「本陣殺人事件」「黒猫亭事件」の2篇からなる中編集。
「本陣殺人事件」:本陣(江戸時代の諸大名公認の宿所)の末裔である名家・一柳家の長男である
賢蔵が結婚することになった。そして、その結婚式の夜、琴を乱れ弾く音ともに、離れの方から絶叫が聞こえた。
驚いた家族が離れに行ってみると、血の海の中に新郎新婦の死体があった。現場は、密室であり、その日は大雪だったにもかかわらず、
犯人らしき足跡は見つからなかった。この謎に金田一耕助が挑む。
横溝正史の金田一耕助シリーズはよく2時間ドラマで放送されるが、意外にも僕はその原作である小説を一冊も読んだことがなかった。
だからというわけではないが、今回は本作を読んでみた。
登場人物から設定まで和風で妖しい魅力に満ちているが、それ以上に本作は、密室トリックがすばらしい。まあ、今の新本格の作家は、
あまり機械的トリックを使わないから、単に珍しいだけかもしれない。でも、日本ならではのものを多用し、ごく自然に密室を作り上げたというのは
さすがだと思う。 |