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綾辻行人


『十角館の殺人』 綾辻行人(講談社ノベルス)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 恐怖★★★☆☆ 総合★★★★★
 K**大学推理小説研究会のメンバー7人が、合宿のために大分県・角島を訪れた。この島は、建築家・中村青司が殺害され、その死体とともに燃やされた「青屋敷」があった場所である。 さらに角島には、青司が建てた奇妙な館「十角館」があった。7人はそこで寝泊まりをし、推理小説を書く予定だった。ところが、外部からは隔絶されているはずのその島で、クリスティの『そして誰もいなくなった』さながら、 メンバーが一人一人殺されていくのだった。

 再読なので、ストーリーもトリックも知っているのだが、それでも十分楽しめる。未読の人は、どうかダマされたと思って、読んでみて。ホントに騙されるから。そんなのあり?という気もするが、見事に意表を突かれ、 妙にすがすがしい読後感なのだ。これぞ新本格、という一品でした。


『水車館の殺人』 綾辻行人(講談社ノベルス)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★☆☆☆☆ 恐怖★★☆☆☆ 総合★★★☆☆
 幻視者と呼ばれた天才画家・藤沼一成が、中村青司に建てさせた館「水車館」。一成の息子であり、その館の主人でもある藤沼紀一は、 不慮の事故により、車椅子の生活を強いられ、同時に顔に大けがを負ったため、絶えずマスクを付けて生活を送っていた。人嫌いになってしまった彼だが、1年に1度、 一成の絵を見せるために、4人の人物を呼んでいた。ところがそこには、惨劇が待ちかまえていた。

 これも再読なので、ストーリー、トリックともに知っている。とはいえ、最初に読んだときと、たいして感想は変わらない。前作が強烈なだけに、この『水車館の殺人』は ホントに、同じ人が書いたの?と思うほど普通の推理小説になっている。犯人当て、トリック当てを目当てにミステリーを読む人にとっては、格好の小説だろう。しかし、 僕のように、「著者にダマされる快感(?)」を求めるような人にとっては、物足りない作品です。


『迷路館の殺人』 綾辻行人(講談社ノベルス)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 恐怖★★★☆☆ 総合★★★★★
 推理作家・宮垣葉太郎の住む「迷路館」に、4人の推理作家が招待された。ところが、彼らが訪れたてみると、葉太郎は奇妙な遺言を残し、すでに自殺していた。 その遺言とは、「迷路館」を舞台にして、もっとも優秀な推理小説を書いたものに、自分の遺産の半分を譲る、というものだった。やがて、推理小説家の1人が、 創作途中の推理小説と同じ手口で、殺害されてしまう。

 作中作の形式を取っている本作品だが、その作中作が、かなり凝った作りになっている。一瞬、乱丁かと思ってしまうほどだ。僕としては、『十角館の殺人』よりも こちらの方が好みだ。中村青司の趣味が十分すぎるほど発揮されてるし、一度ならず、二度三度とダマされるし。それにしても、こういう「館もの」は、方向音痴の人には、 絶対書けないだろうなぁ。


『人形館の殺人』 綾辻行人(講談社ノベルス)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★★☆☆☆ 恐怖★★★☆☆ 総合★★★★☆
 私こと飛龍想一は、画家で彫刻家だった父が住んでいた京都の「人形館」に引っ越してきた。引っ越して間もなく、近所で、子供を狙った殺人事件が相次ぐ。 さらに、彼自身の身にも、差出人不明の脅迫状が届いたり、危険が迫ってきていた。

 「館」シリーズの中でも異色の存在の第4作目である。『十角館の殺人』から続くシリーズを読んでから、本作を読むのをお薦めする。お薦めというより 強制といった方がよいかも。そうしないと、この『人形館の殺人』のよさは、絶対わからないだろうから。賛否両論わかれそうなミステリーだが、僕は、 かなり型破りだけれど、こういうのもシリーズのスパイスとしては、良いのではないかと思う。


『時計館の殺人』 綾辻行人(講談社ノベルス)
笑い☆☆☆☆☆ 涙★★★☆☆ 恐怖★★★★☆ 総合★★★★★
 鎌倉の山奥に建つ「時計館」。そこには、若くして死んだ少女の霊が出没するという噂があった。その噂を検証すべく、某雑誌の編集者・霊能力者・W**大学超常現象研究会の学生などが、 「時計館・旧館」に立てこもり、降霊会を行った。ところがその夜、霊能力者が、血痕だけを残し、跡形もなく消えていた。その後、立てこもっているメンバーが、何者かによって次々と殺害されていく。

 「迷路館」のカラクリも凄かったが、この「時計館」のそれは、さらに上をいく凄さだ。よくぞこんな破天荒な建物が思いついたものだ。はたして、現実にこんな館は建てうるのだろうか。 まあ、ミステリーの世界での話だから、現実に建てられるとかは、関係ないけど・・・。
 日本推理作家協会賞受賞作だそうで、シリーズ中最長の作品である。とはいえ、そんな長さも気にならず、一気に引き込まれてしまった。そうそう、「あとがき」もなかなか面白かった。


『霧越邸事件』 綾辻行人(新潮社)
笑い0.5点 涙2.5点 恐怖3.5点 総合5.0点
 猛吹雪のために密室と化した館−難を逃れて偶然に投宿した九人を襲う。意味不明の美しき連続殺人・・・・。(残念ながら、これ以上の情報提供は作品の性質上出来かねます。悪しからずご了承ください。)
<本書あらすじ引用>

 週間文春’90ミステリーベスト10の国内部門第1位になった作品。「これぞ本格ミステリ」といった感じの小説だ。 これは、是非、予備知識や先入観なしに読んでもらいたい。1千枚、ページにしてハードカバー420ページというかなりの長編だけど、 驚愕の展開の連続でその長さも苦にならない。おすすめの1冊。


『黒猫館の殺人』 綾辻行人(講談社ノベルス)
笑い0.5点 涙1.0点 恐怖1.5点 総合3.5点
 推理作家・鹿谷門実のもとに、ある老人から依頼が舞い込んだ。その老人は、火災にあって、記憶をなくしてしまった。そこで、 鹿谷に、自分が何ものなのか調べて欲しいというのである。手がかりは、火災に遭い、大怪我しながらも、大事に抱えていた 「手記」だけだった。その「手記」には、あの中村青司が建てたといわれている「黒猫館」で起こったある事件の顛末が書かれていた。

 終盤に衝撃のドンデン返しがある類のミステリである。そのため、終盤までの課程が、それほど面白くない。さらに、使われているトリック(テクニック?) が、理屈っぽくて、いまいち僕は好きになれなかった。そんな中、僕が思わずニヤリとしてしまった一文があった。 もっと執筆速度を上げて、二時間ドラマになりやすそうな設定にして、主人公を渋い刑事にして列車で各地を 旅行させれば、流行作家も夢じゃないよ
という一文だ。綾辻氏の自信と、世間で言われる「流行作家」に対する皮肉のようなものが感じられて、なかなかよかった。


『セッション ―綾辻行人対談集』 綾辻行人(集英社文庫)
笑い3.0点 涙0点 恐怖0点 総合3.5点
 綾辻さんが1992年から1996年の間に行った対談のうち、10本を選んで一冊にまとめた対談集。 その対談相手は、そうそうたる顔ぶれだ。以下にその対談相手と対談タイトルを書いておく。
 SESSION 1 宮部みゆき「ミステリー小説、その多様な世界」
 SESSION 2 楳図かずお「自らのホラー原体験を語る」
 SESSION 3 養老孟司 「リアルな狂気をめぐって」
 SESSION 4 大槻ケンヂ「タイトル不明」
 SESSION 5 京極夏彦 「主役は”館”と”妖怪”」
 SESSION 6 北村薫・宮部みゆき「本格ミステリをめぐって」
 SESSION 7 山口雅也 「Detective story can never die!」
 SESSION 8 瀬名秀明・篠田節子「ミステリーな人々のちょっぴりホラーな座談会」
 SESSION 9 法月綸太郎「本格ミステリに未来はあるか」
 SESSION 10 竹本健治 「新本格のすべてを語ろう」

 会話がそのまま文章になっているので、基本的には読みやすい。しかし、作家対談らしく、時折高度な会話が展開されたり、聞き慣れない用語が 飛び交ったりして、無知な僕には読むのが苦痛になるところもあった。
 それでも、宮部さんは歌舞伎町の法律事務所に勤めてたとか、綾辻さんが小6の時に書いた探偵小説の名探偵が、柊五郎という名前だったとか、 京極さんのタイトルに対するこだわりとか、いろいろ知らなかった事実が結構わかったりして、そういう点では面白い一冊だった。


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