探偵作家の松下は、入院中の名探偵・神津恭介を見舞いに行った。すると神津はこの退屈をまぎらわす方法を考えてくれ、
と言い出した。そこで松下は「源義経は衣川の戦いで死んだのではなく、そこからモンゴルに渡りジンギスカンになった」という
伝説を調べて彼らの一人二役が成立するか考えてみては、と提案する。
調べていくうちに、次々に源義経=成吉思汗を思わせる証拠が出てきたのだった。
「義経は蝦夷を経由しモンゴルへ渡り、成吉思汗になった」という真面目な歴史家が一笑に付すような仮説を
大胆な推理と豊富な文献などを交えて検討している。読みすすめるうちに、「本当に二人は同一人物なのかも」と
思うようになった。しかし、結論はちょっと証拠としては弱いなという感じがした。でも、たとえ義経が衣川で死んだのが
事実だったしても、こういう歴史上の謎を解いていくのはロマンがあって、とてもよい。
これは歴史ミステリであり、著者も作中で「歴史家なら眼に角を立てて怒り出すようなことでも、これは創作の世界における
作家の創造だといってお逃げになれましょう。」と登場人物に語らせている。だから歴史好きの方々は、馬鹿らしいと言わず、
小説として楽しんでみてはどうでしょう。
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