「水に眠る」:同僚に連れていかれた店で飲んだ水割りの不思議の味。
ある切ない夜、わたしはその水の秘密を知る。
「くらげ」:半年前に妻を亡くした岡崎はある日、娘の何気ない行動を見てひとつのアイディア
が思い浮かぶ。それは彼の住む世界を大きく変える代物だった。
「かとりせんこうはなび」:「蚊はいやよ。」他愛もない会話から生まれた冗談のような
アイディアは、わたしと真貴の予想を越えた方向に転がっていく。
「矢が三つ」:男女比が2:1になったことで、女性は2人の夫を持てるようになりました。
そして、あたしの家にもついに第二パパが来ることになったのです。
「弟」:《いうこと、やることの箍(たが)がはずれちまった爺さん》の役を
もらった老役者は早速、役作りをはじめることにした。
以上のほか、「恋愛小説」「植物採集」「はるか」「ものがたり」「かすかに痛い」の計10編からなる短編集。
実は北村薫氏の小説を読むのはこれが始めてだ。何冊か積読はあるのだけど、どういうわけか今まで読んでいなかった。
北村薫というとミステリ作家というイメージがあるのだが、本書を読んでちょっとイメージが変わった。この短編集が
北村氏の小説の中では異質なのかもしれないが、これを読む限りではミステリというより、僕個人の分類で言うと「一般小説」
に近い。果たして北村初体験はこの一冊でよかったのだろうか、という気がする。やはり『空飛ぶ馬』や『スキップ』あたりから
読んだ方がよかったかな。
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