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ミステリー(国内)



『ボランティア・スピリット』 永井するみ(光文社)
笑い0点 涙1.5点 恐怖0点 総合3.0点
市民センターで開講している外国人のための日本語教室。そこで、ボランティア教師をすることになった人たちと 外国人たちの悲喜こもごもの交流と事件。
「冬枯れの木」:山崎が教えているナディームに放火の疑いがかかる。
「ボランティア・スピリット」:道子が教室に置いておいた財布からお金が盗まれた。 道子はすぐに外国人の生徒を疑うが。
「誰に恋すればいい?」:毎週、守口悟樹の前に座り、近況を話す李早雪。彼女は、日本に来て 孤独な日々を送っていた。
「ジャスミンの花」:市民センターに届けられた隠し撮り写真と手紙、そして無言電話に悩む 香奈は、先日帰国したはずのナディームのしわざではないかと疑う。
「夜に辿る道」:道子が教えているロベルトは全くいうことを聞かない小学生だった。 道子は思わず愚痴ってしまい、それを偶然ロベルトに聞かれてしまう。その日、ロベルトは教室を飛び出したきり、帰宅もせずに どこかに行ってしまった。
 以上のほか「雨」「きれいな手」「言葉にならない」の計9編からなる短編集。

 「ボランティア」というのは助けを必要としている人たちに、無償(もしくは小額)で奉仕をするという「善いこと」だと 思う。だからといってボランティアをしている人自身が善良な聖人君子というわけではない。(もちろんしっかりとした志を もって立派にやっている人もいるだろうが。)こんなことを考えてしまう小説だ。
 心温まるような読後感を期待して読んだが、心沈むような短編が多かった。外国人に偏見をもっていたり、だましたり、 嫉妬したり、嘘ついたり、疑ったり・・・。人間らしいといえばらしいのだが、それがボランティアという題材によって ひどく際立っている。
 ミステリータッチの短編だが、展開が読めてしまう短編が多く、ミステリーとしてはいまいちである。


『グレイ』 延江 浩(中央公論社)
笑い0点 涙0.5点 恐怖1.5点 総合3.0点
 メトロポリタンFMのプロデューサー・小田ルリ子が担当するラジオ番組に、犯行予告のファクスが送られてきた。 予告のとおりに、臨海副都心の埠頭で、メッタ刺しにされた惨殺死体が発見される。同じ手口の連続殺人事件に 発展していくこの事件に、小田は否応なく巻き込まれていく。

 何者かが少女を殺害しているシーンや、動物を虐殺するシーン、海で発見されたグロテスクな遺体など、冒頭から ショッキングな描写が続き、かなりダークだけど面白そうなので借りてみた。
 著者自身、TOKYO FMのプロデューサーをしているらしいので、ラジオ局という舞台にかなり、リアリティがある。 だが、見開き1ページの間に、2回も3回も場面や時間が変わったりするので、非常に頭が混乱する。 「これは誰の視点で、いつの話なんだ?」と頭を働かせながら読まなくてはならない。後半、事件の真相や 犯人などが明らかになっても、なんだかややこしすぎて素直に驚けなかった。
 面白くないから低評価というより、僕の読解力不足が原因の低評価と思ってもらったほうがいいかもしれない。


『陰陽師 飛天ノ巻』 夢枕獏(文藝春秋)
笑い1.0点 涙2.0点 恐怖1.5点 総合4.0点
「天邪鬼」:大きな檜の切り株がある山道に、童子のあやかしが出るという。そのあやかしは、 通ると言えば通さぬと言い、通りたくないと言えば通れという。
「鬼小町」:如水法師の寺に、毎日、花や木の実を置いて去る老婆がいた。その老婆は、 若い女に変化したり、男の声で話したりする化生のものだった。
 以上のほか「下衆法師」「陀羅尼仙」「露と答へて」「桃園の柱の穴より児の手の人を招くこと」 「源博雅堀川橋にて妖しの女と出逢うこと」の計7編からなる短編集。

 晴明しか解決できないような不思議な話を持ち込む源博雅と陰陽師・安倍晴明のコンビが活躍するシリーズ二作目。
 映画「陰陽師」を見て、久しぶりに夢枕獏の『陰陽師』が読みたくなった。第一作目を読んだのは、記憶にないくらい 昔のことなので、それを再読してから読もうかとも思ったが、映画を見たから再読しなくても大丈夫だろう、と 思い二作目から読んだ。
 通勤・通学のお供に最適といった感じの、さらっと読める上質なエンタテイメント小説でした。  


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