感じだ。 今回も例に漏れず、この絵が、すべてを象徴している。だが、今回は結末も何となく読めたし、呑馬術も知っていたので、それほど面白くなかった。が、今回の『怪 第四号』には、 「京極夏彦×夢枕 獏」の対談や、「摩多羅神の顔」「日本異界探偵」という京極さんの文章が掲載されているというまさに京極づくしなのだ。ぜひ買うベシ。


『百器徒然袋/第1番 鳴釜〜薔薇十字探偵の憂鬱〜』 京極夏彦(「小説現代」メフィスト・講談社)
笑い★★★☆☆ 涙★☆☆☆☆ 恐怖★☆☆☆☆ 総合★★★★★
 ある男の姪・早苗が、奉公先の御曹司とその悪友達に強姦され身籠もってしまった。遣り場のない怒りを感じつつも、どうすることもできないその男は、友人である大河内康治に相談した。すると康治はなぜか榎木津探偵を紹介したのだ。 探偵の出る幕ではないと思いつつもその男は、友人にいわれるまま「薔薇十字探偵社」を訪れた。案の定、最初は助手である益田君が依頼を受けた。ある程度まで調査が進んだとき、突如、榎木津探偵が登場。そして、「悪い奴は退治するんだ」 「今回は僕の仕切だ!いつも手伝わされるから京極の本屋にも手伝わせよう。」と言い放つ。

 今回の『鳴釜』は、「小説現代」メフィスト(12月増刊号)という雑誌の、読み切り小説だ。
 榎木津探偵出突っ張り。榎木津ファンには、たまらない短編かも。それでも、要所要所で、きちんと京極堂が登場し、いつもの通り蘊蓄をたれる。さらに今回は、京極堂が涙を流し大笑いするシーンがある。ちょっと珍しい。今回のお話は『塗仏の宴』の後の話なので、 それを読んでから読むといいと思う。あの時の事件に出てたある人物が登場するし、関口君のその後、木場修のその後とかも、ちらっと触れられてるので、ぜひ『塗仏の宴』を読んでおいた方がいい。笑えるし、読後もすっきり。 「メフィスト」の次号は3月に出るそうだから、楽しみに待ってよう。


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